ランニングによるさまざまな足の痛み

2017/4/28

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

ランニングによる足の痛みやケガは、大会に向けて日々厳しい練習をしているベテランランナーから、走り始めたばかりの初心者ランナーまで、すべてのランナーに共通する悩みです。以下に、最も一般的なランニングによる5つのケガについて、症状を見きわめる方法やケガの原因、けがの対処法や病院へ行ったほうがよい場合などをご紹介します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

ひざの痛み

ランニングでのひざの痛みについて以下で解説します。

症状

ひざの痛みは、ランナーにとって最も一般的な症状と言われています。「ランナーひざ」とも言われるひざの痛みは、ランニング中にひざの前、周り、後ろが痛くなる症状を言います。痛みは鈍かったり、鋭く激しいこともあります。

自宅での対処法

ひざの痛みを和らげるためには、ひざに氷をあててストレッチするのがお勧めです。1日数回、痛みがある部分に約20分間ぐらい、袋に小さい氷を入れたものをタオルなどに包み、患部にあてましょう。肌に直接氷を置いてはいけません。

ストレッチは、痛むほうの足を上にして横向きに寝て行います。つま先をお尻の方に近づけるつもりでひざを曲げ、次に手で足を持って、両方のひざが離れないようにしましょう。深く呼吸して、太ももの伸びを感じながら取り組んでみてください。このストレッチは1日6回行います。1回につき、少なくとも45秒間は伸ばすようにしてください。

医師の診察が必要な場合

1週間休んでもまだ痛みがあるときは、医師の診察を受けてください。また、1週間たっても痛みが消えない場合も医師の診察を受けてください。

走ってもよいか

痛みがひどかったり、腫れている場合はランニングを休んでください。ランニングの再開時期は、痛みの原因と、症状の度合いによって変わります。

アキレス腱炎

ランニングによって、アキレス腱炎になることがあります。

症状

アキレス腱は、足首の裏側にある、筋肉と骨をつなぐ硬くて弾力のある腱です。このアキレス腱が、定期的なランニングによって引っ張られ、断裂することがあります。

アキレス腱炎になると、足首やかかとの後ろに痛みや腫れが出ることがあります。軽い痛みが慢性的に続くことがあれば、突然鋭い痛みを感じることもあります。また、朝にひどく痛むこともあります。

自宅での対処法

腫れているところを氷などで冷やすのがお勧めです。冷やす際は直接肌に氷をあてるのではなく、タオルなどで包んでから冷やすようにしてください。また、指で軽くマッサージしたり、足用のサポーターを使うのもお勧めです。足用のサポーターについては、スポーツ用品店でアドバイスを受けてみてください。

医師の診察が必要な場合

3、4週間経ってもアキレス腱の痛みがなくならない場合は、医師の診察を受けてください。突然鋭い痛みが出たときは、アキレス腱が断裂している可能性があります。この場合はすぐに医師の診察を受けてください。

走ってもよいか

鋭い痛みがあるときは走れないと思いますが、痛みがひどくなかったとしても、痛みが取れるまではジョギングを休んで安静にして過ごしてください。

すねの痛み

ランニングでのすねの痛みについて以下で解説します。

症状

すねの痛みは、ひざ下の足の前部に生じます。シンスプリントとも呼ばれる症状です。ランナーは、すねに鈍い痛みを感じても走り続けることがありますが、これはすねへのダメージを増大させ、急激な激しい痛みを引き起こし、最悪の場合まったく走れなくなります。

自宅での対処法

最初の数日間は、定期的に患部に氷をあてると痛みが和らぎます(氷を患部にあてるときは、タオルに包んでください)。

医師の診察が必要な場合

患部が腫れていたり痛みがひどい場合、または2、3週間経っても症状が改善しない場合は、医師の診察を受けてください。

走ってもよいか

シンスプリントによって、完全に走れなくなる可能性があります。2、3週間休むとともに、走るときは少しずつ再開してください。

かかとの痛み

ランニングによって、かかとに痛みが生じる「足底筋膜炎」になることがあります。

症状

かかとの痛みは「足底筋膜炎」と呼ばれる症状で、突然たくさん走り始めたり、上り坂を走ったり、靴がすり減っている場合に起こりやすい症状です。かかとに体重をかけると、鋭い痛みが生じます。かかとに鋭いものを突き刺されたように感じたり、とがった石の上を歩いているような感覚に襲われます。

自宅での対処法

患部に氷をあるのがおすすめです。小さなボトルに水を入れて凍らせたものをタオルなどでくるみ、それを床に置いて約20分間足の裏で前後に転がすようにしましょう。

医師の診察が必要な場合

かかとの腫れがひどい場合は走るのを止め、すぐに医師の診察を受けてください。それ以外の場合は、1週間から10日たっても痛みが消えないときに病院へ行ってください。

走ってもよいか

かかとに痛みがある場合は走ることができません。早期に治療すると、通常2、3週間で痛みが消え、ランニングを再開できます。

肉離れ

次は、肉離れについて解説します。

症状

ランニング中に起こりがちな肉離れは、太ももの後ろにあるハムストリングか、ふくらはぎで起こります。肉離れは、走ることに慣れていない初心者ランナーによく見られる症状です。肉離れは突然起こり、誰かにふくらはぎやハムストリングを蹴られているかのような痛みを感じます。

自宅での対処法

ほとんどの肉離れは自宅で治療することができます。すぐにランニングをやめ、痛みが出ている部分を1日数回、約20分ほど氷を包んだタオルで冷やしてください(氷をじかに肌に置かないようにしください)。また、足を持ち上げ、枕で支えておくと、腫れがひきます。

走ってもよいか

肉離れの症状があるときは、走ることができません。回復してランニングを再開するまでにかかる時間は、2週間から約6ヵ月で、症状の度合いによって異なります。

おわりに

痛みが出たときにランニングを休むのは勇気がいるかもしれません。また、経験が豊富だと、このくらいの痛みなら走っても大丈夫、と考えてしまうかもしれません。でも、無理に走ってしまった結果、症状を長引かせてしまったり、走れなくなってしまったりすることもあります。将来のためにも、痛みがひくまで走るのはやめ、治療に専念しましょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

痛み(147) 足(28) ランニング(12) ジョギング(8) アキレス腱炎(2) すね(2) かかと(7) 肉離れ(3) 足底筋膜炎(12) ひざ(1)