関節症性乾癬の症状と治療法について

2024/11/6

谷口 隆志 先生

記事監修医師

川崎たにぐち皮膚科、院長

谷口 隆志 先生

乾癬の症状に加え、関節炎の症状も併発する「関節症性乾癬」という疾患をご存知でしょうか。今回の記事ではこの関節症性乾癬の症状の特徴と治療法について解説していきます。

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関節症性乾癬の症状の特徴

関節症性乾癬は、乾癬と関節炎の症状をあわせもった病気です。乾癬を発症している人のうち、約6~42%に発症すると言われています。多くの場合、先に乾癬の症状があらわれた後、数カ月から数年にかけて関節の痛みが起こりますが、関節症状のみ起こる人や同時に症状が現れる人もいます。関節症性乾癬の原因はまだ明らかになっておらず、遺伝的な体質とストレスや感染症などの要因が複雑に関わって、体の免疫機能に異常を引き起こすことで皮膚や関節で痛みや腫れが生じると考えられています。

乾癬は、皮膚のところどころに赤い角質をともなった紅斑ができてぽろぽろと剥がれ落ち、良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性の皮膚疾患です。ひじやひざ、頭皮など、こすれやすい場所に起こりやすい傾向があります。治療では、外用薬や内服薬、光線(紫外線)治療や注射治療とともに、乾癬の悪化要因になる生活習慣を避けるなど、ひとりひとりに合った方法で症状を抑えます。

一方、関節炎では手足の関節や指先の関節、足裏やかかとあたりの痛みや腫れ、首や腰、背中などにこわばりが感じられたり、爪に点状のでこぼこができる乾癬特有の症状が現れる場合もあります。また、関節炎の痛みや腫れで関節の動きが制限されるようになったり、「ソーセージ指」と呼ばれる指趾の全体の炎症性の腫れがみられることもあります。

治療せずに放置すると、関節が破壊されて動かしにくくなり、体が動く範囲が小さくなったり、関節が変形したりします。関節が変形してしまうと元に戻らないので、早期に適切な治療をおこない、日常生活に支障をきたさないようにすることが大切です。

爪の症状と関節症性乾癬の関係性

乾癬は爪に症状があらわれやすく、爪がボロボロになったり、点々としたへこみや変形が見られたりします。このような症状がみられた場合は、同時に関節症性乾癬を疑われる可能性があります。これは、「乾癬症関節炎患者には爪や頭部、おしりなどの肛門周囲に乾癬の症状が見られることが多い」という報告があるためです。一方、皮膚症状がごくわずかで、関節症状を訴える人も多くいます。このような場合は関節症性乾癬に気づくのが遅くなる場合があるので、気になる症状に気づいたら早めに医師に相談しましょう。

関節症性乾癬の治療方法について

関節症性乾癬の治療は、皮膚症状の治療に加えて関節症状の痛みや腫れ、こわばりを最小限に抑えることが目標となります。特に関節症状を抑えることは、将来、関節機能を維持して日常生活に影響を与えないために大変重要です。罹患年数、皮膚症状、関節症状、検査所見によって病気の程度を見極め、炎症を抑えて関節破壊の進行を抑制し、厳密にコントロールしていく必要があります。

現在使用されている主な薬剤として、非ステロイド性抗炎症薬、免疫抑制薬、生物学的製剤の3つがあります。

非ステロイド性抗炎症薬
炎症を抑える働きをして痛みをやわらげますが、比較的軽い症状の場合にしか使えません
免疫抑制薬
関節リウマチにも用いられる薬で、免疫の異常を抑えて関節の痛みや腫れを改善する目的で使います
生物学的製剤
痛みや腫れの原因となるたんぱく質に直接作用して症状を抑え、痛みや腫れの改善だけでなく、関節の壊れを抑える効果もあります。皮下注射と点滴薬があります

生物学的製剤は科学的に医薬品として合成されたものではなく、生物が合成するたんぱく質を応用して作られた治療薬です。従来の治療法ではあまり改善がみられない場合に使用される場合がありますが、すべての人に使用できるわけではありません。副作用があらわれることもあり、長期的に使用した場合での不明点が多いと言われています。

おわりに:症状がひどくなる前に医師に相談し、治療を開始しよう

関節症性乾癬は、すでに乾癬を発症している人の発症リスクが高いといわれています。関節症状を長く放置すると日常生活に支障が出る恐れもあるので、関節の痛みや腫れ、爪の病変などがみられたら、早めに医療機関を受診しましょう。

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