記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/10
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「がんが転移して…」というフレーズを聞いたことがあるかと思いますが、なぜがんは転移するのでしょうか。また、転移がわかったら、どのように治療を進めていくことになるのでしょうか。以降で解説します。
がん細胞または組織が、最初に発生した場所からほかの場所に移動して増殖することを、「転移」といいます。
正常な細胞であれば、身体や周りの状態に応じて増殖をやめたり、成熟(分化)してさまざまな機能を担うようになったり、ほかの細胞と入れ替わるような仕組みがあります。しかし、がん細胞はこうした仕組みに異常があり、そのまま時間をかけて増殖したり、ほかの場所に移動しやすくなるといった性質を持っています。
がんの再発では、治療した場所で再びがんが大きくなることもあれば、別の場所に転移して病巣をつくったり、近接する体内の空間に散らばるようにひろがる(播種)場合があります。転移では、がん細胞が血管やリンパ管に入り込み、流れに乗ってリンパの流れが集まるリンパ節、肺や肝臓、脳、骨など主に血液の流れが豊富な場所で増殖します。
がんの再発の告知は最初のがんの告知以上にショックを受けるといわれますが、自分自身が納得できる治療を受けていくためには、担当医から必要な情報を十分に得ることが大切です。落ち着いて話しにくいような場合には、家族や親しい人にも同席してもらいましょう。不安に思うことがあれば率直に伝えて相談し、医師と直接話しにくければ、まず看護師やがん相談支援センターに相談してみることもできます。
また、治療法の選択は、自分らしく生きるためにとても重要です。提示された治療法の長所、短所を書きだして比べ、別の医師の意見も聞いてみたいと思ったときにはセカンドオピニオンを受け、安心して治療を受けられるようにしましょう。セカンドオピニオンは今では医療関係者の常識になっていますので、医師が気を悪くするのではと心配する必要はありません。
転移の治療は、ほとんどの場合「がんの進行を抑える」「症状をやわらげる」ことが目標になります。ひとつの臓器に転移があった場合、身体のさまざまな部位に小さな転移が起こっている可能性を考慮して治療をする必要があり、全身に治療効果をおよぼす「薬物療法」(抗がん剤治療)や「ホルモン療法(内分泌療法)」が行われます。
抗がん剤治療では、薬剤を点滴や内服により体内に入れますが、正常な細胞にもダメージを与えてしまうため、人により使用できるものは限られます。また、悪心、おう吐、口内炎、手足のしびれや痛み、抑うつ状態、不快感、疲労感、脱毛、骨髄抑制などの副作用を伴う可能性があります。
一方ホルモン療法は、乳がん、子宮がん、前立腺がんなど細胞の増殖にホルモンを必要とするがんに対して、そのホルモンを抑えるホルモンを長期にわたって投与します。ほてりやむくみ、体重の増加などの副作用を伴うことがあります。
がん細胞には、際限のない増殖や転移のしやすさといった性質があります。血液やリンパの流れを利用して別の場所に病巣をつくるのが転移による再発で、このような場合には、進行や症状を抑える治療法がとられます。自分らしく生きるために、医師とよく相談して治療法を選択しましょう。