脳梗塞の手術にはどんな種類があるの?

2018/6/7

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

何らかのきっかけで脳内の動脈に血栓ができ、血管が詰まって脳細胞の損傷や壊死を引き起こす「脳梗塞」。
脳梗塞になってしまった場合の手術治療には、どのような方法があるのでしょうか。
今回は脳梗塞の手術について、手術の種類とそれぞれの手術方法をわかりやすくご説明していきます。

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脳梗塞の手術にはどんな種類があるの?

脳梗塞治療の基本は投薬治療ですが、外科手術によって症状の悪化や再発を防げると判断された場合には、手術治療が行われます。

代表的な手術療法としては「脳血管バイパス術」「内頚動脈内膜剥離術(ないけいどうみゃくないまくはくりじゅつ)」「血管内ステント留置術」の3つがあります。

次項からは、上記3つの脳梗塞の手術療法について、それぞれ解説していきます。

脳梗塞の手術:脳血管バイパス術

血栓によって血流が滞っている脳細胞に、別の血管をつなぎ合わせて血液のバイパス(迂回路)を作り、脳梗塞を治療し症状の悪化を防ぐ手術療法です。

特に、以下の状態の脳梗塞患者に使用されることの多い手術療法になります。

  • まだ脳梗塞が発症していない、血栓の兆候が見られるなど発症の前段階
  • 軽度・初期の脳梗塞症状が見られる場合
  • 脳に血液を送る太い血管(内頚動脈・椎骨動脈)に狭窄や病変が見られる場合

具体的な手順としては、全身麻酔で手術用の顕微鏡を使い、こめかみにある動脈を剥離して取り出し、開頭して脳内の2本の血管をつなぐよう縫い合わせて、バイパスを作ります。直径1mmほどの血管をつなぐ縫合するため、かなり高度な技術が必要とされます。

脳梗塞の手術:内頚動脈内膜剥離術

脳梗塞の原因となっている頸動脈(首~顎、脳にかけて続く太い血管)の狭窄を解消するため、頸動脈を開いて狭窄原因である血管内膜を除去する手術療法です。「CEA」とも呼ばれるこの方法は、特に、以下の状態の脳梗塞患者に使用されることの多い手術療法になります。

  • 何らかの理由で頸動脈の血管内膜が肥大し、狭窄することが原因で起こる「アテローム(動脈硬化)血栓性脳梗塞」の患者
  • また、アテローム血栓性脳梗塞の兆候が見られる場合

具体的な手順としては、全身麻酔で狭窄が見られる部位の頸動脈を露出させ、血管を開いて硬くなっている血管内膜をはがして取り除き、再び血管を閉じるというものです。

手術の際には一時的に頸動脈を結束して血流を遮断するため、手術が原因の脳梗塞にならないよう、慎重に脳の状態を確認しながら作業をすすめる必要があります。

脳梗塞の手術:血管内ステント留置術

血栓が詰まっている箇所に「ステント」と呼ばれる網状の医療機器を設置し、血管を拡張して血管の詰まりを解消、血栓を除去する手術療法です。特に、以下の状態の脳梗塞患者に対して使用されることの多い手術療法になります。

  • 患者が高齢で、開頭などの大規模な外科手術に耐えられないと判断される場合
  • 可能な限り、患者の身体的負担を減らして治療をすすめる必要がある場合

具体的な手順としては、局所麻酔をしたうえで足の付け根・肘の血管からマイクロカテーテルを挿入して脳の患部にまで到達させ、血栓を取り除いて血管を拡張させます。

血管はカテーテルに取り付けたバルーンを膨らませて拡張させ、除去した血栓はフィルターでキャッチした後、拡張状態を維持するためのステントを留置するのが一般的です。

全身麻酔や身体にメスを入れなくても行える手術であるため、患者の身体への負担が少なく、回復も早い傾向があるのが特徴です。

おわりに:脳梗塞の治療は、投薬と3種類の代表的な手術療法によって行われる

脳梗塞は一度発症すると再発しやすく、再発を繰り返すごとに重症化していく恐ろしい脳疾患です。治療には、継続的な投薬による症状の改善・再発予防に加え、外科手術も検討されることがあります。「脳血管バイパス術」「内頚動脈内膜剥離術」「血管内ステント留置術」のどの手術療法を選択するかは、患者本人の状態や医師の判断によって変わってきます。それぞれメリットやデメリットも異なるので、主治医と相談の上、適した手術を選択していきましょう。

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