記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/11/10
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
小腸・大腸を中心とした原因不明の炎症・潰瘍のことを「炎症性腸疾患」といいますが、この1つにクローン病という病気があります。この記事ではクローン病の概要、症状、原因、治療法などをご紹介します。この記事が病気の早期発見・早期治療に繋がるものとなれば幸いです。
クローン病は1932年にニューヨークのクローン医師らによって初めて報告された病気で、クローン医師の名前にちなんで命名されました。クローン病は消化管(口腔、食道、胃腸、肛門まで)に原因不明の炎症や潰瘍ができる病気で、特に小腸・大腸を中心によく見られます。また、「非連続的な病変(病変と病変の間に正常部位がある)」を特徴とする病気です。
2016年の「特定医療費(指定難病)受給者証所持者数」を参照すると、クローン病患者さんの数は42,789名であることがわかります。また、一般的にクローン病は「10歳代~20歳代によく見られる病気」であることがわかっており、男性の場合は20歳~24歳、女性の場合は15歳~19歳に多いと報告されています。そのため、若年者に多い病気だといえます。
クローン病の代表的な症状には、腹痛と下痢があります。この2つは患者さんの半数以上に見られる症状です。また、クローン病の発症部位によっては、下血、発熱、体重減少、倦怠感なども見られるほか、「腸管合併症」や「腸管外合併症」など伴うケースもあります。
クローン病では上記のような症状が見られますが、患者さんごとに症状の種類や重症度は異なります。なお、クローン病の活動期が長引いたり、再燃を繰り返したりすると、合併症の発症リスクが高くなるといわれています。
クローン病の原因は、まだハッキリとはわかっていません。現在のところ、遺伝、感染症、食物、免疫機能の異常など、いくつかの説が考えられています。中でも有力な説が、遺伝的要因を背景に、食事や腸内細菌に対して免疫機能(リンパ球など)が過剰に反応することで、クローン病を発症・増悪するというものです。ただし、あくまでも遺伝的要因が関係しているだけと考えられており、「クローン病は遺伝病ではない」と考えられています。
クローン病は主に血液検査などで兆候が見つかり、内視鏡検査やCT検査などを経て診断されます。クローン病と診断を受けたら、主に内科治療を行い、必要に応じて外科治療も行います。以下では、クローン病の具体的な治療内容についてご紹介します。
クローン病の治療では、基本的に内科治療が中心になります。内科治療には薬物治療や栄養療法などがあり、患者さんの病状や治療の目的に合わせて治療が行われます。
薬物治療としては、症状を抑えるために5-アミノサリチル酸製薬、副腎皮質ステロイド、免疫調整薬などを使用します。また、再燃を予防するために5-アミノサリチル酸製薬や免疫調整薬などを継続的に投与します。なお、これらの薬物の効果が見られなかった場合は、抗TNFα受容体拮抗薬を使って、クローン病の治療を行うケースもあります。
また、栄養療法には大きく「経腸栄養療法」と「完全静脈栄養療法」の2つがあります。経腸栄養療法とは、身体に必要な栄養を直接腸に投与する方法です。一方、完全静脈栄養療法とは経腸栄養療法が難しい場合などに、栄養を静脈に投与する方法をいいます。なお、病状が落ち着けば通常の食事に戻ることもできますが、その際には病状を悪化させないために献立などに気をつける必要があります。
クローン病によって腸閉塞(腸が塞がっている状態)、穿孔(腸に穴が開いている状態)、腫瘍などの合併症が見られたら手術が必要になります。また、狭窄(腸が狭くなっている状態)が見られたら内視鏡的治療を行う場合もあります。そのほか、内科治療の効果が見られないとき、治癒しにくい痔ろうがあるときにも、必要に応じて外科治療が行われます。
近年の医療技術の進歩に伴って、クローン病を発症しても寛解状態を目指すことができるようになっています。ただし、クローン病は再燃する可能性がある病気なので、寛解後も継続的な治療・管理が必要です。定期的に医療機関を受診し、よい状態を維持できるようにしていきましょう。
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