肝臓の機能を回復させるためにできることは?禁酒しなきゃだめ?

2018/10/25

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

人体のなかで最も大きな臓器である肝臓は、よく「沈黙の臓器」といわれます。これは、何らかの理由で肝臓がダメージを受けても、痛みなどの症状が自覚できないケースが多いために名付けられた別名です。
では、実際に肝臓がダメージを受けると、どんな症状がみられるのでしょうか? 
以下、アルコールとの関連性や、肝臓機能の回復方法について、詳しく説明していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

肝臓の調子が悪いと、どんな症状が出てくる?

肝臓は、アルコールや有害物質を解毒・排泄、異物を処理し胆汁を作って腸の消化や吸収を助ける働きをしています。これらは人間の体を作り、エネルギー源を供給する上できわめて大切な役割であり、いわば体の各臓器を正常に働かせるための、縁の下の力持ちのような存在だといえるでしょう。

この肝臓がダメージを受けると、皮膚や目が黄色くなる黄疸、尿の色が濃くなる、だるい、食欲不振、吐き気などの症状がみられますが、これはあくまで急性の肝炎などの場合で、慢性の場合には基本的に症状はありません。実際に、かなり進行した肝臓病(肝硬変)ですら、目立った症状がみられないケースがほとんどであり、これこそが「沈黙の臓器」と呼ばれる所以です。

しかし、自覚症状がないからと放置していると、取り返しのつかない状況に陥ることがあります。肝臓には急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、脂肪肝、肝細胞がんなど、さまざまな病気がありますが、病態によって原因や治療法が異なります。もし、健康診断などの血液検査で異常値がみられるようであれば、すみやかに受診して、その原因を調べるようにしてください。

肝臓の機能回復につながる食べ物ってどんなもの?

肝臓機能の回復や病気予防のための、もっとも基本的な改善法の一つとして、食事療法が挙げられます。肝臓の機能回復につながる食品として、以下のようなものがありますので、ぜひ、積極的に摂るようにしてみましょう。ただし、すでに肝臓病を発症している場合には向かない食品もあるので、治療中の人は医師に相談するようにしてください。

カキやタコ、イカなどの魚介類
肝臓の回復を促す「タウリン」が、豊富に含まれています。胆汁の生産を助けてくれます。
ささみなどの肉、乳製品、大豆、しじみやホタテなどの魚介類
肝臓を修復する、良質なアミノ酸(アラニン、グルタミン)とタンパク質を摂ることができます。
青魚、くるみ、えごま油
肝臓の負担となるコレステロールを排出させる「オメガ3脂肪酸」が豊富に含まれています。「オメガ3脂肪酸」は常に不足しがちな栄養成分であり、限られた食材にしか含まれないことから、意識して摂ることが大切です。

また、脂肪肝などの場合は、飲み過ぎや食べ過ぎ自体が大きな原因となります。この場合は、ご飯やパンなどの炭水化物や甘いものを食べ過ぎないこと、また油料理を控えるなどの、適切なカロリー摂取が改善法となるでしょう。ちなみに、肝機能が正常化するまでは、かならずアルコールを控えるようにしてください。

肝臓が悪くなったら、もうお酒は飲んじゃダメ?

最近の研究によると、日本人はアルコールに弱い体質の人が多いことがわかっています。実際に、アルコールによって肝臓がダメージを受けて、アルコール性の肝臓障害を起こす人が少なくありません。ただし、アルコールに強ければ問題ないというわけではなく、アルコール性の肝臓障害を引き起こす原因は、あくまで飲酒量と飲酒期間にあります。したがって、いくらアルコールに強い体質だとしても、たくさんの量を長い期間飲み続ければ、肝臓障害のリスクは当然高くなるわけです。

肝機能の数値であるGOT・GPTが60、γ-GTPが100を超えている場合など、明らかに異常が認められる場合は、すぐに禁酒する必要があります。特に、アルコール性肝炎はいくら禁酒で数値が下がっても、飲酒を再開することで症状が重症化する場合もあるので、くれぐれも注意が必要です。

ただし、飲酒によって数値が下がる脂肪肝などの場合は、適量であれば飲酒しても構いません。週に2日以上の休肝日を作る、しっかりと自分の適量を守る、飲むペースをゆっくりにする、あるいはおつまみとして肝臓のアルコール分解を助ける大豆食品や、野菜、果物、ナッツ類などを食べるなど、しっかりと肝臓をいたわりながら、お酒を楽しむとよいでしょう。

肝臓の機能回復のために、食事以外でできることは?

これまで紹介した食事療法やアルコールとの上手なつき合い方のほかに、肝臓の機能回復のために忘れてはいけないのが、運動や睡眠などの、日常生活の見直しです。黄疸や腹水、むくみなどがみられる進行した肝硬変の場合などを除き、30分程度のウォーキングなど、適度な運動によって筋肉を維持することは、肝臓機能の回復に大変役立ちます。

あくまで、心地の良い疲れを感じる程度の、適度な運動がポイントです。もし、体がだるいと感じたり、翌朝の起床時に運動による疲労が残っているようであれば、それは適切な運動量とはいえないでしょう。また、食後は胃腸と肝臓が活発に働くため、できれば食後1〜2時間はゆったりと過ごすことを心がけてください。

そして、規則正しい睡眠も大切です。もし、昼夜が逆転するようなことがあれば、肝性脳症(肝臓の機能低下による意識障害)の可能性もありますので、医師に相談するようにしましょう。場合によっては昼寝も効果的ですが、くれぐれも長く寝すぎないよう心がけるようにしてください。

肝臓が正常に機能していると、すっきりと目覚めることができます。脳が必要とするグルコースはブドウ糖からできていますが、 実は、これを作るのも脳へ運ぶのも、どちらも肝臓の役割なのです。肝臓の役割がいかに大切なものか、このことからもおわかりいただけることでしょう。

おわりに:症状が進行する前に、物言わぬ肝臓の声をしっかり聞こう!

肝臓は、私たちの体を機能させるために欠かせない役割を担っています。したがって、症状が進行して手遅れになる前に、定期的な血液検査などで物言わぬ肝臓の声を聞くことが、何よりも大切です。また、食生活や生活習慣の見直しとともに、自分にあったアルコールとの付き合い方を見つけて、しっかりと肝臓をいたわるようにしてくださいね。

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