記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/23
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
前回の記事では、「きちんと衛生管理を保つのは、あらゆる病気を予防する面で大切」ということをお伝えしてきました。
今回の記事では、アレルギー増加の原因や生活環境とアレルギーとの関連性などを巡る質問にお答えしていきます!
アレルギーは過去20年間で急激に増加しており、その理由は完全にはわかりません。
原因として細菌の種類の変化も指摘されますが、要因の1つにすぎません。
ほかの考えられる要因としては、
・食生活の変化
・アレルギーの原因となる食べ物の摂取
・住んでいる場所の影響
・アレルギーの家族歴
・運動量
などがあります。
また、人間の免疫系がまだ発達していた石器時代に人間と並んで進化した、「オールドフレンズ」と呼ばれる多数の良性の細菌との接触を失ってしまったせいだという理論もあります。
科学者にも完全にはわかっていませんが、「オールドフレンズ」には、特に田舎などの屋外環境と同様に、皮膚、腸、喉のあたりで見られる良性の細菌が含まれていることを示す研究があります。これらの「オールドフレンズ」には、風邪、インフルエンザ、麻疹、サルモネラ症、ノロウイルスなどの感染症を広げる有害な細菌は含まれないと考えられています。
農場で生活する子どもにアレルギーの発生が少ないことを示す研究があります。
その理由としては、農場(特に家畜)は免疫系を刺激し、アレルギーを発症するリスクを減らすさまざまな種類の良性および悪性の病原体にさらされる機会を増やすことが考えられています。
古き良き田舎の土でさえも、有害な細菌を含む可能性があります。だから、衛生基準を緩めると、「オールドフレンズ」ではなく、大腸菌O104のような「新しい敵」にさらされる恐れが出てきます。そうなると感染症のリスクが高まり、過去のような「寿命が短く、4人中1人が5歳になる前に死んでいた」時代に逆戻りすることになります。
現在のところ、花粉症や喘息などのアレルギーの増加と家庭用洗浄剤や抗菌剤などの含有物に関連があるという証拠はありません。
入浴やシャワーによって皮膚から細菌が除去されますが、身体を洗ったり、シャワーを浴びたり、入浴する頻度とアレルギーのリスクの増加を結びつける証拠はありません。
抗生物質の使用とアレルギーの増加を結びつける研究はいくつかあります。
抗生物質は皮膚や腸の細菌の量を減らす可能性があるため、免疫系が無害な細菌と有害な細菌を区別するのが難しくなるのではないかと考えられています。
ワクチンは、アレルギーレベルの増加に関連しないと考えられています。ワクチン接種は、現代医学のどんな進歩よりも多くの命を救い、深刻な病気を予防してきました。
ワクチンは、免疫系を刺激し実際にその病気に感染することなく、抗体を産生することによって作用します。すべての新薬と同様に、すべてのワクチンは一般に公開される前に安全性について広範に検査されています。
小児期の食生活の変化がアレルギーの増加の原因となる可能性があるという研究が複数あります。 離乳時にピーナッツ、牛乳、卵などのアレルギーを引き起こす可能性のある食べ物(アレルゲン)を取り入れ、授乳を継続することで、幼児期にアレルギー疾患を発症する子どもの数を減らすことができると考えられていますが、これは単なる理論であり、いまでも世界中で数多くの研究が進められています。
現段階では、生後6ヵ月までは完全に母乳で育て、6ヵ月以前にピーナッツ、ナッツ、卵、魚、甲殻類、牛乳、大豆、小麦(およびライ麦、大麦、オーツ麦などのグルテンを含む他の穀類)のようなアレルギーを起こす食品を与えないようにすることが推奨されています。
2回にわたって記事をお届けしてきましたが、いかがでしょうか。
アレルギーに関する研究は近年もさかんに行われていますが、アレルギーは潔癖症というより生活習慣が原因で発生する傾向があるので、いまのキレイな状態はそのままに維持してくださいね。