進行した食道がんの治療と末期食道がんの緩和ケアの選択について

2017/12/27 記事改定日: 2018/11/8
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

食道がんは初期にはっきりとした自覚症状が現れない特徴があるため、症状が現れて検査したらすでに末期であったということも少なくありません。
この記事では、末期食道がんの治療について解説しています。緩和ケアにも触れているので、もしものときに自身が最良の選択ができるように、参考にしてください。

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食道がんが進行するまで気づきにくい理由とは?

食道がんは早期の場合、ほとんど無症状で自覚症状が現れないため気づきにくいとされています。がんが進行するにつれて食べ物が飲み込みづらいと感じたり、胸につかえるような感じを自覚するようになり、さらに食道がんが進行して食道が圧迫されると固形物が飲み込めないどころか、水すらも食道を通らなくなってしまい、体重減少などに陥ってしまいます。

がんが進行するにつれて大動脈や神経、肺などを圧迫したり、穿孔を起こすようになるので背中が痛くなったり、声がかすれたりするようになり、末期になるとリンパ節や他の臓器に転移して、それぞれの臓器特有の症状が出るようになります。

末期食道がんの症状

食道がんは早期の段階では自覚症状が少ないですが、進行してがんが大きくなったり、気管や肺など周辺臓器に広がっていくと様々な症状が現れるようになります。

末期食道がんでは、がんが大きくなることで飲食物の通過障害が生じ、栄養を摂ることができなくなるため著しい体重減少が見られるようになります。
また、がんは気管や肺、縦隔などにも進展するため、咳や血痰、胸痛などの呼吸器症状や、縦隔内を走行する反回神経に浸潤して声の嗄れが現れることもあります。また、胸椎などに浸潤することもあり、痛みを伴うだけでなく、ほんのわずかな衝撃で骨折を引き起こすことも少なくありません。

進行食道がんの診断方法

食道がんは、他の臓器へのがんの広がりなどを確認するためにはCTやMRI、超音波内視鏡、気管支内視鏡などを用いて検査で進行や転移の状態を確認し、末期と診断されます。また、リンパ節への転移を調べるために、胸部X線(レントゲン)や腹部の超音波など、それぞれの臓器に対応した検査が必要になります。

進行食道がんの治療法について

手術によるがんの切除や放射線治療、化学療法、光線力学療法など、がんに効果的とされる治療には様々なものがあります。
残念ながらの進行した食道がんは、他の臓器にも浸潤や転移をした状態なので、治療によって全てのがんを取り除くことはできません。末期の治療の場合は、がんの完治を目指すのではなく、進行を遅らせる目的で放射線治療や抗がん剤による治療を行います。

そして、がん自体への治療効果が見込めないほど進行している場合は、がんがもたらす諸症状を軽減させるための治療が施されます。痛みがある場合にはステロイド剤を使い、さらに高度の痛みがある場合はモルヒネなどを使います。

食道が狭窄している場合はバイパス手術を行ったり、胃や小腸にチューブを入れて栄養を送る治療が行われることもあります。骨への転移がある場合は痛みを伴うので痛み止めを使用し、脳への転移がみられる場合は、薬の投薬や放射線療法を行います。

進行食道がんと診断されたら・・・

食道がんの場合はがん末期と判明した時点で余命宣告を受ける人が多いといわれています。治療を行なったとしても残念ながら残された時間が短いことが多いからです。人生をどう生きるか家族や医師と話し合うことが必要になってくるでしょう。

会話や食事が困難になり、呼吸状態の悪化や強い痛みなども見られる可能性があります。これらの精神的、肉体的な苦痛を取り除くために緩和ケアは非常に重要です。

末期食道がんの緩和ケア

末期食道がんは、気管や肺などに浸潤し、肝臓などにも遠隔転移が生じます。このため、根治を目指して手術をすることは難しく、治療の目標はいかにして食道がんによる症状を和らげ、日常生活を快適に過ごすことができるか、という点になります。

末期食道がんでは、飲食物の通過障害が生じるため、著しい低栄養状態となることが少なくありません。その状態を改善する治療として、中心静脈栄養などが挙げられます。また、胸部や背部などに非常に強い痛みを伴うことが多く、患者は大変な苦痛を感じるとされています。緩和ケアでは、この痛みを取り除くために、一般的な鎮痛薬であるNSAIDs(非ステロイド系消炎鎮痛剤)やオピオイド系麻薬など様々な薬剤が使用されます。

痛みを取り除くための緩和ケアでは、まず最少量の薬剤から開始し、痛みの状態に合わせて徐々に薬剤量を増やしたり、より強力な効果のある薬剤に変更したりしながら痛みのコントロールができる投与方法を探していきます。
緩和ケアでは栄養状態を改善し、痛みのコントロールを行いますが、精神的に不安定になる患者が多いことから、患者の訴えにはなるべく傾聴し、家族や周囲の支えが必要になります。

おわりに:進行・末期食道がんは、治療と緩和ケアについて理解したうえで方法を選択しよう

進行食道がんと判断された段階で余命宣告を受けることも少なくないようです。食道がんに限らずどのがんにも言えることですが、がんの末期には強い痛みや精神的な苦痛も伴うことを理解しておく必要があります。
治療に関しては緩和ケアも含めて検討し、本人と家族が十分納得できる方法を選択するようにしてください。

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