記事監修医師
川崎たにぐち皮膚科、院長
皮膚が赤く硬くなり、フケがポロポロと剥がれ落ちる症状が特徴の「乾癬」は、周囲にうつる病気なのでしょうか。また、子供に遺伝することはあるのでしょうか。以降で詳しく解説していきます。
乾癬は、皮膚から少し盛り上がってボコボコした部分や、カサカサした赤い発疹の上にフケのようなものが付着して、ポロポロと剥がれ落ちる皮膚の病気です。
乾癬患者の皮膚では、炎症を起こす細胞が密集しており、同時に毛細血管が増えるため、皮膚が硬くなり赤みを帯びた状態になっています。皮膚表面の細胞は健康な皮膚と比べて10倍以上の速度で生まれ変わっているため、過剰に生産された皮膚は分厚く積み上がってすぐに剥がれ落ちるようになります。
乾癬の症状は人によって発生する場所が様々で、適した治療法も異なりますが、人に感染する病気ではありません。温泉やプール、美容院で洗髪や散髪をする場合に、皮膚に触れても他の人にうつることはないです。
とくに頭皮の清潔を保つために、美容院や理髪店には定期的に通うことが好ましく、スタッフに乾癬を理解してもらったり、頭皮に刺激の少ないように施術をおこなってもらったりすると良いでしょう。治すというより上手につきあっていく病気ですので、家族や周りの人に正しく理解してもらうことが大切です。
乾癬は人にうつるものではありませんが、「乾癬になりやすい体質」は遺伝する可能性があるといわれています。しかし遺伝したからといって必ずしも発症するのではなく、食生活や気候、ストレス、肥満などの環境因子も関わっていると考えられています。
また、日本人の乾癬患者は男女比では2対1で男性に多く、患者の年齢層は乳幼児から高齢者までと幅広いですが、男性ではとくに30代、女性では10代または50代での発症が多いといわれています。
乾癬には免疫機能の異常が深く関わっており、もともと免疫異常が起こりやすい人が環境やストレスなどの刺激によって発症するのではないかとも考えられています。本来、免疫機能は体を守るシステムであるため、細菌やウイルスなどの異物が体内に侵入してくるのを防いでいますが、この免疫機能が何らかによって異常をきたし、異物ではなく自分自身に攻撃してしまい、炎症を引き起こしているのです。
乾癬の典型的な症状である皮膚が剥がれ落ちる症状は、免疫機能の異常が原因の一つであり、近年では乾癬は皮膚の病気であると同時に、糖尿病や高血圧症、心筋梗塞とも関係していて体全体に関与する病気であると考えられるようになっています。
乾癬はその病名から感染するものと誤解されがちですが、うつる病気ではありませんし、遺伝についても発症の割合は少ないものです。また、医師による適切な治療で症状を抑えることができることも多いといわれています。乾癬についての悩みや不安がある場合には、専門の医療機関や患者会などに問い合わせてみましょう。