記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/8/1
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
セックスやオーラルセックスなどの性行為でうつる性病(性感染症)としてよく知られる「梅毒」。この梅毒は、キスや温泉など性行為以外の原因で感染することはあるのでしょうか?梅毒の感染経路について、幅広い情報をお伝えしていきます。
梅毒とは、「梅毒トレポネーマ」という病原体に感染することで発症する性病の一種です。発症すると、感染箇所のしこりや全身の皮膚症状などを引き起こします。
梅毒の主な感染経路には、以下の2つが挙げられます。
梅毒の主な感染原因は、性行為による感染部位との粘膜(または皮膚)の接触です。梅毒トレポネーマは感染者の精液や腟分泌液、血液、病変部などに存在しており、セックスやオーラルセックス、アナルセックスによって、皮膚や粘膜の小さな傷を通じて相手の体内へ侵入し、感染を広げます。
梅毒に感染している妊婦が出産すると、胎盤を通じて胎児にも感染し、流産や死産、奇形や障害などを引き起こす場合があります(先天梅毒)。
梅毒は、キスによってうつることもあります。先述の通り、梅毒トレポネーマは精液や腟分泌液などの体液だけでなく、病変部にも存在しているため、唇などの口周辺に梅毒の皮膚症状が出ている感染者とキスをした場合は、それが原因で感染する可能性があります。
梅毒は基本的には性行為によって感染するため、性行為以外の原因で感染するケースはそこまで多くはありません。先ほどお伝えしたとおり、梅毒はキスで感染する可能性はあり、唾液そのものに梅毒の病原体が含まれていることもありますが、少量の唾液がかかったことによる飛沫感染はまず考えにくいです。
温泉や銭湯、お風呂など、同じお湯に浸かったことが原因で梅毒に感染する可能性はほぼありません。そもそも健康な皮膚は表面が角質で覆われており、さらに外側に皮脂膜が存在するので、皮膚に病原体がついたとしてもそこから体内に侵入することは不可能だからです。
ただ、性器や肛門付近の粘膜には、皮脂膜は存在せず角質も薄いため、そこから病原体が侵入する可能性はあります。具体的には、「感染者が風呂椅子に座った直後、他の人が同じ椅子に座り、病原体と粘膜が接触することで感染する」ルートが想定できますが、これは座る前に椅子を洗い流せばほぼ回避できる感染経路です。
こういった温泉での梅毒感染については、体液の量や粘膜の状態、環境などに左右されるため、可能性をゼロと言い切ることはできません。しかし基本的には、感染の可能性は極めて低いといえます。
梅毒トレポネーマは感染者の血液にも存在するため、不衛生な状態での刺青の刺入や注射の回し打ちなど、血液を介して第三者に感染する可能性は十分考えられます。
梅毒の病変が口周辺に出ている人とのキスや、不衛生な状態での針刺しなど、いわゆる性行為(セックス)以外にも梅毒の感染経路は存在します。梅毒の感染者数は、若い人の中で近年増加傾向にあるので、接触感染には十分注意しましょう。