記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/11/20
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
膵炎とは、膵臓で炎症が起こっている状態のことです。膵炎を発症すると、どのくらいの痛みがあるのでしょうか?また、痛み以外にはどのような症状があるのでしょうか?そして、膵炎が疑われる痛みを感じたら、どのように対処したらいいのでしょうか?
膵炎とは、膵臓が作り出した消化酵素が何らかの理由で膵臓自身を消化してしまう疾患です。普段膵臓は、膵臓の作り出すさまざまな消化酵素の中でも、タンパク質の消化酵素を不活性化することで、膵臓自身が消化されないようにしています。しかし、何らかの原因でタンパク質分解酵素が膵臓内で活性化してしまうと、膵臓そのものが消化され、細胞が破壊されて炎症が起こるのです。
膵臓の細胞が破壊されると、浮腫(むくみ)、出血、壊死などの急性の炎症が起こります。これらは一時的な症状でやがて回復に向かうものもあれば、そのまま重篤化して生命を脅かす状態に進行することもあります。また、急性膵炎を何度も繰り返すことで、細胞の破壊が常態化し、膵臓の機能低下を引き起こす慢性膵炎へと進行することがあります。
膵炎は特に男性に多い病気で、中でも中高年層に最も多く見られます。症状の軽症・重症になるかは個人差が大きいですが、いずれの場合も重症にならないうちに早期発見・早期治療することが重要です。
膵炎が発症する原因の多くは、アルコールと胆石です。飲酒を続けていると、アルコールによって膵液の分泌が促されます。多量に分泌された膵液によって膵管の内圧が高まり、膵炎が起こると考えられています。また、アルコールそのものが体内で分解される時に発生する有害物質によって、膵臓の細胞を直接傷害する可能性も示唆されています。
胆石は、肝臓で作られる胆汁の通り道にできる結石のことです。この胆石が膵液の出口をふさいでしまうことで、膵液が膵臓内にとどまり、膵臓の細胞を破壊してしまうということも考えられます。また、体調の悪いときに大量のアルコールや高脂質食を摂取したことで発症する例も多く見られます。
その他、手術後に発症することや、薬剤の副作用、高脂血症などが原因となることもありますが、はっきりとした原因がわからない場合も少なくありません。
膵炎を発症すると、上腹部に痛みが現れます。みぞおちからへその上あたりに起こり、持続性で広範囲であることが多いです。背中の方まで痛みが広がることや、範囲が広くて痛む場所が特定できないこともあります。痛みの程度は軽い痛みから、じっとしていられないほどの激痛までさまざまです。
上腹部痛の次に多いのが、吐き気と嘔吐です。また、腹部膨満感や食欲不振などの症状が一緒に現れることもあります。これらの症状は徐々に出てくることもあれば、食事や飲酒の数時間後に突然激しい上腹部痛が起こることもあり、発症の仕方は個人差が大きいです。
急性膵炎とは違い、膵臓がんの場合には、激痛が起こることはあまりありません。みぞおちや背中のあたりに重苦しさを感じたり、鈍痛が出たりするのが一般的です。また、膵臓がんのうち膵頭部のがんの場合は黄疸が出やすくなることがあります。
痛みが徐々に落ち着いてくる場合もありますが、逆に時間が経過するほど重症化することもあります。重症の急性膵炎の場合、他の臓器へのダメージが大きく、死亡率が20%程度もある緊急性を要する状態です。上腹部に激痛を感じたり、背中にまで広がる痛みを感じたりする場合は、我慢せず早めに内科や消化器科を受診しましょう。
しかし、急性膵炎の多くは軽症から中等症であり、発症後すぐに適切な治療を行うことで、2〜3日で回復してきます。その間は膵臓を安静にするための絶食や絶飲、輸液などを含めた慎重な経過観察を行うため、入院が必要です。重症の場合は合併症の治療も必要になる場合が多く、その場合は集中治療室での入院になります。外科的処置が行われることもあります。
膵炎の痛みを予防するためには、日頃から膵炎にならないような生活習慣が必要です。特に、飲酒と食生活は重要なポイントです。
長期間にわたるアルコールの過剰摂取は、急性膵炎から慢性膵炎を引き起こすリスクを高めます。一般的には、ビール大瓶3本(日本酒で約3合、ワインでボトル1本、焼酎で2合程度)を毎日飲み続けると、10〜15年で発症する可能性が高いと言われています。しかし、実際に慢性膵炎を発症した患者さんの飲酒習慣を調査したところ、「週に3日以上、1日1合以上」の人が76%であったことがわかっています。
この量は、現在厚生労働省が提示している「節度ある適度な飲酒」の上限を超えていません。つまり、アルコールの量がそれほど多くなくても、日常的にアルコールを飲み続ける習慣があると、慢性膵炎のリスクは高くなるといえます。食事と一緒にゆっくり摂取する、定期的に健診を受ける、痛みを感じたらすぐに医師の診察を受けるなど、膵炎の予防とともに早期発見ができるようにしましょう。
食生活の見直しも、膵炎の予防に効果的です。揚げ物や炒めもの、デザートなど脂肪分の多い食事を避けることや、1回ごとの食事の量を減らし、1日3食から1日4〜5食に分けて食事を摂ることで、膵臓の負担を減らすことができます。
膵炎は、アルコールと胆石が主な発症原因と考えられています。飲酒後に上腹部に痛みを覚えることがあれば、飲酒量を減らしましょう。また、胆石や膵石が発見された場合は、除去手術を受けることも必要です。
高脂質食を控えることも、膵臓の負担を減らし、膵炎を防ぐ上で大切です。特に、飲酒と高脂質食を同時に摂取することは膵臓だけでなく、多くの臓器に負担がかかります。脂肪分控えめのバランスのよい食生活を心がけましょう。
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