記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/2 記事改定日: 2019/7/18
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
肺の感染症の中でも知名度の高い「結核」ですが、結核とは具体的にどのような病気かご存知ですか?実は肺以外にも発病することがあります。
この記事では、結核とはどのような病気かについて解説していきます。
結核とは、結核菌が体内に入ることにより起こる感染症で、主に肺に巣食うことが多いです(肺結核)。
炎症が悪化するとやがて組織が化膿して溶け出し、咳やくしゃみとともに肺の外に菌が排出されると病巣が空洞になります。肺結核では病巣の空洞状態が長く続くため、レントゲン(X線)で撮影すると病巣が影になって写ります。
結核菌の多くは体の抵抗力によって排除されることが多く、感染する確率は低いとされています。ただ、免疫低下などがきっかけで感染・発病すると、初期症状として痰、微熱、寝汗、だるさ等々の症状が出始め、さらに悪化すると血痰や喀血が出ることもあります。
空洞になった病巣は結核菌の絶好の住処となるため、増殖した菌が肺を侵食するようになるまで悪化すると呼吸困難で死に至ることもあります。
2週間以上咳が続くようであれば、念のため早めに医療機関を受診しましょう。
結核の多くは、肺に症状が現れる「肺結核」ですが、結核菌は、全身の至る所に広がり病巣を作る特徴があり(肺外結核)、約2割は以下の部位で症状が起こります。
また、血液を通って脳の髄膜に行き着いた菌が病巣を作る「結核性髄膜炎」は、1/3確率で死亡例があるとされ、完治しても後遺症が残ることが多い危険が高い病気です。
「粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)」は結核菌が血液を通り全身に運ばれ発症する結核で、近年では早期のうちに治療を開始できれば治癒が期待できる病気になってきました。
肺炎は、肺が細菌やウイルスなどの病原体に感染することで炎症が起こる病気です。
主な症状として、発熱、咳、痰、息苦しさ、胸痛などが起こり、重症化すると安静時も息苦しくなる、意識消失、脱水によるショック状態などの重篤な症状が起こることがあります。
初期症状である発熱や咳などは、風邪などでも起こるため、症状のみで判別することは難しいです。
結核が肺炎と違うところは、潜伏期間が長く、感染しても体内で病巣が形成されて発病するまでは咳などの症状が現れないことです。
結核の潜伏期間は、感染後半年~1年程度といわれています(ただし、若い人は感染から数ヶ月後に発病することもあります)。
これは肺炎にも共通することですが、結核発病の主な原因は免疫力の低下です。
加齢、免疫抑制剤・ステロイド剤の使用、透析、コントロール不良の糖尿病などが起因し、そのほかにも過労や睡眠不足、不規則な生活習慣、無理なダイエット、過度のストレスなどが原因になることもあります。
以下のような症状が見られる場合は、肺結核を発病している可能性があるため、一度医療機関を受診しましょう。
結核は空気感染する感染症です。
空気感染とは、発病者の痰や唾液などに含まれた状態で体外に排出された病原体が、空気中を漂って近くにいる人が吸い込んで感染する感染経路のことです。
空気感染は発病者に直接的に触れたり接近しなくても、発病者と同じ空間にいるだけでも感染してしまうので、手洗いや手指消毒など一般的な感染対策をしても予防効果がありません。また、市販されているマスクも、繊維の目が荒く結核菌のような小さな病原体は通過してしまうので、感染予防効果はほとんどありません。
結核は発病したとしても目立った症状が現れないことが多く、発見が遅れる傾向にあります。
学校や職場、老人福祉施設など人が集まる密閉された空間に発症者がいると、知らずに同じ空間にいる人に感染させてしまうリスクがあります。
結核の感染を完全に予防することは困難です。確実性の高い唯一の予防法はBCGワクチンの接種になりますので、一度はワクチン接種歴を確認し、接種歴がない場合には病院で相談しましょう。
結核とは、結核菌が体内に入ることにより起こる感染症で、主に肺に発生します。ただし、肺以外にも結核が起こることもあり、特に脳に発生する「結核性髄膜炎」は死亡する確率が高いため、症状の経過をしっかりと観察し、早期発見に努めることが大切です。
気になる症状があるときは、早めに病院で検査してもらいましょう。