記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/11/26
記事監修医師
前田 裕斗 先生
たった一度でもかなりの精神的ダメージとなる流産を、何度も繰り返してしまう「不育症」。よく聞く「不妊症」とは違い、そこまで認知度の高くない疾患の一種ですが、具体的にどんな病気なのでしょうか。原因や治療法を中心に解説していきます。
「不育症」(習慣流産)とは、妊娠してもお腹の赤ちゃんが育たずに流産や死産を繰り返してしまう状態をいいます。
初めての妊娠で流産する確率は10~15%で、その約半数は偶発的な胎児の染色体異常、残りの約半数には両親に不育症のリスク因子がある可能性があります。ただし、流産を繰り返した女性は大きな不安やプレッシャー、ストレスにさらされることが多く、それがホルモンや自律神経に変調をきたして胎児の成長を止めてしまう場合もあります。
「ストレス」以外のリスク因子としては、夫婦いずれかの「染色体異常」、「子宮形態異常」、ホルモンなどの「内分泌異常」、胎盤に血栓ができやすくなる「凝固因子異常」や「抗リン脂質抗体」、男性由来の部分に過剰反応する「拒絶免疫異常」などが考えられ、これらがいくつか重なっている場合もあります。
なお、不育症と診断されても出産できる可能性は高く、8割はその後に出産しています。
流産を2~3回以上繰り返したとしたら、夫婦のどちらかにリスク因子がある可能性があります。次の妊娠に向けた予防が不育症の治療で、そのためには専門の医療機関で要因を見つけ出す検査が必要となります(医療機関については、全国の不育症相談窓口で相談することができます)。
検査としてはまず、「血液検査」により夫婦それぞれの染色体検査、女性の糖尿病、甲状腺機能などのホルモン検査、血の固まる働きを調べる血液凝固因子検査や抗リン酸脂質抗体測定などを行います。また、子宮の形に異常がないかを調べる「子宮形態検査」として、子宮卵管造影検査、経膣超音波検査、子宮鏡検査、必要に応じてMRI検査(磁気共鳴画像診断)などを行い、次回の妊娠に役立てます。
ただし、100%流産に至る因子というものはないといわれています。
検査でみつかったリスク因子の治療となりますが、リスク因子が不明な場合も50%以上あります。染色体異常がみつかった場合はその種類によって治療方針が変わるので、夫婦でカウンセリングを受け医師とよく相談するようにしましょう。
まず、子宮形態異常がある場合は、ほとんどの場合必ずしも治療の必要はありませんが、手術を行った方が良い場合もあります。
内分泌異常がみつかったら薬物療法で改善し、血液凝固因子がある場合は、アスピリン内服やヘパリン注射で抗血栓療法を行います。
なお、原因不明の不育症は偶発的流産の場合もあり、積極的な治療を行わずに経過観察で赤ちゃんを授かる可能性があります。
妊娠してもお腹で赤ちゃんが育たず流産や死産を繰り返してしまう不育症は、女性に大きなストレスとプレッシャーを与えて新たに不育症の原因となってしまう場合もあります。専門機関でリスク因子を検査し、今後の妊娠に備えて夫婦でそれを解消し、ストレスを溜め過ぎないようにしましょう。
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