記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/4/27
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
糖尿病の改善のために欠かせないのが血糖コントロールですが、血糖値が不安定になると、糖尿病患者は昏睡状態に陥ることがあります。今回の記事では昏睡に至る原因や、昏睡前の特徴的な症状、昏睡から回復するための方法について解説します。
糖尿病患者は高血糖状態によって昏睡状態に陥ることがあります。その原因としては以下が挙げられます。
糖尿病性ケトアシドーシスは、高血糖による急性合併症の一種です。糖尿病によって極度のインスリン不足に陥り高血糖状態になると、血中のブドウ糖を代謝できなくなったことで、体内では糖の代わりに脂肪や筋肉を分解してエネルギー源とします。この分解の際にケトン体という物質が産出されるのですが、ケトン体は酸性が強い物質のため、蓄積されると血液が酸性に傾いて(ケトアシドーシス)、脱水状態に陥ります。これが重度になると、意識障害や昏睡に陥るようになります。
なお、糖尿病性ケトアシドーシスは、1型糖尿病・2型糖尿病ともに起こる現象で、1型糖尿病患者の場合はインスリンの打ち忘れや投与量不足によって、血糖値が十分下がらないことで起こります。2型の場合は、清涼飲料水の飲み過ぎによる高血糖で起こることがあります。
高浸透圧高血糖症候群も高血糖を招く急性合併症の一種で、特に高齢の2型糖尿病患者に起こることが多いです。肺炎や尿路感染症などの感染症(※)や脳血管障害、下痢による脱水、手術、利尿薬やステロイド薬の投与の影響によるインスリン作用不足が原因で、激しい高血糖と脱水症状を引き起こします。糖尿病性ケトアシドーシスと同様、重度の場合は意識障害や昏睡に陥ります。
※糖尿病患者は高血糖状態の持続により白血球の機能が低下しているため、感染症にかかりやすいです。通常、風邪などの感染症にかかると、それに対抗するエネルギーを捻出するために肝臓では糖がつくられ、血糖値が上昇するのですが、糖尿病患者はこの糖がどんどん溜まってしまうため、高血糖に陥りやすくなります。
糖尿病性昏睡はいきなり陥るものではなく、重度の高血糖状態になると起こります。250mg/dL以上は危険水域であり、500mg/dL以上になると昏睡やショック状態になると言われています。
糖尿病性ケトアシドーシスが起こると、脱水によって吐き気や腹痛、頻脈、多尿、倦怠感などの症状が出るようになります。また、速く深い呼吸(クスマウル呼吸)が出るようになり、ケトン体が原因で発生するアセトン臭によって、果物が腐ったような甘酸っぱい口臭がするという特徴があります。これらの症状が出たら、昏睡に陥る前に医療機関を受診してください。
昏睡の原因である糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖症候群は、重度の脱水や感染症によって、血管や各臓器に負担をかけ、腎不全や心不全を引き起こすことがあります。また血栓の発生率も高めるため、心筋梗塞や脳梗塞を起こし、そのまま死亡する可能性があります。
糖尿病性昏睡に陥ると自力での対処はできないため、すぐに医療機関を受診するのが鉄則です。糖尿病による昏睡は重度の脱水症状が原因で引き起こされているため、回復のために、病院では点滴によって体内に水分を送りつつ、インスリン注射をして血糖コントロールをすることになります。
糖尿病性昏睡は、心筋梗塞や脳梗塞など死亡率の高い状態を招きます。昏睡状態に陥らないよう、インスリンの投与量や体調管理には十分注意し、呼吸の異変などが見られたらすぐに病院を受診しましょう。