記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/11/10
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「炎症性腸疾患(IBD)」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?今回はこのIBDについて、具体的な病名や症状、治療法などをお伝えしていきます。
体たちの体は、ウイルスや細菌が体内に侵入すると免疫系が働いてそれらを追い出すという防御システムを持っています。しかしこの免疫細胞が防御の役割を超えて過剰に働き、腸粘膜や本来共存すべき腸内細菌まで攻撃して大腸などに炎症・潰瘍を起こしてしまうのが、「炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease: IBD)」です。
炎症性腸疾患は、細菌や薬剤など原因がはっきりした「特異的炎症性腸疾患」と、原因がわからない「非特異的炎症性腸疾患」に分けられます。特異的なものには、感染性腸炎、薬剤性腸炎、虚血性腸炎、腸結核などが、非特異的なものには、潰瘍性大腸炎、クローン病などがあります。
ただし、一般的に炎症性腸疾患という場合、潰瘍性大腸炎とクローン病という2つの病気を指すことが多いです。これらは根本的な治療法がなく、難病として指定されている慢性的な疾患です。
下血、下痢、体重減少、発熱などがあります。潰瘍性大腸炎では、下痢や粘血便、腹痛などがあり、重症化すると発熱、体重減少、貧血などの全身症状を引き起こします。症状が落ち着いている「寛解」と悪化している「再燃」という状態を繰り返しながら、慢性の経過をたどることが多く、長期経過すると大腸がんの発症リスクが高まります。
激しい炎症が続いたり炎症が腸管壁の深くまで進行すると、腸管合併症として大量出血や腸管が狭くなったり穴があくことがあるほか、腸内にガスや毒素が溜まって大腸が膨張し全身に発熱や頻脈などの中毒症状がでる中毒性巨大結腸症を発症することもあり、多くの場合緊急手術が必要となります。
なお、クローン病では口から肛門までのあらゆる消化管に病変をつくるという特徴があり、症状も多岐にわたります。腸管以外に出る合併症としては、関節炎や皮膚症状、眼炎、口内炎や肝胆道系の障害などがあります。
特異的炎症性腸疾患では、その原因を取り除く治療が基本となりますが、原因がわかっていない非特異的炎症性腸疾患では根本的な治療が難しく、腸粘膜の炎症を抑え込み腸を普通の状態に戻すことが治療の目標となります。
軽症の場合は大腸の粘膜に作用して炎症を抑える薬の内服、炎症の場所が肛門から直腸付近までに限定されている場合には座薬・注腸を用います。よくならない場合には、副作用に注意しながら免疫を抑える内服薬を追加したり、免疫細胞である血球成分を取り除く血球除去治療などを行い、重症の場合は入院して絶食し治療が行われます。
潰瘍性大腸炎で寛解・再燃を繰り返すようであれば、寛解期を維持していくための薬の服用を続け、生涯にわたり病気をコントロールしていくことになります。クローン病の場合は食事制限も必要となります。
炎症性腸疾患(IBD)は、免疫機能の過剰な働きによって大腸に炎症や潰瘍を起こす病気で、一般には原因不明の潰瘍性大腸炎とクローン病の2つの病気をさします。これらは難病に指定されている慢性的な疾患で、生涯を通じて服薬等による病気のコントロールが必要です。血便などの疑わしい症状が出たら、念のため病院を受診しましょう。
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