記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/6/6
記事監修医師
前田 裕斗 先生
つわりの症状が重症化して、妊娠悪阻という症状が出てくることがあります。妊娠悪阻になると、何度も吐いてしまったり、ほとんど何も食べられない状態が1日中続くと言われています。この記事では、妊娠悪阻になりやすい時期や発症しやすい方、そして治療法について解説します。
妊娠悪阻は、通常のつわりの時期と同じ時期(妊娠5週~16週頃)に起こりやすいといわれています。ただ、悪阻の程度や症状の経過は個人差があるため、これより長引く人もいます。
妊娠悪阻がなぜ起こるのかは、まだ解明されていません。ただ、妊娠初期は体内のホルモンバランスや代謝が急激に変化することや、妊娠したことで周囲の環境が変わることなどに対応できないためではないか、と考えられています。
妊娠悪阻は、以下のような方が発症しやすいと言われています。
妊娠悪阻が重症の場合(全く飲食ができない、10%以上体重が減少するなど)が、入院して治療するのが一般的です。症状の程度に応じて、以下の治療を組み合わせていきます。
妊娠悪阻の症状が軽い場合、好きな食べ物を少しずつ、小分けにして食べるよう指導されます。もし、吐き気や嘔吐がひどくて食事が摂れない場合は、絶食にして点滴治療をすることもあります。
脱水症状や電解質異常を改善するために、点滴でブドウ糖を含んだ電解質液を投与します。妊娠悪阻の症状が悪化してウェルニッケ脳症(意識障害などを伴う病気)にならないよう、ビタミンB1の補給も行います。
妊娠悪阻は、妊娠中の女性の抑うつや不安で発症することがあると言われています。このため、入院して休養をとり、精神を安定させることで症状が和らぐことがあります。
食事指導や輸液療法、精神療法でも症状が改善しないか、悪化する場合は、制吐薬(せいとやく)や「ピリドキシン®」といった薬を使って治療します。妊娠悪阻が起こる時期は胎児の体が作られる時期と重なるため、胎児に悪影響を与えないよう、薬の使用は必要最小限にとどめられます。
妊娠悪阻は、つわりとほぼ同じ時期に発症する症状です。治療は入院することが多く、症状の度合いに応じて食事や輸液投与、精神療法といった治療が行われますが、症状が改善しない、もしくは悪化する場合は、薬物療法が行われることがあります。最近つわりの症状がひどくなったと感じるようでしたら、悪化する前に医師に相談しましょう。