記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/8/23 記事改定日: 2018/12/13
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
指定難病の一種「巨細胞性動脈炎」とはどのような病気なのでしょうか?症状が進行した場合の、脳梗塞や失明のリスクなども含め、全般的な情報を解説していきます。
巨細胞性動脈炎とは、大動脈やその主要な枝に肉芽腫を形成する動脈炎のことで、頭の外側にある側頭動脈が障害されることもあるため、別名側頭動脈炎ともいわれます。国内では10万人に1.4人ほどの割合で発症し、比較的50歳以上の女性に多く見られます。
遺伝素因は未だはっきりと解明されていませんが、発症すると失明する恐れもある疾患のため注意が必要です。また、約50%の確率でリウマチ性多発筋痛症(首、肩、太もも、臀部の筋肉が痛む症状)を併発するとされています。2015年から、医療給付対象疾患に指定されました。
巨細胞性動脈炎は十分な治療を受けずに病態が進行すると、失明、脳梗塞、心筋梗塞、解離性動脈瘤などが起こる原因となります。
主な症状として以下のものが挙げられるので、気になる症状があるときは早めに病院を受診しましょう。
主な症状として、食欲低下、体重減少、発熱があります。
発熱は半数以上の人に見られる症状ですが、微熱である場合が多く、39℃以上出る割合は約15%、全身症状に加えて採血上の炎症反応上昇が見られる場合は約10%ほどとされています。
全体の3分の2程度の患者に、夜間に悪化しやすい拍動性・片側性の側頭部痛が起こり、拡張した側頭動脈が側頭部に触れたり、前頭部や頭全体に痛みを感じるなどの症状が起こります。
寛解(症状が安定する状態)と増悪(症状が悪化する状態)を繰り返すことに伴い、痛みの程度が強くなることが特徴です。
一時的に目の前が暗くなる症状である一過性黒内障が起こることもあります。巨細胞性動脈炎患者の10~15%は視力障害を伴い、失明する恐れもあるため、注意が必要です。
巨細胞性動脈炎患者の30~50%ほどは、リウマチ性多発筋痛症を合併するとされています。リウマチ性多発筋痛症を発症すると、肩や臀部の周囲のこわばりにより、起床や着衣などの動作が困難になり、特に朝のこわばりは1時間以上持続するといわれています。
一般的な痛みの発現部位は、肩周囲が70~95%、臀部や首周囲は50~70%とされており、痛みにより関節の可動域が狭まることもあります。ただし、筋痛として自覚している人も少なくありません。
巨細胞性動脈炎では10~15%ほどの割合で、大血管の動脈病変が見られるといわれており、それに伴い上肢の運動時の痛み、大動脈瘤、大動脈解離などが起こるとされています。
また、内頚動脈や椎骨動脈の病変がある場合は、一過性の脳虚血、めまい、難聴、脳梗塞などが起こることがあります。
一般的な治療ではまず、プレドニゾロンというステロイド製剤の投与を一日40~60mgから始めます。その後、状態を確認しながら2週間程度ごとに投与を行い、最終的には1年ほどかけて薬剤の減量・中止をすることを目的とします。
また、視力障害の併発の予防を目的とした抗血小板剤(低用量アスピリン)の投与や、既に視力障害がある場合は、シクロホスファミドという免疫抑制剤の投与が行われることがあります。
基本的に、ステロイド製剤では徐々に使用量を減らしていき、最終的には中止することが多いですが、減量していく段階で再発する恐れがあるため、慎重に量を調整しながら治療を進めていきます。
巨細胞性動脈炎では、ステロイド剤や免疫抑制剤などによる薬物療法が行われます。治療の目的は、病気を完全に治すことではなく、炎症を抑え、症状の進行を食い止めることです。
巨細胞性動脈炎は治療を続けて症状がよくなったとしても、再燃を繰り返すことが多い病気です。適切な治療を継続するのはもちろんのこと、発熱や倦怠感、頭痛などの症状が見られた場合は速やかに病院を受診するようにしましょう。特に、目の見えにくさや視野障害などを自覚した場合は、失明の危険がありますので要注意です。
また、巨細胞性動脈炎は自己免疫疾患のため、ストレスや睡眠不足、疲れなどによって症状の悪化・再燃が生じることがあります。日頃から無理のない生活を心がけ、バランスの良い食事や規則正しい生活習慣を身に着けるようにしましょう。
巨細胞性動脈炎は、十分な治療を受けずに病態が進行すると、失明、脳梗塞、心筋梗塞、解離性動脈瘤などが起こる恐れがあります。そうなる前に、医療機関で適切な治療を受けることが大切です。