記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/1/4
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
血小板が塊になって血栓化し、全身の細い動脈を塞いで各臓器に血液が行き渡らなくなることで機能障害を引き起こす「血栓性血小板減少性紫斑病(Thrombotic Thrombocytopenic Purpura : TTP)」。この血栓性血小板減少性紫斑病には、どんな治療が行われるのでしょうか。以降では治療法の種類や、治療法のひとつ「血漿交換療法」について掘り下げてお話していきます。
血栓性血小板減少性紫斑病の治療法は、先天性か、それとも後天性の血栓性血小板減少性紫斑病かによって異なります。
先天性の場合は、ADAMTS13というフォンビルブランド因子(血小板同士をくっつける糊のようなもの)を切断する酵素の活性の減少・欠損といった問題が原因なので、このADAMTS13を補充する治療(血漿静脈注射)が行われます。
一方、後天性の場合はADAMTS13に対する抑制因子(自己抗体の産生や薬の影響によるもの)が原因なので、ADAMTS13を補充しつつ抑制因子を取り除く「血漿交換療法」や、抑制因子の産生を抑制するステロイド剤の処方などが行われます。
血漿交換療法は、人工透析機を使って患者さんの血漿(血液から赤血球、白血球、血小板を取り除いた液体成分とタンパク質)を除去しつつ、ほかの患者さんの血漿を投与するという治療法です。カテーテル留置が必要になる点では患者さんの負担も大きいですが、急性期では最も迅速かつ効果的な治療とされています。
血漿交換療法は多くの場合、血小板の数などをこまめに観察しつつ、1回数時間程度のものを連日行います。なお、国内で保険適応となるのは毎週3回、最長3ヶ月までですが、状態によってはこの回数・期間以上の血漿交換が必要になる場合もあります。
難治性の血栓性血小板減少性紫斑病に対しては、これまではシクロスポリンといった免疫抑制剤などが使用されていましたが、近年では「リツキシマブ」の投与が有効と考えられるようになってきています。
リツキシマブとは、ADAMTS13インヒビター(投与された血液凝固因子を異物とみなしてつくられる抗体のこと)を産生するBリンパ球を破壊する、つまり抗体の産生を抑制する作用があるといわれている注射薬です。
なお現在のところ、血栓性血小板減少性紫斑病に対するリツキシマブの投与は保険適用外です。ただ、高額な血漿交換療法の回数を減らしたり、早期に使用することで再燃率を減らしたりできる効果も見込めるため、将来的な保険適用化が望まれます。
【 難病情報センター の情報をもとに編集して作成 】
血栓性血小板減少性紫斑病の治療法は先天性か後天性かで異なりますが、大半を占める後天性の場合は、血漿交換療法が実施されます。この血漿交換療法は保険適応される回数や期間に制限がありますが、急性期治療としては最も効果的といわれています。治療の進め方については医師と相談しつつ、適宜ほかの薬と併用したりして、うまく治療を継続させていきましょう。