記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/5/31 記事改定日: 2019/8/9
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
乳腺炎は、授乳期によく起きる胸のトラブルです。発症原因の一つとして、きつい下着の装着や食事内容などがあります。甘いものや脂っこいものを食べた後に胸が詰まりそうになったり、ワイヤー入りの下着をやめてから母乳の出がよくなったという方もいるのではないでしょうか。この記事では、乳腺炎になる原因や対処法について解説します。
乳腺症には「急性うっ滞乳腺炎」と「化膿性乳腺炎」の2種類があります。乳腺に母乳が溜まり、詰まって炎症を起こしてしまうものを「急性うっ滞乳腺炎」、細菌入ったことで乳腺が炎症を起こすものを「化膿性乳腺炎」と呼んでいます。
急性うっ滞性乳腺炎は、産後10日以降に発症しやすいと言われています。片側の胸の一部分が赤くなり、痛みを感じます。また、38.5℃以上の発熱や、全身の倦怠感などが起こることもあります。原因としては、以下のことが挙げられます。
化膿性乳腺炎は、赤ちゃんの口を通して乳腺に細菌が入ることで急性うっ滞乳腺炎が悪化し発症します。授乳中の人がまずかかるのは、急性うっ滞乳腺炎であることが多いです。
食事と母乳の質・量の関係性については、実はまだはっきりとした根拠はありません。WHO(世界保健機関)は、食事と乳腺炎の関係について、「高塩分・高脂肪の食事は乳腺炎の原因になると考えられているが、根拠ははっきりしていない」と発表しています。
しかし一方で、母乳相談室や母乳外来、医師の監修による書籍などの乳腺炎予防の食事指導において、「関係性ははっきりしていないが、高塩分・高脂質の食べ物は控えておく方が無難である」としています。
乳腺炎は寝不足が続いたり、疲労が溜まっていたりすると、乳房の内側が詰まってしこりができやすくなると言われています。普段から赤ちゃんの世話や家事で忙しいという人は、あらかじめ家族や周囲の人に疲れると乳腺炎になりやすいことを伝えて、ご自身の負担がなるべく少なくなるようにしましょう。
乳腺炎になってしまったときは、無理をせずにしっかりと睡眠をとることが大切です。乳腺炎が悪化した場合、全身の悪寒や発熱などの症状が起こるので、授乳も横になりながら添え乳で行うようにしましょう。
母乳マッサージの指導などでは、詰まりやすい人は3時間おきの授乳がよいと言われていますが、本当に疲れている時や睡眠不足の時はミルクを足して眠ることもときには必要です。まずは、疲れを溜めないことを最優先にしてください。
ストレスを溜めやすい人や神経質な人ほど乳腺が詰まりやすい傾向があります。このため、家の中でもできるリラックス方法を見つけたり、睡眠を工夫して確保したりすることが必要です。
ストレスがかかると、背中が凝って老廃物が流れにくくなるので、保湿力の高いマッサージオイルで背中や肩の凝りをほぐしていきましょう。基本的に、乳房のマッサージは助産師さんにやってもらうことが多いですが、背中のマッサージならパートナーでも可能です。ぜひ、空き時間などにやってもらいましょう。
ワイヤー入りの下着や、サイズが合っていない下着は乳房を必要以上に圧迫するため、身体的にも精神的にもストレスを与えてしまいます。きちんとバストのサイズをはかり、自分のサイズに合った授乳用下着を購入しましょう。
乳腺炎になる要因は、食生活や下着、ストレスなど身近なところにあるものも多いので、普段から気をつけることで乳腺炎になるリスクを軽減することができます。もし乳腺炎になってしまった場合でも、適切な治療を受ければ、また通常通りに授乳を行えるようになります。気になることがあるときは、すぐに医師に相談しましょう。