記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/3
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
がんの手術や放射線治療の後に、リンパ浮腫が起こる可能性があります。リンパ浮腫を予防・改善するためには、スキンケアを中心に、圧迫療法やリンパドレナージを行う必要があります。今回はこういったスキンケアや治療法についてご紹介します。
リンパ浮腫とは、がんの手術や放射線治療の後に、リンパの流れが悪くなって、腕や脚などがむくむ病気です。このリンパ浮腫や感染症(蜂窩織炎)を予防するためには、日々のスキンケアが大切です。そこで具体的なスキンケアのポイントについて紹介します。
リンパ浮腫の悪化を防ぐためには、皮膚を清潔な状態に保つ必要があります。
そのため
などを意識することが大切です。
また、皮膚にはさまざまな細菌が付いているため、きれいに洗うことも重要になります。
自分の肌に合っている石鹸やボディソープを選び、なるべく石鹸を泡立てて、ていねいに洗うようにしましょう。とくに皮膚のしわや指の間、つめの隙間などをしっかりと洗い、その後よくすすいでから、丁寧に水分をふき取ります。
皮膚が乾燥するとバリア機能が低下して、感染症を引き起こすリスクが高くなります。そこで皮膚を洗った後には、保湿剤や保湿クリームをつかって皮膚の潤いを保つようにしましょう。また、アルコール成分が少なく、添加物が少ないものを使うことをおすすめします。
皮膚にケガや病気があると、そこから細菌が入り込む可能性があります。そのため、たとえば水仕事や草むしりを行う際にはゴム手袋を着用する、無駄毛の処理には電気シェーバーを使用する、外出時には日傘を差すなどの対策を行うようにしてください。
また、皮膚に水虫や湿疹などの病気が見られる場合も、なるべく早めに治療を行うようにしましょう。なお、虫刺されにあった場合には、まずきれいに刺された箇所を洗い流し、必要に応じて、かゆみ止めなどを使うようにしてください。
リンパ浮腫の治療法に「圧迫療法」というものがあります。これは弾性着衣や弾性包帯を使って、身体の圧力を高める方法です。さらに、必要に応じて、圧迫した状態での運動を組み合わせることもあります。続いては、これらの治療法について説明します。
リンパ浮腫を予防するために「リンパドレナージ(詳しくは後述します)」を行っていても、その後の圧迫が不十分だとむくみは軽減しません。リンパドレナージでむくみを解消した状態を保つために、弾性着衣や弾性包帯を使って「圧迫療法」を実施する必要があります。
軽度から中度のリンパ浮腫であれば、弾性着衣を使った圧迫療法が行われますますが、弾性着衣には弾性スリーブや弾性ストッキングなどがあり、サイズや圧迫力などにも違いがあります。腕や脚の太さ、基礎疾患の有無、むくみの状態などを考慮して選びましょう。
また、重度のリンパ浮腫であれば、弾性包帯を使った圧迫療法が行われます。弾性包帯とは圧迫療法を行うための専用の包帯のことです。むくみの状態などに合わせて、調整しながら包帯を巻いていきます。
弾性着衣や弾性包帯を使った状態での運動は、むくみを改善するために効果的です。圧迫した状態で運動すると、その筋肉の運動が皮下組織にも加わるようになります。その結果、リンパ液の排出を促す作用が期待できます。
運動のポイントはできるだけゆっくりと身体を動かすことです。たとえば、腕のむくみであれば肘や手首の曲げ伸ばしなどを、脚のむくみであればひざや足首の曲げ伸ばしなどを行いましょう。なお、過度な運動はむくみを悪化させる恐れもあるので注意してください。
リンパ浮腫の発症予防を目的としたマッサージ方法に、「用手的リンパドレナージ」と呼ばれるものがあります。これは腕や脚に溜まったリンパ液を、リンパ節へと促す医療的なマッサージ方法です。美容目的のマッサージとは異なるものなので、間違わないようにしてください。
用手的リンパドレナージとは、むくみの改善を目的とした医療用のマッサージです。腕や脚に溜まってしまったリンパ液を、正常に機能しているリンパ節に戻すために行います。なお、現状有効とされているのは「医療機関で行われているリンパドレナージだけ」です。
用手的リンパドレナージは医療技術であり、疲労回復や美容目的のためのマッサージとは異なります。また、セルフリンパドレナージ(患者自身が行うマッサージ)に効果があるかは分かっていません。そのため、独学でマッサージを行わないほうが良いでしょう。
リンパ浮腫を予防・改善するためにはスキンケアなどに注意しつつ、ご自身の状態に合った治療に取り組む必要があります。なお、いずれの治療についても、ご自身で勝手に判断しないことが大切です。医師の指示のもとに、しっかりと治療を続けるようにしてください。