記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/12/8
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
咳がよく出るようになった場合、きっと多くの方は喘息などの呼吸器系の疾患を思い浮かべるのではないでしょうか。今回は、一見咳とは関係なさそうな「食道がん」で咳の症状が見られるか、また術後の咳について解説していきます。
食道がんとは、食道の粘膜にできるがんのことです。
食道がんはどこにでもできる可能性がありますが、日本人の食道がんの場合は約半数が食道の中央付近からできており、その次に食道の下部に多くできています。
食道がんには主に扁平上皮がんと腺がんの2つのタイプのがんがあり、日本人の約90%は食道の粘膜である扁平上皮にがんができる扁平上皮がんであるとされています。食道と胃の間にがんができる腺がんは、胃酸が食道に逆流することによって起こる逆流性食道炎が腺がんを引き起こす背景となっているため、欧米での食道がんの原因の半数以上を占めていましたが、現在では食の欧米化や肥満に伴い日本人にも増加しているタイプのがんとなります。
扁平上皮がんは主に飲酒と喫煙が危険因子であり、近年、お酒を飲むと顔が赤くなる体質の方が飲酒を続けると食道がんのリスクが高まることが明らかになっています。
食道の粘膜にとどまる早期の食道がんでは、自覚症状がないことがほとんどです。しかし、がんが進行するにつれて食道のしみる感じや違和感、飲食物のつっかえる感じ、体重減少、物を食べたときの胸や背中の痛み、声のかすれる感じといった症状が出てきます。特に飲食物のつっかえる感じは顕著に出現する症状で、最初は肉などの固形物のみであったものが進行すると水でさえもつっかえてしまうようになります。
表在がんのような比較的浅いがんであっても、60%に軽いながらも食道に関連した症状が出現することが特徴です。これらの症状以外でも特に注目しておきたい症状は咳です。咳が出ると呼吸器系の疾患を疑う方が多いですが、がんが進行して気管、気管支、肺まで浸潤すると、咳や血のまじった痰が出ることがあるため、上記の症状に加えて咳が出るという場合には食道がんを疑って検査をすることがすすめられます。
食道がんの手術には、内視鏡的にがんの部分を切除する、もしくは広範囲に切除をして胃とつなげる手術があります。
食道がんの手術の合併症は消化管を縫い合わせたところがうまくつながらなかった場合に、つなぎ目から食物や消化液が漏れてしまい炎症を起こす縫合不全、発声の役割を担う反回神経の機能が低下して嗄声を引き起こす反回神経麻痺が他の消化管の手術と比較して多く、縫合不全の割合が5~20%、反回神経麻痺の割合が20~30%程とされています。
ほかにも、手術中右側の肺をへしゃげさせたり肺の方へ走行する神経や動脈のまわりのリンパ節を取り去る手術の術式だったり、臥床姿勢が続くこと、さらには術後の痛みなどによって痰が思い通りに出せないことなどによって肺炎を引き起こす可能性もあり、肺炎は食道がんの術後合併症のうち10%弱の可能性で起こるとされています。
また、術後すぐでは人工呼吸器を使用していて自己にて呼吸の管理ができていないこと、人工呼吸が外れた後でも飲み込むという動作が多少なりとも障害されてしまうということから、唾液や食べ物を誤嚥してしまいやすくなり、その結果として肺炎となるリスクも高まります。
食道がんの手術後に肺炎となってしまった場合の症状には、咳だけでなく38℃以上の高熱、息切れや全身のだるさ、鋭い胸の痛み、呼吸困難感やそれに伴うチアノーゼ、黄色~緑色の痰が見られます。
肺炎となった場合、軽度であれば抗生物質などの投薬で改善することもありますが、重症の場合は人工呼吸器を装着したり気管を切開するなどといった治療を行うこともあります。
呼吸器系の病気だけでなく、食道がんでも咳が出ることがあります。食道がんとは食道の粘膜にがんができる病態で、主に食べ物のつっかえる感じや、嚥下困難感が見られます。しかし、食道がんの病状が進行すると気管などにがんが浸潤してしまい、その結果として咳が症状として見られるようになるのです。また、術後も10%弱ではありますが肺炎を併発すると咳が見られます。咳が続く場合や食道がんの手術後の咳には十分注意をしてください。
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