記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/7/23 記事改定日: 2020/9/24
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
乳がん末期には強い痛みが起こる人もいますが、ほかにどんな症状が出るのでしょう。乳がん末期の症状、治療法(ホルモン療法、化学療法、手術)について、緩和ケアの重要性などを併せてご紹介していきます。
乳がん末期とは、がんが乳房以外の臓器に転移している状態のことです。
乳がんは発症後~末期までに、乳房の痛み・しこり・腋窩リンパ節の腫張などの症状が現れます。自覚症状が出る頃には既にがんが移転していて末期となっているケースも少なくありません。
特に痛みは耐え難いほどの痛みになることがあります。
また、乳がんは骨や肺、肝臓、リンパ節などに転移しやすいため、末期にはがんが転移した臓器の機能不全に伴いさまざまな症状が起こります。例えば、骨に転移した場合、激しい痛みに加えて骨折を起こしやすくなるといった症状がみられます。
がんの治療は、下記の2種類に分けられます。
治療を行う前に病理検査を行い、内分泌(ホルモン)療法、化学療法、分子標的治療などが行われます。
症状に応じて、乳房部分切除術または乳房切除術と腋窩リンパ節郭清を行い、再発予防として放射線治療を併用することもあります。Ⅲ期では、薬物治療後に手術を行うケースもあります。
乳がん末期はがんが全身に転移している状態で、全部を手術で摘出することが難しいため、化学療法(ホルモン剤、抗がん剤など)によるがんの進行を遅らせる治療が行われます。また、痛みやその他の辛い症状を緩和する治療も併せて行われます。
乳がんになった患者やそのご家族は、不安、女性としての精神的な辛さ、社会経済的な問題など、身体的なこと以外にもさまざまな苦痛や問題を抱えることになります。
緩和ケアとは、そうした問題に対処するために行われる、QOL(生活の質)を保つことを目的とした援助のことです。基本的に緩和ケアは、病気の状態や時期を問わず受けることができます。また、がんの痛みの強さに比例してQOLの低下が見られるため、痛みを緩和することが緩和ケアを行う上で重要な要素となります。
がん治療では、身体の痛みや精神的苦痛などにより、睡眠不足、治療を続ける意欲が低下するなどが起こるため、緩和ケアはがん治療と並行して行い、患者さんのQOLを安定を図ります。
早くから緩和ケアを行うことで、不安や抗うつなどの症状が緩和し、QOLを安定させることができるといわれているため、早期の緩和ケア開始が大切です。
緩和ケアは、緩和ケア病棟やホスピス以外にも、緩和ケアチームと呼ばれる多職種の医療スタッフ(身体症状、精神症状の緩和専門の医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなど)のいる病院や、通院しながら症状緩和を行える緩和ケア外来などさまざまな医療機関で行うことができます。また、緩和ケアチームがなくても緩和ケアを受けられる病院もあります。
在宅緩和ケアとは、がんを根本的に治すことが困難と判断された患者さんを対象とした、自宅で行う緩和ケアのことです。近年では、訪問診療や訪問看護ステーションなどを設ける医療機関が増えている傾向にあります。
緩和ケアを希望するときは、まずはかかりつけの医療機関に相談しましょう。かかりつけの医療機関が緩和ケアを行っていればそのまま利用できますし、行っていない場合でも適切な医療機関を紹介してもらうことが可能です。
また、担当のソーシャルワーカーなどに相談するのも良いでしょう。特に、在宅での緩和ケアを希望している場合は、ソーシャルワーカーに介入してもらいながら利用できるサービスを最大限に利用していくことをおすすめします。
自治体によっては保健所や地域包括支援センターなどで緩和ケアの相談をすることもできます。行政機関の介入を希望する場合はお住いの自治体にどの窓口に相談すればよいのか問い合わせてみましょう。
乳がん末期とは、がんが乳房以外の臓器に転移している状態のことで、痛みや、疼痛、強い疲労感、倦怠感、発熱などの症状が起こります。がんの進行を遅らせる治療のほか、QOL向上のための緩和ケア実践も重要です。緩和ケアや在宅緩和ケアなどについて詳しく相談したい方は、かかりつけ医にご相談ください。