記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
めまいや立ち眩み、動悸など、さまざまな症状を引き起こす貧血。消化器症状の下痢とは全く関連性がないように思えますが、貧血で下痢を起こしたり、下痢によって貧血が起きたりすることはあるのでしょうか?
今回は貧血と下痢症状の関係について、下痢を引き起こす貧血のタイプや、貧血と下痢が同時に起きているときに考えられる原因などを解説していきます。
貧血全体の70~80%を占め、最も発症頻度が高い「鉄欠乏性貧血」では、貧血の症状として下痢が起こることは、まずないといわれています。
しかし、「巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ)」の場合は、下痢が起こる可能性が指摘されています。この場合は、消化器官の機能低下により、ビタミンB12・葉酸の不足が起こることで、発症するものと考えられています。
鉄欠乏性貧血の治療では、不足した鉄分を補うために鉄剤の投与が行われます。治療効果は高いですが、鉄剤は下痢や便秘、吐き気などの消化器症状を引き起こすことがあります。
鉄剤の服用を開始して、あまりにも下痢がひどい場合は、担当医に相談して薬の種類や量を調整してもらうようにしましょう。
一般的に貧血が原因で下痢が起こることはほとんどないものの、逆に下痢が続くことで貧血を引き起こす可能性があります。
これは、下痢が長期間にわたって続く場合は腸に炎症が起きている可能性が高く、腸が傷ついて出血し便に血が混じったり、消化機能が低下して栄養不良に陥る可能性があるためです。
このような腸の炎症状態が悪化してくると、結果として発熱や腸の粘膜・壁に穴が開く潰瘍にまで症状が及び、結果的に貧血症状が引き起こされるケースがあるのです。
なお、貧血を起こすほどの強烈な下痢症状が長く続いている背景には、腸に炎症を起こす重大な疾患が潜んでいるかもしれません。下痢から貧血を起こした場合に原因として考えられる病気は、以下の通りです。
下痢と貧血を長く併発しているなら、上記のような病気の可能性があります。すぐに病院で医師の診断・治療を受けてください。
貧血症状や下痢は、妊娠超初期にも引き起こされることがあります。
とくに、妊娠前から貧血症状気味の人は、妊娠による急激な女性ホルモンバランスの変化によってめまいや立ちくらみなどの症状が現れやすくなります。
また、女性ホルモンは腸の運動を促す効果があるものがあり、大量に分泌されることで下痢を引き起こすこともあります。
下痢や貧血症状は妊娠の兆候の可能性もありますので、思い当たる場合は安易に市販薬などを服用せずに、検査薬で調べたり、病院を受診するようにしましょう。
鉄分が不足することが原因で起こる一般的な鉄欠乏性貧血では、症状として下痢が起こることはありません。
貧血と下痢が同時に起こったときには貧血のなかでも巨赤芽球性貧血、鉄剤の影響、何らかの腸疾患、妊娠の可能性があります。
いずれにして医師による診断・治療が欠かせませんので、下痢と貧血が一緒に起こっている場合はすぐに病院を受診しましょう。