記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/13
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
エボラ出血熱は、致死率が高いことで知られる病気のひとつです。主にアフリカで発生しているため、あまりなじみがないかもしれませんが、発症する可能性はゼロとは言い切れません。今回はエボラ出血熱の症状や予防法などをご紹介します。
エボラ出血熱は、エボラウイルスよって引き起こされる感染症です。必ずしも出血症状がみられるわけではないため、一般的にエボラウイルス病と呼ばれるようになってきています。エボラ出血熱は、体液や血液を介して人から人に移り、致死率が約20~90%と高いことが特徴のひとつです。その致死率は5種類のウイルスの型によってそれぞれ異なるといわれています。エボラ出血熱は1976年にコンゴ民主共和国とスーダンで同時に確認されてから、主にアフリカの中央部で発生していました。しかし2014年にギニアで集団発生が起こり、隣の国であるリベリアやイギリス、またアメリカなどへ流行地が拡大したといわれています。
潜伏期間は2~21日で、その後に症状がみられるようになります。また潜伏期間は、注射器を介して感染した場合には短くなり、直接接触した場合の感染では長くなるといわれています。
エボラ出血熱の主な症状には、急な発熱、筋肉痛、頭痛や喉の痛みなどがみられ、その後は下痢や嘔吐、肝機能や腎機能の異常、さらに悪化した場合には出血する場合もあります。また2~3日で容体が急変し、約1週間程度で死に至るケースが多いといわれ、集団発生の場合には致死率が90%になるいう報告もあります。
現時点でワクチンや治療薬がないため、対症療法を行うことが基本です。根本的な治療とはなりませんが、症状に応じて痛みを和らげるなどの対応をしていきます。
たとえば下痢による脱水症状の場合には点滴で水分や栄養を補給する、合併症を避けるために抗生物質の投与を行うことなどが考えられます。対症療法によって身体の状態を保つことで、患者さん自身の免疫機能がウイルスに対処するための時間を確保することができるといわれています。また治療薬については海外でいくつかの薬が検討され、国内でもインフルエンザ治療薬のファビピラビルの使用が国から許可を得られるなど、さまざまな方法が考慮されています。
基本的には流行地に行った人であっても健康な人が日本国内にウイルスを持ち込むことはないと考えられています。これは、症状が出ていない人の体液や血液にウイルスは含まれいないことや、流行が確認されているところから渡航してきた場合には日本の空港で検疫が行われるためです。
エボラ出血熱にかからないためには、流行している地域には足を踏み入れない、感染者との接触を避ける、野生動物の肉を生で食べないことなどが挙げられます。もし流行していると思われる国に行く場合には事前に情報を集めておくことが必要です。
そして、感染者と直接接触しなくてもウイルス源の体液などに触れることで感染する場合があり、感染対策を十分に行っている医療関係者も感染しているといわれています。感染の可能性がある地域などでは特に注意して行動しましょう。もしも感染が疑われる人と接触したときは、消毒アルコールや石鹸などですぐに身体を洗い流してください。
エボラ出血熱は、エボラウイルスに感染した人の体液や血液が、他の人の目や鼻などの粘膜、また傷口などに触れることで感染し、感染者の血液や嘔吐物などがついているシーツや衣類、生活用品などが他の人の傷口などに触れることでも感染することがあります。またエボラウイルスが感染力を増すのは死の直前といわれるため、亡くなった人に直接触ってしまうと感染することもあります。
エボラ出血熱には、現在有効といわれている治療薬はありません。そのため、まずは自分ができる予防をしっかり行うことが大切です。流行地に行く場合でも事前に情報を収集し、自分の身は自分で守ることを心がけましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。