フレイル、サルコペニア、ロコモの違いと関係性って?

2018/11/28

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

高齢化社会に伴い、老後の暮らしや介護など高齢者の健康的な生活への関心が高まっています。特に近年注目されているのが「フレイル」「サルコペニア」「ロコモ(ロコモティブシンドローム)」という概念です。加齢に深く関係するこの3つの言葉の意味や診断基準、違いをわかりやすく解説します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

フレイルとは?

フレイルとは、「加齢に伴い心身の予備能力(運動機能や筋力、認知機能)が低下し、健康障害を起こしやすくなっているが、適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態」のことです。健常から要介護に移行する途中の段階ともいわれています。

フレイルは、「虚弱」「老衰」といった意味をもつ海外の老年医学用語「Frailty(フレイルティ)」を由来とした言葉です。日本では「正しく介入すれば戻る」という意味合いを強めるため、「フレイル」という共通の日本語訳にするよう、日本老年医学会が2014年に提唱しました。

フレイルの評価基準は?どんな症状があれば該当するの?

フレイルについて統一された評価基準はありませんが、日本ではFried氏らが提唱した下記の基準に基づいて評価されることが多いです。

フレイルの身体的な評価基準
  • 体重の減少(6か月で2~3kg以上)
  • 特に理由なく疲れやすい
  • 歩行速度の低下(1.0m/1秒未満)
  • 握力の低下(男性:26kg未満、女性:18kg未満)
  • 身体活動の低下(軽い運動あるいは定期的な運動をしていない)

上記のうち3項目以上に当てはまる場合は、フレイルに該当します。なお、当てはまる数が1~2項目の場合は、フレイルの前段階「プレフレイル」に該当します。
こういった身体的な症状だけでなく、フレイルは精神的な症状もあらわれることがあります。

フレイルの精神的症状
  • 家に閉じこもりがちになった
  • 認知機能や判断力の低下
  • うつ状態

サルコペニアとは?フレイルとの違いや関係は?

サルコペニアとは、加齢に伴い筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下した状態です。ギリシャ語で「筋肉」を意味するサルコ(sarx)、「喪失」を意味するペニア(penia)を組み合わせ、サルコペニアという名称になりました。
サルコペニアになると、QOLの低下や転倒、骨折、寝たきりなどさまざまなリスクが生じます。

サルコペニアの診断基準

サルコペニアは、筋肉量の減少・筋力低下・身体機能の低下、という3つの基準で判定されます。それぞれの判断基準は以下の通りです。これらのうち、筋肉量の減少と共に筋力低下・身体機能低下のいづれかが該当した場合はサルコペニアと診断されます。

筋肉量の減少
BMIが18.5未満、またはふくらはぎの最も太い部分の周囲が30㎝未満
筋力の低下
握力が女性で18㎏未満、男性で28㎏未満
身体機能の低下
歩行速度が1m/秒以下

フレイルとサルコペニアの違いは?「フレイルサイクル」って何?

フレイルもサルコペニアも加齢に伴う機能低下を意味する言葉ではありますが、同じ概念の言葉ではありません。

フレイル

概念
筋力や運動能力、認知機能の低下、日常生活の活動性減少、疲労感、低栄養、体重減少など、フレイルが含む概念の幅は広いです。精神的な症状も含む
特徴
フレイルは「筋力の低下→活力の低下や疲労感→身体機能や活動量の低下→食欲や食事摂取量の減少→低栄養→筋力の低下」という悪循環の「フレイルサイクル」をたどることが多い

サルコペニア

概念
加齢に伴う筋肉量の減少を指す
特徴
サルコペニアはフレイルを招く要因になりえる。これは、フレイルサイクルの中には筋力の低下がみられ、サルコペニアが大きく関係しているから

ロコモとは?フレイルやサルコペニアとはどう違うの?

ロコモ(ロコモティブシンドローム)とは、骨や関節、神経、筋肉などの運動器の衰えによって、「立つ」「歩く」といった移動動作機能が低下した状態です。
ロコモの状態を簡単にいうと、足腰が弱くなり、寝たきりや要介護状態になりやすい状態または介護を必要とする可能性が高い状態を指します。

ロコモの診断基準

ロコモティブシンドロームの判定には3種類の方法があります。それぞれの方法と診断基準は次の通りです。

立ち上がりテスト

主に脚の力を評価するためのテストです。座った状態から片脚または両足で手を使わずに立ち上がれるかによってロコモの度合いを評価します。

具体的には、どちらか片方の脚ののみで立ち上がれなかった場合は、移動機能などの低下が始まっていると考えられ、両脚でも立ち上がれない場合は移動機能の低下が進んでいると判定されます。

ステップテスト

歩幅を測定し、脚の力やバランス能力、柔軟性など「歩行」に関わる能力を総合的に評価するためのテストです。できる限り大股で2歩歩いてその幅を計測し、2歩の幅を身長(cm)で割った値を「2ステップ値」とし、その値から歩行能力を判定します。

具体的には、2ステップ値が1.3未満の場合は移動機能の低下が始まっていると考えられ、1.1未満の場合は移動機能の低下が進行している状態と判定します。

ロコモ25

身体の状態や生活状況に関する25の質問に回答してロコモの度合いを評価する検査です。この結果により、身体機能のどこに問題があるのか、生活上どのような点を改善すべきか、評価することが可能です。

ロコモの原因って?フレイルやサルコペニアとの関係は?

ロコモの原因には、骨折や骨粗しょう症などの骨の障害、変形性脊椎症や変形性関節症などの関節や椎間板の障害、麻痺などの筋肉や神経の障害があります。

ロコモ

概念
運動器官の障害を指す
特徴
ロコモとフレイルは「身体機能の低下」という点では共通する概念と言えます。
そのなかでもロコモは、骨、筋肉、関節、運動など運動能力に関わる器官の機能が低下することによる身体機能の低下のことを指します。一方、フレイルは運動機能に関わらず消化に関わる臓器、脳など全身のさまざまな機能が低下することを指します。
つまり、ロコモはフレイルの一部分でもあるのです。

また、筋肉や筋力に関するサルコペニアと比べて、ロコモは運動器官に関した状態を指すためより広い概念となります。つまりロコモは、サルコペニアの状態を含みます。

おわりに:3つの言葉を理解して加齢に伴う心と体の変化を認識!適切な対応をとりましょう

フレイル、サルコペニア、ロコモの3つの言葉にはそれぞれ別の意味を持ちます。加齢に伴う心と体の変化をしっかりと認識し、段階に応じた正しい健康維持法を選ぶことができるように、3つの言葉の意味を理解しておくことをおすすめします。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

高齢者(102) 寝たきり(15) フレイル(10) サルコペニア(7) ロコモ(3)