記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/2 記事改定日: 2018/8/23
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、感染症科
上田 晃弘 医師
近年、HIVの新規感染者やHIV感染症による死亡者数は減少しつつありますが、HIV感染症は完治することはあるのでしょうか?また、ウイルスの増殖を抑える方法はあるのでしょうか?HIVの予後や治療方法について解説していきます。
現在の医学ではまだ、HIVを体内から排除し完治させることはできません。しかし、適切な治療を受けることで体内のHIVの増殖を防ぎ、免疫力機能を保つことができるので、エイズ発症を防ぐことが可能です。
また、HIVの感染後も薬の服用を続けることにより、日常生活を普通におくったり、妊娠や出産をすることができます。ただし、エイズ発症後は発症前と比較すると治療効果が得られにくくなるため、早期発見・治療に努めることが大切です。
現在のHIV感染症の治療では、抗HIV薬を3~4剤を併用して行う強力な抗ウイルス治療が主な治療法となっています(Anti-retroviral therapy(ART)と呼ばれます)。抗ウイルス薬が開発され始めた当時は1~2剤を用いた治療が行われましたが、ウイルスが治療中に薬に耐性を獲得することにより薬の効果が得られなくなっていました。その後抗ウイルス薬の開発が進み、複数の薬剤を併用するARTが行われるようになり、耐性が獲得されにくくなり、治療効果は格段に改善されました。
現在主流となっているARTの開発後は、HIV感染症に対する治療効果は飛躍的に向上しました。しかし、まだ体内から完全にHIVを排除し完治することはできず、抗HIV薬の服用は一生継続して行う必要があるのです。
抗HIV薬は、飲み忘れや断薬など途中で服用を中止してしまうと、ウイルスが薬への耐性をつけてしまうため、効果が得られなくなってしまいます。事実、患者さんの2人に1人は、内服10回のうち1~2回の服薬を忘れるだけで治療が失敗するともいわれています。ウイルスが薬に対する耐性を持つと、使用できる薬の数がどんどん減っていくため、その後の治療がそれだけ難しくなります。
HIVの治療では、HIVの耐性化を防ぎ、治療を成功させるために服薬率100%を目指すことが重要です。このためには患者さん自身が積極的に治療方針の決定に参加し、治療を実行していく姿勢が必要です。このように治療に積極的にかかわっていく姿勢を「アドヒアランス(Adherence)」といいます。
アドヒアランスを維持するためには患者さん自身の治療に対する積極的な姿勢が必要不可欠ですが、それだけではなく、家族や友人、医師、看護師、薬剤師、カウンセラーなどの周囲の人が一緒に協力し、患者さんを支えることが大切です。自分だけではアドヒアランスの維持が困難な場合は、来院回数を増やしたり、家族や友人に頼るなど周囲の人に支援を求めましょう。
現在の医学ではまだ、HIVを体内から排除し完治させることはできません。しかし、適切な治療を受けることで体内のHIVの増殖を防ぎ、エイズ発症を遅らせることができます。
HIV感染症の治療では、抗HIV薬を3~4剤を併用して行うARTを行いますが、途中で服用を中止してしまうと効果が得られなくなってしまうため、患者さん自身が積極的に治療方針の決定に参加し、治療を継続していく姿勢(アドヒアランス)が必要になります。