食道にステントを入れる場合とは?放射線治療できなくなるって本当?

2018/12/9

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

食道がんの治療法の1つとして、ステント治療という療法が取られる場合があります。ステントとはあまり耳慣れない言葉ですが、いったいどのような治療法なのでしょうか?また、ステント治療を行った場合、放射線治療は行えなくなるのでしょうか?

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

ステントってどんなもの?

ステントとは、血管や腸などの狭くなった管の中に入れ、そこを拡張するために使用するパイプ状の器具です。外科手術の器具の一種で、がんで気管や食道が狭くなってしまった人が呼吸困難になったり食事が摂れなくなったりするのを防ぐために使われます。つまり、治療のための器具ではなく、疾患に伴う症状を軽減するための器具です。

メインの素材には金属が使われていて、金属の筒をレーザーカットしたり、ワイヤーを編んだりと製法はさまざまですが、金属の網状の形状をしています。金属が露出したベアメタルステントと、ベアメタルステントにシリコンやポリウレタンなどの膜を被せたカバードステントの2種類があります。カバードステントは主に非血管系で多く用いられています。

食道にステントを入れる場合、ベアメタルステントが多く使用されます。これは手術方法が簡単で全身麻酔を使わずに行えるためですが、場合によってはカバードステントを使う場合もあります。

食道にステントを入れるのはどんなとき?

食道にステントを入れるのは、がんによって食道の内腔が狭くなり、食物や唾液を飲み込むことが困難になった場合です。また、がんが進行して食道に穴が空いてしまった場合、食物が外に漏れて肺炎などを引き起こすおそれがある場合にも、その穴をおおうためにステントを挿入することがあります。

食道の狭窄だけでなく、食道がんが気管に湿潤してしまうと、気管が狭くなってしまいます。すると、呼吸困難や、場合によっては窒息を引き起こすこともあります。この場合も食道と同じようにベアメタルステントを挿入します。また、場合によってはカバードステントを挿入することもあり、これは前述のとおり手術室で全身麻酔をかけて行います。

ベアメタルステントを挿入する場合、静脈麻酔を用いて約1時間程度で手術が行えます。全身麻酔ではないため、人によっては苦痛を伴うことがあります。レントゲン室で胃カメラ(内視鏡)を用いながら、特殊なバルーンによって狭窄部を一時的に広げ、細くチューブに入った状態のステントを挿入します。適切な位置まで進んだら、ステントをチューブから出し、広げます。

問題がなければ翌日から水を飲むことができ、数日で食事も摂れるようになります。ステントが広がるときに胸の痛みを感じることがありますが、その場合は鎮静剤で対応します。また、誤嚥による肺炎も稀ではありますが起こることがあります。ステント挿入後に体調不良を感じたら、すぐに医師に相談しましょう。

ステントを入れると放射線治療できないの?

食道がんの治療法に、化学放射線療法という治療法があります。抗がん剤治療と放射線治療を併用する治療法で、がんが気管や大動脈にまで湿潤して手術では切除しきれない場合や、手術を行うだけの体力が見込めない場合、または手術を希望しない場合、そして手術後に再発を予防する目的で行います。

放射線治療は、がん細胞の遺伝子に作用し、がん細胞を消滅させたり、減少させたりする治療法です。細胞の増殖や脱落などに作用するため、放射線治療を行った部位は粘膜が荒れることがあります。この副作用により、ステント挿入後に放射線治療を行うと、食道に穴が空いてしまうリスクが高いため、ステント挿入後に放射線治療は行うことができません

ステントを入れた場合、他にもトラブルが起こることはあるの?

ステントを留置したことによって起こるトラブルはそれほど多くありませんが、ステントを挿入するときに位置がずれたり、ステントを挿入してもまた狭くなってしまった場合は、もう1本ステントを挿入しなくてはならなくなる場合もあります。

また、食道が常に開きっぱなしの状態となるため、横になったときに食べたものが逆流してきて吐いてしまうこともあります。できるだけ食べてすぐ寝ることはしないようにしましょう。

おわりに:放射線治療を考えている人はステントの実施に注意を

ステントは金属製の網目状の管で、がんで狭窄した部位を開いてくれる器具です。たいていは内視鏡で手軽に行える手術ですが、ステント治療を行った後には放射線治療ができないというデメリットもあります。放射線治療を考えている人は、医師と特によく相談して治療法を決めるようにしましょう。

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