記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/12
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
がんを発症するとさまざまな症状が引き起こされますが、その一つに腹水の蓄積があります。今回はこの腹水がたまったときの特徴となる症状や治療法についてお伝えしていきます。
腹水は門脈圧亢進・血漿浸透圧の低下・腹膜の炎症・がんなどが原因となり、腹部に体液が異常に溜まる状態およびその体液のことです。
少量の腹水であれば特に症状が起こることはないのですが、液体の量が増加すると腹部が徐々に膨らんでいき、へそが平らになる・押し出されるなどの症状が起こります。これは、胃や肺が腹水により圧迫されるためだとされており、他にも様々な症状が起こることがあります。以下のような症状がある場合は、腹水の徴候の可能性があるため注意が必要です。
たまった腹水は腹腔穿刺で抜いていきます。腹腔穿刺とは、腹水の調節穿刺をすることで排液を促す治療法で、他の治療法(水分制限・利尿剤・ステロイド・抗がん剤など)で効果が得られなかった場合に用いられます。
腹腔穿刺を行う際には、急激な排液による電解質や蛋白質(アルブミンなど)の喪失を防ぐために、1回の量を1000mL以下に抑える必要があります。蛋白質の喪失により栄養低下状態になるとさらに腹水が蓄積されやすくなる恐れがあるからです。
また、皮膚が酷く張っていると、細胞と細胞の間の広がりにより傷付く恐れがあるため、なるべく腹部皮膚に刺激を与えないようにし、清潔に保つことが大切です。
ただし、腹水がたまったときはあくまでも以下のようなケアが治療の基本になります。
がんによる腹水は、がんがもともとあった場所から腹膜に広がることで起こるとされています。これは腹膜にがんが広がったときの刺激を緩和するために、液体が過剰に作られることが原因と考えられています。
そして腹膜に炎症が起きると、炎症に関連する物質や細胞(フィブリン、グロブリン、白血球など)を運搬するために血管の隙間が拡張されます。この状態を「血管透過性の亢進」といい、症状が進行していくにつれ血管から水が漏れ始め、腹腔内に蓄積されるようになります。血管透過性の亢進を引き起こす腹膜の炎症の原因には、虫垂炎の波及や、胃がんや膵臓がんが腹膜に広がることにより起こるがん性腹膜炎などが挙げられます。
また、がんが肝臓や門脈(肝臓に血液を運ぶ働きがある)に及ぶと肝臓内の血圧が上がり、血液やリンパ管から体液が滲み出て腹部に蓄積されることがあります。
肝臓の損傷により血中タンパク質が減少し体内の体液バランスが崩れると、腹部を含むさまざまな組織内に体液が集合するようになり、がんがリンパ系を遮断することで余分な液体の排出が難しくなると、腹部に液体がたまりやすくなるといわれています。
がんが腹膜へと拡張すると、それがきっかけで腹水がたまることがあります。腹水は穿刺を行えば基本的には解消するので、お腹の張りなどの異変に気づいたら必ず主治医に相談し、治療を進めていきましょう。