体の中で肝臓はどんな働きをしている?肝機能が低下するとどうなる?

2018/10/10

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

肝臓は、体の中で非常に重要な働きをしている臓器です。胃や腸などの消化管に直接つながってはいませんが、体内の消化・吸収の機構や、排泄にも関わっています。
肝臓の機能が低下すると、体にどのような影響があるのでしょうか?この記事では、肝臓の働きとそれにまつわる肝機能障害について、解説します。

肝臓はどんな働きをしているの?

肝臓の働きは、主に「代謝」「解毒」「胆汁の生成・分泌」の3つです。それぞれの働きについて、詳しく見ていきましょう。

代謝
  • 三大栄養素「糖質」「脂質」「タンパク質」の取り込み
  • 栄養素を体内で利用しやすい形にして貯蔵
  • 生命活動のための体内の物質の流れを制御する
解毒
  • 体内に取り込まれたアルコールや薬剤などを分解する
  • 代謝で生じた体に有害な物質を毒性の低い物質に変えて尿中に排出する
胆汁の生成・分泌
  • 脂肪の乳化とタンパク質を分解しやすくする胆汁を生成・分泌する

代謝とは、食物など体内に取り込んだ栄養素からエネルギーや体をつくるのに必要な物質を取り出し、器官や臓器で使いやすい形に分解・合成する働きのことです。人間は食物からの栄養素をそのまま利用することはできないため、取り込んだ栄養素をいったん利用しやすい形に変える必要があるのです。

肝臓で分解された物質は血中をめぐり、全身の器官や臓器に運ばれます。必要以上のエネルギーを摂取した場合は、肝臓に蓄えられます。何らかの疾患や症状で肝機能が低下すると、これらの代謝が十分に行われなくなるため、食事から十分なエネルギーや栄養素が得られなくなる代謝異常が起こります。

アルコールや薬が体内に取り込まれた場合も、肝臓で分解されます。このとき、体に有害な物質を解毒するのも肝臓の役割です。さらに、新しく取り込まれた物質だけでなく、代謝の過程で生じた有害な物質も解毒し、尿や胆汁中に排出する働きがあります。特に、食物中のタンパク質が細菌に分解されることによって生じるアンモニアは人体に有害ですが、これを尿素に変える役割を担っています。

必要以上にアルコールや薬物を摂取して解毒作用が追いつかないと、肝臓に大きな負担をかけてしまいます。また、肝機能が傷害されて解毒作用が低下すると、いつまでも体の中に有害な物質が残ります。代表的なものはアンモニアで、分解されずに血中にそのまま増え続けると、脳が障害されることがあります。

胆汁は、脂肪の乳化のほか、タンパク質を分解しやすくする働きがあります。この働きによって、腸から脂肪を吸収しやすくなります。また、コレステロールを体外に排出したり、古くなった赤血球を分解して生じたピリルビンという色素の排出も担っています。この機能が障害されると、血液中にピリルビンが増え、白目や皮膚が黄色くなる黄疸という症状が現れることがあります。

肝臓と腎臓の違いは?

肝臓とは、体の中で最大の臓器であり、アルコールなど人体に有害な物質の分解や解毒を行ったり、栄養素を体に吸収しやすい形に分解・合成したり、消化液の一つである胆汁を生成・分泌して脂肪の乳化やコレステロールの排出に大きく関わっています。また、肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、何らかの異常が生じてもそれが症状として現れにくいという特徴があります。

腎臓は、左右1対の臓器で、血液中の老廃物を水と共に尿として排出させる働きをする器官です。大きさは片手の握りこぶし程度で、腎臓でこしとられた老廃物は尿として膀胱に溜められ、やがて体外へ排出されます。

腎臓の機能が何らかの原因で低下すると、腎臓でこしとられるはずだった老廃物が血中に残ったまま体内に蓄積していってしまいます。尿毒症や心不全を引き起こす可能性があり、末期の腎不全となると体内で血液中の老廃物を排出できなくなるため、人工透析を週に3回、1回につき4時間以上という長い時間受ける必要が生じたり、食事制限をしなくてはならなくなったりします。

肝臓の機能が低下するとどうなる?

肝臓の機能が低下すると、疲れや足のむくみといった症状がまず現れます。これらの症状は、本来であれば肝臓で解毒されるはずだった有害物質がそのまま体内に蓄積されていたり、エネルギーとして代謝されなかった栄養が中性脂肪となって肝臓に溜まっていったりするために起こります。

体にとっては不要なものが次々溜まっていっている状態であり、さらに蓄積された物質からエネルギーを取り出すこともできないため、体を動かすことが億劫になってしまいます。なかなか抜けない疲れは、肝臓からのシグナルかもしれません。

また、疲れやすくなったというほか、お酒を美味しく感じなくなった、食欲が低下した、などの症状が現れる場合も、肝臓が疲れているサインです。肝臓の機能が低下すると、脂肪肝や肝障害を始めとしたさまざまな疾患を引き起こす可能性があります。

肝臓の機能低下でどんな病気になる可能性がある?

肝臓の機能低下で引き起こされる症状には、以下のようなものがあります。

  • 急性肝障害
  • 慢性肝障害
  • 肝腫瘍

肝障害には、急性と慢性の2種類があります。急性肝障害は急性肝炎などの症状が一時的なものを指し、慢性肝障害は慢性肝炎や肝硬変など、症状が長く続くものを指します。始めは急性肝障害でも、慢性化することもあります。人間ドックなどの健康診断で指摘される肝障害の多くは急性肝障害で、生活習慣病に起因するアルコール性肝障害や、脂肪肝などです。

慢性肝障害は、B型・C型などのウイルス性肝炎が8割を占めます。肝炎ウイルス検査を行い、陽性と診断されれば内科で相談し、治療する必要があります。

肝腫瘍は良性腫瘍と悪性腫瘍の2種類があり、良性は通常、症状を引き起こしませんが、まれに不快感や腹腔内出血を引き起こすことがあります。悪性腫瘍とは癌のことで、肝臓で発生した原発性と他の部位から転移してきた転移性の2種類に分類されます。肝臓はその性質上、他の器官や組織から血液が流れ込むため、癌が転移しやすい臓器です。

人間ドックでよく指摘される、脂肪肝ってなに?

脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪が過剰に沈着してしまった状態です。ほとんどの人で自覚症状が起こらないため、人間ドックで初めて発見されることが多く、人間ドックで指摘される肝機能異常で最も多い疾患となっています。また、定期検診でも5人に1人は脂肪肝を指摘されているともいわれています。

患者全体で見ると、男性の割合の方が多いです。これは、女性ホルモンには抗脂肪化作用があるため、閉経前の女性は脂肪肝になりにくいためです。逆に、閉経後の女性は女性ホルモンの分泌量が減ることで男性と同様に脂肪がつきやすくなるため、閉経後に脂肪肝になる女性は少なくありません。

脂肪肝は栄養不足でも起こりますが、日本で起こる脂肪肝はたいていが栄養過多によるものです。特に、アルコールをよく飲む人や、洋風料理や揚げ物を好む人、野菜嫌いの人、運動不足で太っている人などは脂肪肝になりやすいです。

血液検査では、GOT、GPT、ALP、γ-GTP、総コレステロール、中性脂肪などの値に異常が現れます。最終的な診断はエコー検査で行うのが有効です。脂肪肝そのものが生命に影響することはありませんが、脂肪肝になっている人はそうでない人と比べて心臓病や糖尿病を発症するリスクが高いため、症状がないからといって放置せず、生活習慣の見直しをすることが大切です。

また、お酒を飲まない人がお酒を飲む人と同じような脂肪肝を発症した場合、注意が必要です。ほとんどの脂肪肝はそれ以上症状が進むことはありませんが、非アルコール性脂肪肝炎を発症した場合、肝硬変や肝癌へ進行することが多いためです。

アルコールが原因の肝臓病にはどんなものがあるの?

体内に入ったアルコールの90%は、肝臓で解毒され、アルコール脱水素酵素(ADH)やアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)などの働きで酢酸や炭酸ガス、水などの無害な物質に分解されます。個人差はありますが、日本酒1合の分解には約3時間半程度かかるといわれています。

このため、アルコールを飲みすぎると肝臓に大きな負担がかかることがわかります。アルコールが原因の肝臓病には、アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変などがあります。アルコール性脂肪肝の段階であれば、アルコールの摂取量を控えることで肝機能は元の状態に戻ることができますが、アルコール性肝炎になると、肝臓の細胞が破壊されてしまいます。

アルコール性肝炎の状態で飲酒を続け、肝臓の細胞の破壊が続いていくと、アルコール性肝硬変を引き起こします。肝硬変にまで症状が進行すると、肝機能低下に伴うさまざまな症状が現れます。この段階になると、節酒ではなく禁酒が必要になります。

体調不良が気になったら、念のため検査を受けよう

肝臓は、「沈黙の臓器」とも呼ばれます。これは、肝臓に何らかの異常があっても自覚症状が起こりにくく、かなり病態が進行しないと症状が現れないことによります。逆に、症状が出てきた時点では既に遅いことも考えられます。普段から検診の結果に気をつけ、健康な肝臓を維持しましょう。

さらに、肝機能が低下したときに現れる足のむくみや疲れは、単なる疲労や風邪によく似ているため、肝臓の異変を見逃してしまいがちです。体調不良が長く続き、酒量が多かったり健康診断の数値が悪かったりというような心当たりがあるようであれば、医療機関を受診して検査をしてもらいましょう。

また、肝炎ウイルスにかかっている場合は、早期に発見して適切な治療を行うことが重要です。早期に発見できればそれだけ、重篤な疾患へと進行するのを防ぐことができます。その意味でも、医療機関で早めに検査をしてもらうことは大切です。

おわりに:肝機能障害にならないために、こまめに検査を受けよう

肝臓は、代謝・排出・消化の補助と体内で非常に重要な役割を担っているのにも関わらず、障害が起こったときの自覚症状が起こりにくい「沈黙の臓器」です。肝機能障害を予防するためには、日頃から生活習慣に気をつけることはもちろん、体調不良を放置せずにこまめに検査を受けることも大切です。

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