記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/9 記事改定日: 2020/8/28
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
糖尿病を発症した場合、足切断は恐ろしいリスクのひとつです。今回の記事では、糖尿病で足を切断する必要性、切断する割合、切断後の予後や生存率について解説します。足の異常を予防するフットケアについても紹介しますので、糖尿病患者や家族の方は参考にしてください。
糖尿病の合併症による足病変の重症化によって、足の切断を余儀なくされる人は年間1万人以上と推定されています。なかでも糖尿病患者は足壊疽による切断の事例が多く、年間3000人がこれに該当するといわれています。
糖尿病は全身にさまざまな合併症を引き起こしますが、足病変は特に注意しなければならない合併症のひとつです。
糖尿病は進行すると末梢神経の機能が低下することが知られています。その結果、足に小傷やタコ、魚の目、水虫、靴擦れなどができても痛みやかゆみを感じにくくなります。
さらに、糖尿病は免疫力が低下するため、これらの病変が悪化しやすい傾向にあります。気づいたときには足の病変が化膿しているケースも珍しくなく、重度な場合には足の組織が壊疽することで足を切断せざるを得ないことがあります。
糖尿病による足壊疽で切断を余儀なくされた場合、基本的に予後(術後の回復の見通し)は非常に悪いです。
国内の医療機関の研究によれば、足を切断した患者91名の予後は以下のように報告されています。
この91名のうち67%は糖尿病患者で、糖尿病患者の累積生存率は1年で約60%、3年で約41%、5年で約24%でした。さらに透析患者の場合の累積生存率は1年で約56%、3年で約35%、5年で約16%でした。
また、切断部位でいうと下腿(膝から下)よりも大腿(足の付け根から膝まで)を切断した患者の方が予後が悪い傾向にありました。
糖尿病になると、合併症で血流が悪化するために足が壊疽し、切断のリスクが上がります。
これは、糖尿病患者の免疫力低下、神経障害、高血糖状態が関係しています。
糖尿病患者は高血糖によって免疫力が低下しているため、細菌感染が起こりやすく、傷が治りにくい状態にあります。
糖尿病の合併症である「神経障害」(高血糖により細小血管の血流が悪化し、神経が死滅する状態)が加わると、手足の感覚が鈍化するために傷ができても気付きにくくなります。つまり、足に傷ができるとそのまま潰瘍化し、壊疽を引き起こすようになるのです。
糖尿病患者は高血糖状態によって血流が悪化し、閉塞性動脈硬化を起こしやすい状態です。これにより手足などの末端部分に血液や酸素、栄養が届かなくなることも、壊疽の原因の一つと言えます。そしてこの壊疽が重症化すると、切断を余儀なくされてしまうのです。
国内の研究によれば、糖尿病患者約5000人のうち、足潰瘍などの足病変を起こす患者の割合は0.3%、切断した患者の割合は0.05%とのことです。これは海外の報告と比べ、1/10程度と低い割合ということがわかっています。
糖尿病患者は軽度な足の病変が悪化して化膿しやすくなります。最終的には足の切断を余儀なくされることもあります。
この状況を防ぐため、糖尿病患者は日頃からこまめに足の観察を行い、何らかの病変があるときはできるだけ早く治療を開始する必要があります。また、病変ができにくくなるよう足を清潔に保つ・爪の伸ばし過ぎや切りすぎに注意する・サイズの合った靴を選ぶ・素足を避けるなどの対策も必要です。
これらのセルフケアを「フットケア」と呼びますが、糖尿病治療を行う医療機関ではフットケアを専門的に行う外来などもありますので積極的に活用しましょう。
糖尿病による足切断は、高血糖状態が続いたことによる神経障害や、閉塞性動脈硬化による壊疽が主な原因です。実際に切断まで至る事例は少ないものの、切断した場合の予後は悪いので、普段から血糖コントロールを徹底して予防に努めましょう。