梅毒は完治するの? 検査で「陽性」反応が出るのは再発のサイン?

2018/7/31

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

感染・発症すると性器のしこりや全身の皮膚症状を引き起こし、最悪の場合命に関わることもある「梅毒」。この梅毒は、きちんと治療を受ければ完治する病気なのでしょうか?また、完治後の抗体検査で「陽性」反応が出ているのは再発のサインなのでしょうか?以降で解説します。

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梅毒は完治するの?完治までにかかる期間は?

何をもって「完治」と定義するかによりますが、「梅毒の症状や再発がなく、感染力もなくなった」状態を「完治」とするのであれば、梅毒はその段階を目指せる性病です。

梅毒は症状の進行度に応じて第1期から第4期にまで分類され、それによって必要な治療期間は下記のように異なります。

第1期梅毒(感染から約3週間)
感染箇所のしこり(初期硬結)や、太ももの付け根のリンパ節の腫れが現れる時期。薬の服用期間は2〜4週間
第2期梅毒(感染から約3ヶ月)
全身のバラ疹や丘疹、性器・肛門周辺の多数のコブ(扁平コンジローマ)などが現れる時期。薬の服用期間は4~8週間
第3期梅毒以降(感染から約3年以降)
ゴム腫(皮下組織に発生する大きめのしこり)や神経障害などの重篤症状が現れる時期。薬の服用期間は8~12週間

上記の治療期間終了後、目視上症状の持続や再発がなく、血清検査上の規定値をクリアした場合は「治癒した」と見なされることになります。ただし、それまでには治療後3ヶ月、半年、1年後という長期的なスパンで採血検査を行い、梅毒の感染を示す数値が下がっているか定期的に確認をとる必要があります。

梅毒は完治しても、検査で「陽性」反応が出る!?

まず、梅毒の血清検査には以下の2種類があります。

STS検査
カルジオリピン抗体(梅毒トレポーマが体内に侵入した際、細胞が破壊されて発生する「カルジオリピン」というリン脂質に対する抗体)の有無を調べる検査方法。この抗体が「陽性」反応の場合は、梅毒に現在感染しているかどうかがわかる。
TP抗原法
血中のTP抗体(梅毒トレポーマに対する抗体)の有無を調べる検査方法。この抗体が「陽性」反応の場合は、梅毒に感染しているor感染していたかどうかがわかる。

多くの医療機関では、この2つの検査方法を組み合わせて梅毒の血清反応を確認していきますが、このうちTP抗体は梅毒が完治した後も体内に残り続けるため、「陽性」反応を示し続けます(完治していれば、STSは陰性となります)。しかし、完治していれば梅毒自体にはもう感染力はないので、問題なく日常生活を送ることができます。

梅毒が完治した後、妊娠・出産、性交渉でうつることはある?

妊娠前に梅毒の既往歴があっても、その際にきちんと抗生物質を服用しており、治療後の検査で完治の判定が出た場合は、その後の妊娠・出産に特に問題はありません。また、すでに感染力のない状態なので性交渉でうつる可能性もありません

ただし、服用期間が不十分であったり、完治しているかの検査を受けていない場合は要注意です。梅毒は症状が出たり消えたりを繰り返しながら、進行していくという特徴があります。「症状が出ていないから治った」と思っていても、実は体内で重症化している恐れがあるので、必ず再度病院で検査を受けてください。

おわりに:梅毒の完治に向けて、根気よく治療と検査を続けよう

梅毒は完治後もTP抗体の結果は「陽性」と出ますが、完治していれば感染力はすでにない状態なので、その後の妊娠や出産も特に問題なく行えます。完治の判定が出るまでには長い期間を要しますが、早期段階で治療を始めれば始めるほど早く治る病気なので、根気よく治療を続けていきましょう。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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