記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/6/12 記事改定日: 2020/5/15
記事改定回数:3回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
「子宮外妊娠(医学的には異所性妊娠)のときはつわりがない」と聞いたことがあるかもしれません。子宮外妊娠は通常の妊娠での受精卵着床と異なる状態のため、つわりを始めとする妊娠初期症状や妊娠検査薬の陽性反応がみられないのでは…と思ってしまいがちですが、本当に症状などがみられないのでしょうか。
子宮外妊娠(医学的には「異所性妊娠」と呼んでいます)とは、なんらかの原因で子宮内膜以外の場所に受精卵が着床している状態です。
上記の症状は、つわりをはじめとする妊娠初期症状(胸の張り、腰痛、風邪の引き始めような症状)とほとんど変わりません。これは、子宮外妊娠であっても、正常妊娠のときと同じようにホルモンバランスが変化するためです。したがって、つわりがあるから正常妊娠である、とは判断できません。
個人差がありますが一般的に、つわりは妊娠8週から11週にピークを迎えるといわれています。子宮外妊娠かどうかは妊娠6週頃に診断される場合が多いため、中にはつわりが本格化する前に子宮外妊娠がわかる人もいます。このとき、「子宮外妊娠のときはつわりが軽い」と感じる可能性はあります。
しかし、つわりの有無や程度はもともと個人差があるため、正常妊娠でもつわりが軽かったり、ほとんどない人もいます。また、同じ人であっても、1人目の妊娠と2人目の妊娠とでつわりの程度が異なることもあります。このため、「つわりがない」もしくは「つわりが軽い」からといって、子宮外妊娠かどうか判断することは難しいのです。
多くの女性は月経の遅れを自覚する妊娠5~6週頃に妊娠検査薬を使用し、陽性反応が出た段階で産婦人科を受診します。月経が遅れても妊娠検査薬を使用しなかったり、検査薬で陽性反応が出ても産婦人科を受診しない人もいます。
妊娠検査薬は、着床すると分泌されるようになる「hCG」と呼ばれるホルモンが尿中に含まれているか調べる検査です。「hCG」の分泌量は着床が生じた日からどんどん増え、通常は妊娠5週目頃になると検査薬で検出できるレベルになります。
一方で、子宮外妊娠も正常妊娠と同じく「着床」自体は生じるため、同じように「hCG」の分泌が開始されます。そのため、子宮外妊娠でも妊娠検査薬では陽性が出るのです。
産婦人科では、超音波検査によって子宮内に「胎嚢」などが形成されているか調べ、正常妊娠か否かを確認します。
妊娠検査薬のみでは、正常妊娠か子宮外妊娠か判定することはできません。
正常妊娠か否かを確認するには、超音波検査で赤ちゃんが成長する袋である「胎嚢」や赤ちゃんの心拍が子宮内にあることを確認する必要があります。
子宮外妊娠の場合は、それらのものが子宮内に確認することができず、さらに卵管内や腹腔内などに赤ちゃんの心拍が確認されるようになります。
子宮外妊娠はできるだけ早い時期に適切な対処をとる必要があります。たとえば、子宮内腔以外の部位に着床した受精卵が徐々に大きくなり、卵管破裂を引き起こすことがあります。
卵管内に着床が生じた子宮外妊娠は、放置すると卵管破裂を引き起こします。次のような症状が突然現れたときは卵管破裂の可能性がありますので、早急に病院を受診するようにしましょう。
子宮外妊娠は誰にでも起こりえます。妊娠する可能性のある女性は日頃から月経周期を把握し、月経が遅れた場合は妊娠検査薬を使ったり、産婦人科で検査を受けるようにしましょう。
また、月経の遅れがある人や妊娠検査薬で陽性反応が出た人で、以下のような症状が現れた場合は、できるだけ早く産婦人科で診てもらってください。
子宮外妊娠でも、正常妊娠の場合と同じようにつわりなど妊娠初期症状や、妊娠検査薬の陽性反応がみられます。正常妊娠と子宮外妊娠の判断は、妊娠6週前後になってからわかります。子宮外妊娠を放置すると、卵管破裂などの緊急を要する状態を招くおそれがあります。妊娠の可能性に気付いたら、早めに産婦人科で検査を受けましょう。