記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
近年、子供の肥満が深刻化し、メタボリックシンドロームとの関連が問題視されています。いわゆる「肥満児」は増えていますが、子供が健康的な体重になるためにできることはたくさんあります。特に、子供では肥満かどうかを見分けるのはむずかしく、健診などで肥満を指摘されることがあります。
大人と同じように子供も、消費エネルギーよりも多くのエネルギーを食べ物や飲み物から摂取すると肥満になります。しかし大人とちがうのは、子供はまだ成長段階だということです。成長のためにはより多くのエネルギーが必要です。エネルギーは、脂肪や砂糖の多い食品からではなく、栄養価の高い健康的な食品から得ることが不可欠です。
肥満の子供の多くは、ダイエットする必要はありません。体重を減らす必要さえないかもしれません。その代わり身長が伸びても体重を同じに保つことで着実に適正体重に近づくでしょう。適正体重は、ボディマス指数(BMI)から計算することができます。BMIで「肥満」となったときは、適正体重になるために食生活を変えて定期的に運動を行うことが重要です。
子供の食事に関しては、カロリーを考える必要はありません。その代わりに「健康的でバランスの取れた食事」が重要です。健康的でバランスの取れた食事は、生涯にわたって健康的な食事をする助けとなります。
そのいちばんの方法は、親が子供の手本になることです。
子供が肥満の場合は、いつもどのように食事をしているか、以下のことを振り返ってみてください。
・家族一緒に食べていますか?
・スナックなどを外で食べていませんか?
・テレビを観ながら食事していませんか?
・食事は、家で作っていますか? テイクアウトに頼っていませんか?
食事は、家族一緒に決まった時間にとりましょう。そうすれば、子供がお菓子を食べたいだけ食べることなく、楽しく食事することができます。
家族みんなで同じ時間に食べられなくても、家族全員に同じ食事を作ってください。
テレビに夢中になると食べ過ぎてしまうので、食事中はテレビは消すことが重要です。
・米、パスタ、ジャガイモなどの炭水化物を食事の基本とする
・1日に5種類の果物や野菜を食べる
・肉、魚、卵、豆などの脂肪分の少ないタンパク質を食べる
・飽和脂肪酸を減らす(飽和脂肪酸は、加工肉、パイ、ケーキ、ビスケットなどに含まれます)
・ビスケット、ケーキ、炭酸飲料などの甘い食べ物を減らす
・加糖のフルーツジュースや炭酸飲料などの甘い飲み物は水で薄める
・フルーツジュースは無糖でも水で薄める
・調理に使う塩は少なめにする
調理済み食品や加工肉は塩分が多いことが多いので、購入するときには食品表示をよく確認してください。
運動は、子供が摂取したカロリーを消費し、強くて健康な骨と筋肉を発達させるためにも重要です。運動することは、子供の生活の一部で楽しいものでなくてはなりません。
自分で歩くことができる子供は、屋内でも屋外でもよいので積極的に歩かせましょう。少なくとも毎日3時間は運動する必要があります。
5歳未満の子どもでは、寝ている時間以外は運動しない時間を長時間作るのを避けるべきです。数時間テレビの前に座りっぱなしや、ずっとベビーカーに座らせるのは、健康と発達に悪影響を及ぼします。
子供のおやつに最適なのは、生のフルーツや牛乳です。カルシウムは子供にとって特に重要です。毎日カルシウムが豊富な食べ物を3種類は食べるようにしましょう。たとえば、乳製品はカルシウムが豊富です。コップ1杯の牛乳、チーズまたはヨーグルトで3種類になります。
2歳以上なら低脂肪乳を与えることができます。脱脂粉乳は5歳までは適していません。
ビスケット、チョコレート、ケーキなどの甘いおやつは、なにか特別なときの「ご褒美」にしましょう。
子供に好き嫌いがある場合、健康的な食生活をすることは難しいように思えるかもしれません。あせらず、1歩ずつ食習慣を変えていきましょう。
それには、子供以外の家族が普段どんな食生活をしているか振り返ることが必要です。子供は、それを真似しているかもしれません。あなたが野菜を食べなければ、子供は食べなくてもいいものだと思ってしまいます。
子供に食べさせたい健康でバランスの取れた食事を考えて、それを家族にもあてはめてください。新しい果物や野菜などは、積極的に子供に試させてください。
好き嫌いなくなんでも食べられるようにするには、以下の方法を試してください。
・最初は一口分
よくわからない食べ物をいっきに食べさせようとしても、大人でも受け入れられません。
・食べられたら褒める
食べられなくても叱らないでください。食事は楽しくなければなりません。
・辛抱強く、いろいろな機会に与える
新しい食べ物は受け入れられるようになるまで最大15回は試す必要があることがわかっています。1回の量はごく少量(一口サイズ)で大丈夫です。
子供を肥満から救うために、親ができることはたくさんあります。就学までに肥満を改善して、楽しい小学校生活と将来の高血圧、心臓病、脳卒中などのさまざまな病気の危険性を排除してあげましょう!