記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/6/1
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠悪阻とは、吐き気や嘔吐といったつわりの症状が1日中続いて、食事が摂れなくなったり、体重が減ってしまったりする症状です。この記事では、妊娠悪阻の症状やつわりとの違い、治療法について解説します。
妊娠悪阻はつわりの重症型と考えてよく、1日中嘔吐が続き、食事ができない、体重が減少するといった症状がみられます。
軽度のつわりでは朝や夕方などに嘔気を感じる程度で済むこともありますが、妊娠悪阻となると1日中吐き気や嘔吐が続くようになります。その結果、食べ物を摂ることがままならなくなり、栄養障害や代謝障害といった摂食障害につながる可能性があります。また、食べ物から糖分を摂ることができないので、代わりに体内の脂肪を分解してエネルギーを補うようになって体重が減少し始めます。
妊娠悪阻の症状が悪化すると、脱水症状や飢餓状態に陥ったり、まれに意識障害などをもたらすウェルニッケ脳症を発症する恐れもあります。
妊娠悪阻の中でも飲食が全くできず、尿中にケトン体と呼ばれる物質が出るような状態を重症妊娠悪阻と呼びます。重症妊娠悪阻の場合、外来で点滴を毎日受けるか、入院して治療することが一般的です。脱水や栄養失調など、妊娠悪阻による症状に応じて、食事指導や点滴投与などが行われます。また、妊娠悪阻の症状にストレスや不安などが影響していると考えられる場合は、精神療法が行われることもあります。
このような治療をしても症状が改善しない場合は、お腹の赤ちゃんに影響が及ばない範囲で薬物療法が行われます。
妊娠悪阻とつわりの違いを明確にするのは難しいのですが、一般的には症状の重さや、症状が現れる時間帯によって区別することが多いです。
妊娠悪阻は1日中嘔吐を繰り返したり、食事ができない状態が続きます。一方、つわりは早朝や空腹時に吐き気や嘔吐といった症状がみられます。また、つわりの症状は一時的なもので、我慢できる程度であることがほとんどです。
お腹の赤ちゃんは妊娠初期の間、自分で成長に必要な栄養を補うことができるため、妊娠悪阻で食事が摂れなくても影響はほとんどありません。ただ、妊娠悪阻がひどくなると脱水症状や飢餓状態になるため、母体が危険にさらされる恐れがあります。
したがって、つわりの症状が1日中続くときや、食事を摂ることがままならない場合は、我慢せずに産婦人科で診てもらうことが大切です。お腹の赤ちゃんと自分の体を守るためにも、無理をしないようにしましょう。
妊娠悪阻とつわりの大きな違いは、吐き気や嘔吐といった症状が一時的なものか、1日中続くかという点です。もし、1日中吐き気や嘔吐が続いて日常生活に影響が出ているようでしたら、早めにかかりつけの産婦人科へ行って治療を受けましょう。