記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/31
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
食べ過ぎや飲み過ぎ、体調不良などで起こることのある嘔吐。非常に一般的な現象ですが、「嘔吐恐怖症」という病気はご存知でしょうか?以降ではこの嘔吐恐怖症とはどんな病気なのか、そして克服する方法についてご紹介していきます。
嘔吐恐怖症は、その名のとおり嘔吐(吐くこと)に対して、必要以上の恐怖を感じてしまう疾患です。自分が吐くことだけでなく、他人が吐く様子にも恐怖を感じます。
もちろん、一般的にも嘔吐をしてしまう、見てしまうことに抵抗感や不快感がある人が大多数だと思います。しかしこの病気の人は、その抵抗感、そして恐怖を強く感じすぎるのです。
嘔吐恐怖症の人は、「吐いたらどうしよう」という不安を常に抱えているため、試験などの緊張するイベントや車・バスなどの乗り物、ときには外食までも避けるようになります。飲み会はもちろん、嘔吐するシーンが映る可能性があるため、映像作品なども楽しめないかもしれません。また、病人も嘔吐の可能性があるため、お見舞いや、家族の看病にも影響が出ます。つまり、嘔吐への恐怖で実際の行動、生活にもさまざまな支障をきたす状態です。
嘔吐恐怖症というのは、どのように治療・克服すればいいのでしょうか。
嘔吐恐怖症を克服したいとき、「嘔吐に恐怖を感じてはいけない!」と強く思い込もうとすることは、逆効果です。今ある恐怖感を無理やり打ち消そうとするのではなく、その程度を少しずつ弱めていくようなイメージの方がいいでしょう。
方法としては、考え方からのアプローチ、行動からのアプローチの両方を並行して行っていきます。この二つのアプローチのどちらが欠けても、治療はなかなかうまくいきません。
考え方からのアプローチとしては、「認知行動療法」と呼ばれる、カウンセリング形式での認知修正という方法があります。嘔吐に対して過剰な恐怖感を抱いている状態から、上手くバランスをとって対処できる状態へと整えていく精神療法の一種です。自分ひとりで行うのは難しいので、精神科医やカウンセラーと行っていきましょう。
もうひとつは行動からのアプローチですが、少しずつ段階を追って嘔吐をイメージさせる状況に身を置いて慣れていくという方法があります。これは「暴露療法」と呼ばれるもので、自分が恐怖を感じる状況を整理し、負担が少ないものからあえて体験していくことで、恐怖を克服していきます。
また、あくまでこれらの方法の補助として抗不安薬や抗うつ剤を用いることもあります。治療は一進一退になるので、症状がすぐに良くならなかったとしても焦りは禁物です。
先ほどもお話しましたが、結果には必ず原因があります。そしてそれを見極めること、見極めながら克服までの正しいステップを踏むことが必要となります。
嘔吐恐怖症になる原因は人によってさまざまですが、患者さんには共通する傾向があります。それは、完璧主義だったり、白黒をはっきりとつけたい極端な性格だったりすることです。さらに、繊細で不安に敏感であったり、心配性であったりすることも特徴だといえます。
そのため、突然発症するというよりは、これらの要因によって蓄積されてきたストレスが、何かのきっかけであふれ出てしまい、嘔吐恐怖症として外に表れると考えられています。
一般的にも、嘔吐をしてしまう、見てしまうことに抵抗感や不快感がある人が多いと思いますが、嘔吐恐怖症になるとこの感情が強すぎて日常生活に支障をきたします。ときには、外食や家族の看病すら行えないこともあるでしょう。
嘔吐恐怖症を克服するには、今ある恐怖感を無理やり打ち消そうとするのではなく、その程度を少しずつ弱めていくようなイメージで、考え方と行動からの2つのアプローチで治療していくことが重要です。治療をしたい方は、まずは専門の医療機関にご相談ください。