記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/18
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
高い致死率で知られるエボラ出血熱は、現時点で有効となる治療法がない病気のひとつです。そこで今回は、エボラ出血熱の原因となるウイルスや感染経路、予防法などをご紹介します。
エボラウイルスはウイルスの中で、フィロウイルス科という種類にわけられています。フィロとは英語の「Filamentous=繊維状」に由来しています。エボラウイルスは長径700~1,500nm、短径80~100nmで、ひも状やU字状、ぜんまい状などさまざまな形をしています。ただし身体の組織に入ると棒状となり、最も感染力が高くなるといわれるのは700nm程度のエボラウイルスです。またエボラウイルスは主に以下の5種類に分類されます。
このうち、①~③のブンディブギョ、スーダン、ザイールは一定の期間内で想定以上に感染者が増える現象である「アウトブレイク」を起こしてきたといわれています。また、中でも最も感染力が高いことで知られる、「③ザイールエボラウイルス」は、1976年にエボラ出血熱が初めて発生してから、アフリカを中心としたさまざまな国で原因ウイルスとして確認されてきました。さらに、2014年に西アフリカで猛威を奮ったエボラ出血熱の原因ウイルスともいわれ、この時の死亡率は約40%と報告されています。
エボラウイルスは、オオコウモリ科のコウモリが自然宿主と考えられています。通常、自然宿主に害が及ぶことはありませんが、他の生物の組織などに侵入することでウイルスに感染するといわれています。
1976年にスーダンで発生した最初のエボラ出血熱の原因として患者さんの職場に無数のコウモリが棲みついていたことから、コウモリが宿主として考えられてきました。また西アフリカで2014年に流行したエボラ出血熱は、ギニアに住む2歳の男の子が感染したことが発端とされ、男の子がよく遊ぶ木にコウモリが棲みついていたことからもコウモリが感染源と考えられている要因です。
ただしその後に発生したエボラ出血熱で、コウモリが確実にエボラウイルスをもち、感染源となっているという科学的な根拠は見つからなかったといわれています。
またアフリカでは、これまでにエボラ出血熱を発症、あるいは発症後に死亡したゴリラやサル、チンパンジーなどの動物と接触したことによって感染したという報告があります。これはエボラ出血熱が、感染が確認された動物の血液や体液、また臓器などに接触することで感染すると考えられているためです。
エボラ出血熱は、エボラウイルスに感染した人の体液や血液が、他の人の目や鼻などの粘膜、傷口などに触れることで感染するといわれています。また、患者さんの血液や嘔吐物などがついているシーツや衣類、生活用品などが他の人の傷口などに触れることでも感染する場合があります。
そして、エボラウイルスが感染力を増すのは死の直前とされることから、亡くなった人に直接触れることで感染することもあります。
流行地では、エボラウイルスに感染したコウモリなどの野生動物の死体や生の肉に触れることで「動物から人」への感染が広がると考えられています。ただし、インフルエンザなどと違い、空気感染を起こすことや症状がない人から感染することはないといわれています。
エボラ出血熱にかからないためには、流行している地域には足を踏み入れない、感染者との接触を避ける、また野生動物の肉を生で食べないことなどが挙げられます。もし流行していると思われる国に行く場合には事前に情報を集めておきましょう。
また机やイスなど、感染者と直接接触しない場合でもウイルス源となる体液などに触れることで感染することも考えられます。感染対策を行っている医療関係者も感染している可能性があるといわれているため、流行している地域では特に注意して行動しましょう。
もしも感染が疑われる人と接触した場合などには、消毒アルコールや石鹸などですぐに身体を洗い流してください。
ただ、症状が出ていない人の体液や血液にウイルスは含まれていません。また通常、海外で流行が確認されている場合には日本の空港で検疫が行われるといわれています。そのため、流行地に行った人であっても健康な人が国内にウイルスを持ち込むことはないと考えられています。
エボラ出血熱にかからないためには、流行地となる場所に行かない、もし行く場合も行動には十分気をつけるなどの対策が必須です。正しい知識を得て、もしものときに備えましょう。