多汗症の原因にタバコが絡んでるって本当?治療法は?

2018/8/23

谷口 隆志 先生

記事監修医師

川崎たにぐち皮膚科、院長

谷口 隆志 先生

異常な量の汗をかいてしまう「多汗症」の原因は、よくわかっていない点が多いですが、タバコの影響で発症・悪化する可能性はあるのでしょうか?多汗症の治療法と併せて解説していきます。

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多汗症の原因は?

生活に支障がでるほど汗をかいてしまう多汗症(たかんしょう)は、比較的悩んでいる人が多い症状といわれています。この多汗症には大きく分けて、続発性(ぞくはつせい)と原発性(げんぱつせい)があります。

続発性(ぞくはつせい)多汗症は、服用している薬の影響や、他の病気に合併しておきる多汗症です。代表的な病気としては甲状腺などの内分泌疾患、パーキンソン病といった神経性の疾患などがあります。また、呼吸不全や悪性腫瘍が原因となることもあります。女性の場合は更年期障害で、多汗症がともなうことがあります。

原発性(げんぱつせい)多汗症は、特に原因となる病気がないにもかかわらず、汗が大量となり、生活に支障をきたす症状です。家族に多汗症の人がいると多汗症になりやすいという傾向があり、遺伝の関係が疑われています。

また、原発性多汗症の発症原因としては、交感神経が過剰に働く要因(ストレスや不規則な生活)が関わっている可能性も疑われています。自律神経は内臓や血管、汗腺などを調節しており、交感神経と副交感神経があります。この2つの神経は対象的な働きをしてバランスをとりながら、体を調節しています。

このうち交感神経は、脳から指示が出されると、情報を伝達して汗を出す汗腺(かんせん)を活性化させますが、何らかの原因で過剰にはたらくと汗の量が増えてしまう可能性があります。そして自律神経は、精神的・身体的なストレスや不規則な生活で乱れると考えられているため、ストレスが多汗症に関係しているのではないかといわれることがあります。ただし、現状でははっきりとしたことは解明されていません。

タバコは多汗症の原因になる?

タバコに含まれるニコチンは、中枢神経を刺激して交感神経の働きを活発にし、汗腺の働きを活発にして発汗をうながします。また、カフェインも交感神経を刺激すると考えられており、コーヒーや紅茶、エナジードリンクを日常的に飲むことで汗の量を増加させている可能性があります。

多汗症はどうやって治療する?

先述のとおり、多汗症には原因がある続発性多汗症と、原因がはっきりしない原発性多汗症があります。

続発性多汗症では、原因となる病気を治療することが優先されます。一方で、内臓には特に問題がなく、はっきりとした原因がわからない原発性多汗症では、多汗症が起きている部位や重症度によって、いくつかの治療方法があります。

具体的には、外用薬や内服薬を用いる治療のほかに、ボツリヌス菌からつくった薬を注射して交感神経のはたらきを抑えるボツリヌス毒素局所注射療法があります。また、重症例で、いくつかの条件を満たしたときには、内視鏡を用いて交感神経を切断する胸腔鏡下胸部交感神経遮断術(ETS)という方法もあります。

日本皮膚科学会では、2010年に原発性局所多汗症の診療についてのガイドラインを発表し、2015年に改訂しています。このガイドラインは、これまでの研究をもとにして、症状に対して効果的な治療が行えるようにつくられたものです。全ての人が全く同じ治療を受けても効果があるわけではなく、多汗症を生じている部位や状態に応じて、推奨される治療方法は異なります。また、薬物療法や外科的な治療のほかに、精神療法が有効な場合もあります。

おわりに:同じ多汗症でも適した治療法は人によって違う

多汗症には、何らかの病気が原因となって生じている続発性多汗症と、原因がはっきりとしない原発性多汗症があります。この多汗症の種類や患者さんの症状、状態によって、適した治療法は異なります。専門の医療機関を受診し、自分に合った治療方法を相談することが大切です。

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