記事監修医師
川崎たにぐち皮膚科、院長
手にできることのあるこぶのような「ガングリオン」。基本的に痛みを伴うものではありませんが、このガングリオンは自分でつぶしてしまっても大丈夫なのでしょうか。ガングリオンの適切な治療法について解説します。
ガングリオンは良性腫瘍で、触るとぶよぶよしたりゴリゴリしたりする、こぶのようなものです。大きさは米粒のような小さなものから、ピンポン玉ほどの大きさになることもあります。関節にある関節包(関節を囲んでいる袋状の膜)や腱鞘(腱を包み込んで保護している部位)の部分から生じ、中にゼリー状の物質が詰まっています。
ガングリオンでは、腱と腱鞘の間にある潤滑油の働きをしている液体が、ゼリーのように固まっていくことで大きくなっていきます。身体中の関節のどこにでもできる可能性がありますが、特に手の関節にできることが多いとされ、手を使いすぎることで大きくなるともいわれます。
ガングリオンそのものに痛みが生じることはありませんが、大きくなったり、位置によっては神経を刺激してしびれや痛みが生じたり、関節の動きを妨げることがあります。医療機関での治療では、医師が状態を見ながら押しつぶすという処置が行われることがありましたが、現在では医療機関でもあまり行われない方法となっています。自己判断で行うことは止めましょう。かえって症状が悪化したり、神経や関節への異常が生じたりする可能性もあります。
ガングリオンが疑われるときは整形外科や皮膚科を受診しましょう。ただ、基本的に痛みや運動障害といった症状がなければ、放置しても問題はありません。
しかしガングリオンは、20〜40代くらいの女性に最もよく見られ、多くが手にできます。手は見た目が気になる場所のひとつのため、審美の目的で治療を行うことがあります。
まず行われる治療としては、注射器でゼリー状の内容物を吸引する方法があります。この治療では再発する可能性があり、あくまでも保存的な治療方法になりますが、痛みの増加や皮膚感染症といったリスクが低い方法です。かつては、医師の手によって押しつぶす、押し込むという方法がとられることもありましたが、現在ではあまりすすめられていません。
経過をみていく場合も、どういった症状が出たら注意したほうがよいか、など気になる点を確認しておくと良いでしょう。
ガングリオンは注射器での内容物の吸引を繰り返しても、再発の可能性はあります。何度もガングリオンが大きくなるようなときは、外科的な手術によってガングリオンを摘出するという方法が選択されることがあります。手術でも再発の可能性はあるものの、内容物を残さずに摘出することが再発率低下に影響を与えると考えられています。
ただし、外科的手術は一般的には、局所麻酔を使用して行います。また、注射器での吸引に比べると、感染症や痛みの増加、皮膚に傷が残ったり血管や神経の異常が起こったりするなどのリスクが伴います。また手術を行っても、再発することもあります。手術前にしっかりと説明を受け、メリットやデメリットについて納得した上で受けることが必要です。
ガングリオンは、体のどこでも生じる可能性がある「こぶ」のようなものです。神経を刺激して痛みやしびれなどが生じることがありますが、生活に支障がなければ放置しても構いません。しかし、見た目が気になったり、大きくなることで痛みやしびれが生じたりする際には、何らかの治療が行われます。
治療は、注射器で中身を吸引する方法や手術がありますが、それぞれメリットやデメリットがありますから、医師としっかりと相談をしましょう。
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