脳梗塞は脳卒中の一種って本当?

2018/7/4

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

「脳梗塞」と「脳卒中」はいずれもよく耳にする言葉かと思いますが、この両者にはどのような違いがあるのでしょうか?脳卒中の原因や予防法と併せて、わかりやすくご紹介していきます。

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脳卒中とは?

脳卒中は、急性の脳血管障害が生じることで循環障害を来した状態です。脳梗塞や脳出血などに分けられます。

血液には、酸素や栄養を全身に運搬する働きがあるのですが、動脈の詰まりや破れなどにより脳への血流量が減少すると、脳の神経細胞に異常が生じ、半身のしびれ・麻痺・言語障害などの症状が起こります。

そしてこの脳卒中の中でも、脳の血管が詰まったり閉塞したりすることで脳への血流が減少し、神経細胞が障害された状態を脳梗塞と言います。

脳卒中の病型によって、治療が抗血小板療法か抗凝固療法かなどが異なり、入院後のマネジメントが全く異なります。 しかも、適切な抗血栓療法を間違えると、効果がないばかりか出血性副作用が増えて害しかないこともわかっています。
したがって、脳梗塞の病型を見極めることが再発予防のために極めて重要なのです!

脳卒中は「血管の詰まり」「血管の破れ」で起こる!

脳卒中はその原因により、いくつかの種類に分けられます。

血管が詰まる

脳梗塞
脳の血管の詰まりや狭まりに伴い、血流が悪くなる症状です。慢性的な高血圧により脳の血管で動脈硬化が起こります。これが脳梗塞の原因となります。
脳血栓塞栓症
左心房などで生じた血栓が大動脈、内頸動脈を通過し、脳血管で詰まり閉塞をもたらします。これにより脳虚血が生じるものが脳血栓塞栓です。卵円孔開存症などがある場合には、深部静脈などで生じた血栓などが咳などをきっかけに右左シャントで左房に入ることで脳塞栓を生じることがあり、これを奇異性塞栓といいます。
一過性脳虚血発作
一時的に脳の血流が低下する状態で、すぐに血流が元に戻ることが特徴です。
脳梗塞の前兆として起こることがあります。

血管が破れる

脳出血
脳の細い血管が破れたり出血する症状です。
くも膜下出血
脳の表面にある大きな血管に作られた動脈瘤が破れ、くも膜下腔に血液が流出する症状です。

脳卒中はどうすれば予防できる?

脳卒中を予防するには、以下のことに気をつけましょう。

  • 30代以降になったら、自分の血圧の計測やコントロールをするようにしましょう
  • 塩分やコレステロール控えめの食事を心がけましょう
  • ストレス解消やリラックスできる時間を作りましょう
  • 適度な運動を心がけましょう
  • 40歳以上の人は定期的に脳の検査(脳ドックなどで)を行いましょう

また、以下のような持病がある人は、適切な治療のもと状態をコントロールする必要があります。

① 高血圧

脳卒中を予防するためには、その原因となる高血圧を改善することが重要となります。塩分控えめの食事や、適度な運動を心がけましょう。

また、現在は薬物治療による高血圧の改善が可能となり、収縮期血圧を下げることにより脳卒中が起こる確率を減らせます

② 糖尿病

血糖コントロールの目安となるHbA1cの正常値は5.8%以下ですが、糖尿病患者の場合は6.5%を上回る数値になります。
HbA1cの値を1%下げると、脳卒中になる確率が12%低下するとされているため、糖分やカロリー控えめの食事や適度な運動、薬物治療などを行い、血糖値のコントロールを行いましょう。

③ 高脂血症(脂質異常症)

高脂血症の治療による脳卒中への効果は長年不明とされてきましたが、コレステロール低下薬の一種であるスタチン系の薬剤を使用することで、脳卒中が起こる確率が低下したという報告が最近注目されています。

④ 心房細動

脳卒中の既住歴のある人や、高血圧・心不全などの心房細動を合併している人は、脳卒中になる確率が高いとされていますが、抗凝固薬を使用することにより改善できます。

脳卒中を予防するための生活習慣

上記のような持病がない人も、下記のことに注意して健康的な生活習慣を送るようにしましょう。

運動習慣
肥満・高血圧・糖尿病・高脂血症などを予防するためにも、適度な運動(ウォーキング・ジョギング・自転車・水泳など)を日頃から行うようにしましょう。
水分補給
脱水になると血流が悪くなるため、多汗・嘔吐・下痢・発熱時などにより水分不足に陥らないようにこまめに水分補給を行いましょう(特に高齢者、病気の時、夏場など)。
温度変化
急激な寒暖の温度変化により心臓に負担がかかると、血圧が急激に上昇し、脳卒中を引き起こすことがあります。衣服を重ねて温度を調整するなどの工夫をするようにしましょう。
その他
喫煙、過剰な飲酒、過労、ストレス、睡眠不足なども脳卒中の原因となることがあるので、注意しましょう。

食生活のヒント

脳卒中を予防するために、以下のことに気をつけてください。

減塩
血圧上昇を防ぐために、1日の食塩摂取量を5~7g(多くて1日10g)までに抑えるようにしましょう。
肥満解消
高血圧・糖尿病・高脂血症の原因となる肥満にならないように、カロリーや糖質(炭水化物)の控えめの食事にしましょう。理想体重は身長(m)×身長(m)×22(70歳以上は21)とされています。
コレステロール
脂肪分を摂り過ぎないように、動物性脂肪(肉やバターなど)の摂取を控えるようにしましょう。また、悪玉LDLコレステロールを減少させ、HDLコレステロール(善玉と言われます)を増やす効果のある食物繊維や、降圧作用や脂質代謝改善作用のあるカリウムを積極的に摂取するようにしましょう。

脳ドッグについて

脳ドッグでは、無症候性病変と呼ばれる、発作が起こる前の小さな梗塞や出血、破れていない脳動脈瘤、症状が起こる前の脳血管病変などを調べることができます。医療保険は適応されませんが、脳梗塞の疑いがある人は、定期的に受けることをおすすめします。

おわりに:脳卒中の原因となる病気を予防し、生活習慣の改善に努めよう

脳卒中とは、脳への血流が悪くなることにより、脳の神経細胞が壊死する病気全般のことです。この脳卒中を起こさないためには、それを引き起こす一因である高血圧や糖尿病などの疾患を予防・改善することが大切です。また、これらの持病のない人も日頃の生活の中で、血圧のコントロールをしたり、塩分・糖分を控えたり、運動習慣をつけたりといったケアにも努めるようにしましょう。

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