記事監修医師
川崎たにぐち皮膚科、院長
一般的に陥入爪は足の親指にできやすいため、歩くこともままならないことがあり、日常生活にも支障が出る場合があります。そこで今回は、陥入爪の治療法などをご紹介します。
軽度の場合は皮膚科や形成外科を受診するのが好ましいでしょう。
症状が軽い場合は、抗生物質などによる内服薬、軟膏などの外用薬、また局所麻酔を使って爪などの部分切除などを行い、症状が重度である場合には主にフェノール法による治療などを行うのが一般的です。
爪と炎症を起こしている皮膚との間に綿を詰め、肉芽が小さくなるのを待つ「コットンパッキング」という方法があります。入浴後など、爪がやわらかくなっているときに米粒大のコットンを皮膚と爪の間に入れます。この方法により、爪と皮膚との間に隙間ができ、爪の角が上方向に伸びていくため、爪が皮膚に刺さることを防げるといわれています。綿が汚れてしまうため、定期的に交換する必要がありますが、基本的に入浴やシャワーをしても問題ありません。ただし、爪が皮膚の深くまで陥入している場合には、その爪を切ってから行うときもあります。
このほかには、テープを巻き、皮膚を引っ張ることで、くい込んだ爪と炎症を起こした皮膚の間に隙間をつくる方法もあります。テーピングをすることで爪が皮膚にくい込むことを抑えられるため、痛みが軽減するといわれています。この場合、軽い肉芽であれば小さくなる可能性があります。また、爪の切りすぎなどによって一時的に痛みが出ている場合などでは、テーピングによる効果が期待できます。
過剰に肉芽がある場合には局所麻酔を使い、フェノールや硝酸銀、炭酸ガスレーザーなどで焼いて切除することもあります。
陥入爪の治療では、歯科矯正のように少しずつ爪に負荷をかけて形を整える方法がとられることもあります。爪の先端に穴をあけてワイヤーを通す「マチワイヤー法」やネイリストが行う見た目を整える技術を応用した「クリップ法」、また爪の横にある溝にワイヤーを引っかけて爪の中央を引っ張る「VHO法」などさまざまなものがあります。
それらの治療法の中で、特に主流となっているのがマチワイヤー法です。
マチワイヤー法は、指の先から伸びた爪の2ヶ所に小さな穴をあけて弾力性の高いワイヤーを通し、ワイヤーがまっすぐに戻ろうとする力を利用して少しずつ爪を矯正していく方法です。陥入爪や巻き爪など、比較的どのような爪でも痛みを生じることなく、治療することができるといわれています。また日常生活の制限もほとんどない上に、外れにくいことも特徴のひとつです。
ただし、爪が伸びる約1~2ヶ月ごとにワイヤーの交換が必要で、個人差はありますが完治するまでに約半年~1年程度かかるといわれています。また爪が薄く弱い場合には、穴をあけた際に爪が割れてしまう場合があります。治療を途中で止めた場合には再発する恐れもありますが、再びワイヤーを通すことで痛みが軽減され、治りも早くなるといわれています。
前項のようなワイヤー治療によって効果がみられない場合には、以下のような手術を行うこともあります。どちらも、爪をつくる組織である「爪母」のはたらきを止めることによって、新たに爪を生えさせないようにする方法です。
爪の両端を根本から取り除き、爪をつくっている爪母そのものを除去して、爪を生えてこなくする治療法です。爪母と、爪の下にある爪床と呼ばれる皮膚を切り取り、縫合します。場合によっては爪母細胞が再生することで、小爪が生えることもあります。爪を取り除いたときに痛みが軽減されることや再発リスクが低いことなどが特徴です。
ただし、手術時やその後に痛みや出血がある可能性があります。また爪の幅を狭くするため、治った後の見た目があまり良くない場合があります。
変形している爪を取り、爪母にフェノールを塗布することで爪を生えてこなくする方法です。フェノール法は世界的に推奨され、日本でも広く行われている治療法のひとつです。鬼塚法との違いは、縫合を行わない点にあります。またフェノールは痛みを感じる神経も壊すため、麻酔が切れても痛みをあまり感じることなく、比較的短時間で終えられることがメリットといわれています。また治療後は歩いて帰れることも特徴のひとつです。
ただし、広範囲の爪母にフェノールを塗布すると、爪の幅が狭くなります。また、爪の両側に行った場合、爪が周辺の組織から離れるため、再発する可能性があります。
陥入爪の治療は、症状の程度に応じて皮膚科や形成外科などで行います。治療法も爪を残しながら矯正する場合や、手術で爪を取り除く場合などさまざまです。医師に相談の下、自分に合った治療法を選択しましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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