記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/7/12
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠初期から見られるマイナートラブルのひとつにむくみが挙げられます。こちらの記事では、妊娠初期のむくみの原因や、赤ちゃんへの影響、対処法などについて詳しく解説します。
妊娠初期だけでなく、妊娠してから出産後までは体がむくみやすくなります。むくみは、医学的には「浮腫(ふしゅ)」といい、皮下組織に水が溜まっている状態のことです。妊婦の30%にはむくみが認められるとされています。母体のむくみは赤ちゃんの体の発達のために起こる生理現象のひとつであり、決して珍しいことではありません。
妊娠が成立すると、女性ホルモンとも呼ばれるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が多く分泌されるようになります。エストロゲンとプロゲステロンは妊娠の成立や継続に不可欠なホルモンです。妊娠中に必要な栄養分(水分や脂肪分)を体内に蓄える作用があるため、水分が排出されにくくなり、これらのホルモンが大量に分泌されている間は体がむくみやすくなります。
妊娠中には、胎児の成長のために血液量が最大で40%前後増加します。むくみは血液内の水分の滲出によって起こることから、妊娠に伴う血液量の増加もむくみの原因のひとつです。
ただし、妊娠高血圧症候群の前兆としてむくみが生じることがあるため、尿タンパクが+の場合や血圧が高い場合には注意する必要があります。
妊娠中のむくみが現れる時期は人それぞれです。体重や血液の増加量、個人個人の体質によるところも大きいため、むくみが現れる時期を一概に断定することはできません。妊娠初期から出産後までずっとむくみに悩まされる人もいれば、妊娠中期・後期からむくみが生じるようになった、臨月に入った途端に急激にむくむようになったという人もいます。
一般的に、特に妊娠後期には血液量や体重が増加したり、大きくなった子宮が血管やリンパ管を圧迫しやすくなったりすることからむくみやすくなるとされています。しかし、人によっては出産までほとんどむくみが認められません。
妊娠中にむくみが生じやすい部位は足です。人間は地面から直立しているものの、体内の水分は重力に従って下方向に流れていきやすいため、必然的に足には水分が溜まりやすくなります。同様の理由で、重力の方向に下がっている腕も水分が溜まりやすい部位のひとつです。寝ている状態では余分な水分が体のあらゆる部位に行き渡ってしまうため、顔がむくむケースもよく見受けられます。
・いつもよりも靴がきつく感じる
・手がしびれる
・手が握りづらくなる
・指輪がきつくなる
・指輪が外せなくなる
・朝起きると顔が腫れぼったい
・靴下の跡がいつまでも消えない
実際にこうしたことが起こることで自身のむくみに気付く妊婦が多いとされています。むくみの度合いが進むと、靴のサイズを上げなければならない、指輪が全く外れないといったケースも少なくありません。
むくみによって妊娠初期から体重が増えるケースは珍しくないでしょう。エストロゲンやプロゲステロンの働きにより、妊娠初期から出産まで、妊娠期間中は胎児の成長のために水分や脂肪分が体の中に貯まりやすくなっています。これがむくみに繋がっており、むくんでいるということは体内に余分な水分を多く溜め込んでいる状態であると言えます。
体内の水分が多くなるということは、その分体重も増えているということです。靴がきつい、手が握りづらいといったことに加えて体重増加が認められるのであれば、むくみが原因で体重が増加していると考えられるでしょう。
ただし、妊娠初期の体重増加の原因はむくみだけではありません。妊娠初期に体重が増えている場合には、血液量の増加やつわりによる食べ過ぎといった要因も考えられます。
妊娠初期にむくみが生じても、以下のような方法で解消できる可能性があります。
むくんでいる部位をマッサージすることで血流を良くします。これにより、余分な水分が溜まるのを防ぐことが期待できます。
運動不足はむくみの原因のひとつであり、足の筋力の衰えによるポンプ機能の低下がむくみを招くとされています。むくみが気になる部位のストレッチをしたり、軽めの運動をしたりすると良いでしょう。ただし、妊娠初期は体調がすぐれないことも多いため、体の様子を見ながら行ったり、医師に相談しながら行ったりすることも大切です。
足に圧をかけて血行を促進したりリンパの流れを改善したりすることで、むくみの解消につながるとされています。
妊娠中は体がむくみやすくなっているため、個人差はあるものの妊娠初期にもしばしばむくみが現れます。むくみ対策にはマッサージや運動、着圧ソックス着用など様々な方法があるため、気になる場合は試してみると良いでしょう。