記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
2018/8/10 記事改定日: 2019/2/20
記事改定回数:11回
記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
口唇ヘルペスは非常に身近な病気です。しかし、ヘルペスが目にもできることがあることをご存知でしょうか。
この記事では、目のヘルペス「角膜ヘルペス」について解説していきます。症状や種類、治療法などをわかりやすく解説していくので、参考にしてください。
ヘルペスは、小さな水ぶくれが集まった急性炎症性皮膚疾患のことをいいます。
顔の周囲では、口唇や口の周りに症状があらわれる口唇ヘルペスが有名ですが、目のまわりに症状があらわれることもあります。
上下のまぶたや目尻のわきなど、目のまわりの皮膚に赤みを帯びた小さなみずぶくれが起こり、同時に、チクチク、チリチリ、ジリジリといった痛みや、痒みなど不快な症状が現れるようになります。
ヘルペスの症状は皮膚にあらわれます。もしヘルペスかもしれないと感じたら、皮膚科を受診してみましょう。必要があれば眼科を紹介してもらえます。
ただ、あまりにも目の近くに水ぶくれができたり目に違和感があったりするときは、最初から眼科を受診してもいいでしょう。
角膜は、眼球の外側にある膜です。目に光を取り込む「窓」のような働きとともに、取り込んだ光を集めてピントを合わせる働きをしています。角膜ヘルペスは、この角膜にヘルペスの症状が現れます。
角膜ヘルペスの原因は口唇ヘルペスと同様に単純ヘルペスウイルス1型です。ヘルペスウイルスは幼いときに感染している人も少なくはありません。初めて感染したときには症状が出ず、気づかないうちに感染していたという人もいます。
一度感染すると体内からウイルスは完全にいなくなることはありません。ウイルスは神経が集まっている神経節(しんけいせつ)という部位に潜み続け、疲れやストレスがたまったときなど何らかの引き金によって、発疹や水ぶくれ、痛みといった症状をあらわします。
顔の近くには、いくつもの大きな神経があります。耳の後ろには、顔の痛みを支配している三叉(さんさ)神経の神経節があり、ここに隠れていたウイルスが活発になりウイルスが目に広がると角膜ヘルペスになってしまう可能性があります。
角膜ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルスは、幼少時に知らないうちに感染していることも多いです。ただし、同じ空間で過ごしていたからといって他人にうつるということはあまりないと考えられています。
しかし、特に乳幼児など、これまで感染したことのない人にウイルスがうつる可能性は考えられます。目の粘膜や涙の中にはウイルスが含まれています。目をこすった手で小さな子供に触れたり、タオルを共有したりすることは止めましょう。
角膜ヘルペスは、症状としては、目の痛みやゴロゴロとした感じがする異物感や涙の増加、まぶしさを感じたり、視力が低下したりすることもあります。基本的には片側だけで起こり、再発を繰り返すことが特徴です。角膜の構造は3層に分かれていますが、症状がでる部位によって大きく「上皮型」と「実質型」に分類されます。
角膜の最も外側の細胞でウイルスが増殖してしまいます。感染した細胞が炎症を起こして白く抜け落ちることもあります。実質型に比べると痛みは弱いといわれ、治療は抗ウイルス薬(軟膏)を使います。
角膜の内部でウイルスに対しての免疫反応が起こり、炎症が起こってしまいます。角膜が腫れて、だんだんと濁ってきます。治療は数ヶ月かかることもあり、抗ウイルス薬とともにステロイド点眼薬も併用します。
ステロイドの使用は正しく使用しないと症状を悪化させることもあるため、医師の指示に従うことが大切です。特に実質型では再発を繰り返すことで視力の回復が難しくなることもあり、最悪の場合は失明の可能性もあります。
角膜ヘルペスの治療では、抗ウイルス剤であるアシクロビル軟膏が用いられます。患部を清潔にして、きちんと外用薬を塗りましょう。必要に応じて眼帯を使うこともあります。ただし、眼帯の使用にあたっては清潔にしておくことが必要ですから、外用薬の使用方法と共に医師の指示をきちんと守りましょう。
また、ストレスや疲れは回復をさまたげます。治療中はしっかりと身体を休めることも大切です。紫外線は患部へのストレスになるため、サングラスや帽子、日傘などUVカット機能のある小物を使用したり、海や山といった紫外線の強い場所への外出は控えたりしましょう。
角膜ヘルペスは症状が改善した後も再発を繰り返すことがあります。再発を防ぐには以下のような対策を行いましょう。
角膜ヘルペスは、再発することが多く最悪の場合は失明してしまうこともある厄介な病気です。早い段階で治療を開始しましょう。目はたくさんの情報を取り入れる大切な器官です。近年では角膜ヘルペスに対して高い効果が期待される薬が開発されていますから、他のヘルペスと同様、早くに治療を開始して症状を悪化させないことが大切です。また、まだ免疫力が弱い幼い子どもにはうつさないための対応も大切になります。