記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/7/13 記事改定日: 2020/4/14
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
乳がんが皮膚転移すると、どのような症状が出るようになるのでしょうか?また、患部のケアはどのように行えばいいのでしょうか?皮膚転移したときの治療法と患部のケアをあわせて解説していきます。
乳がんの皮膚転移は、乳房温存手術、全摘手術のどちらの術式でも起こる可能性があり、治療から2~3年後に発症するケースが約半数を占めるとされています。残りの半数は、ホルモン感受性が陽性のケースであり、ホルモン療法で抑制されていた症状が10~15年後に現れることが関係していると考えられています。
乳がんが皮膚に転移すると、皮膚の表面が赤くなり硬結やしこりなどが現れます。また、皮膚の表面がただれて潰瘍ができ、ジュクジュクとした浸出液や出血が起こるようになります。
なお、患部から分泌された浸出液に嫌気性菌や真菌が感染すると、悪臭が発生ます。とくに、潰瘍化したがん組織ぶ感染したときは独特の悪臭がするようになり、患部が大きい場合や潰瘍が広範囲に及んでいる場合は浸出液も増加するので悪臭が強まります。
ほかには、患部の傷の痛み、熱感、出血などの症状が起こることがあります。
乳がんが皮膚転移したときの治療には、全身治療、放射線治療、外科手術があり、がんの進行状況や本人の体力などを考慮し、治療方法が決定されます。
乳がんの皮膚転移の治療では、痛みの緩和のために抗がん剤やハーセプチンなどを使用して全身治療を行うのが一般的です。
ただし、抗がん剤の使用は白血球が少なくなることで感染しやすい状態を作るため、できない場合もあります。
浸出液を減少させるために、総線量30グレイほどの放射線を照射する治療が行われることがあります。ただし、乳房温存手術の後に放射線を受けた場合は、照射した箇所と同じ場所に再び照射することはできないことが多いです。
患部の周囲にはがんの芽が潜んでいる可能性が高いため、皮膚転移で外科手術を行うことは滅多にないとされています。
皮膚への刺激や圧迫感を与えないように、ゆったりとした柔らかい素材の衣服を選びましょう。
乳房に皮膚転移がある場合は、創部に柔らかいガーゼをあて、片胸帯やソフトブラジャーなどの圧迫感の少ない下着をつけるようにしましょう。また、皮膚の乾燥にも注意する必要があります。
ガーゼを固定するためにテープを使用すると、剥離する時にびらんが形成される可能性があるため、なるべく片胸帯や包帯などで固定するようにしましょう。テープしか使えないという場合は、粘着力の弱いテープを創部周囲の健常な皮膚に貼り固定し、剥がすときにはゆっくりと刺激を与えないように剥がしてください。
皮膚転移の創から出る浸出液の悪臭は特徴的です。悪臭をおさえてQOLを保つには、創部の洗浄が大切になってきます。
創部周囲の皮膚を泡立てた石鹸で洗い、水道水で十分にすすぎます(500cc以上)。すすぐ際には37℃の水道水または、30℃の生理的食塩水(しみる場合)を使用しましょう。
シャワーは直接創部にあてるのではなく、創の上部にあてて流れてくる程度で十分です。
ただし、出血量が多い場合は洗浄を中止して、止血されるまで安静にしてください。
傷部を洗浄した後は、アズノール+ガーゼまたはキュティセリン+ガーゼで創部を覆い、さらに汚染防止策として、防水性パット(シングルパット、尿とりパットなど)で保護しましょう。
ケアを行う回数は、浸出量や汚染状況などを考慮してその都度判断し、出血量が多い場合などは必要に応じて医療機関で診てもらいましょう。
乳がんの皮膚転移は珍しいとされていますが、乳がんの皮膚転移は皮膚に目立ちやすいしこりのような病変ができるため、自覚しやすく、皮膚転移によって乳がんが発見されるケースも少なくありません。
また、乳がんの治療後にも皮膚に再発が生じることもあるため、皮膚転移をできるだけ早く発見することは治療開始を早めることに役立つこともあります。結果として予後を改善できる場合もあるでしょう。
ただし、乳がんの皮膚転移はある程度進行した状態で生じるため、発見が遅れると適切な治療を開始する時期も遅れるため、更なるがんの進行を招くとも考えられます。
乳がんの皮膚転移は、治療から2~3年後に発症する場合が約半数を占めるといわれています。皮膚表面の赤みや硬結、しこり、潰瘍など異変がみられたら、すぐに主治医に報告してください。そしてご紹介したようなケアを続けつつ、病院での専門治療を進めていきましょう。