記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/4/19
記事監修医師
前田 裕斗 先生
赤ちゃんを連れてはじめて実家に帰ったら、はじめて会う祖父母を見たとたんに泣き出した・・・そんな経験はありませんか? 赤ちゃんは、おじいちゃん、おばあちゃんが嫌いなわけではなく「分離不安」と「人見知り」という赤ちゃんの発達の段階なんです。ここでは、赤ちゃんの発達に欠かせない「人見知り」についてお話しします。
赤ちゃんは生後3カ月くらいになると、物や人、自分を認識するようになります。人や物を認識するという過程は、かなり早い段階で始まり、一説によれば視野が30 cmしかないころから顔を認識することができるといわれています。特に、いつもそばにいるお母さんの顔は、赤ちゃんが最初に認識するものです。赤ちゃんは、自分の身のまわりの世界を観察することで、それがお気に入りの人、物であることを覚えていきます。
多くの赤ちゃんが、生後5カ月ころに分離不安と人見知りを経験します。なぜでしょうか? これは、生後5カ月ころまでに「対象の永続性(object permanence)」という発達段階を赤ちゃんが経験することによるものです。対象の永続性は、目の前のものがみえなくても、そこに存在しているということをあらわします。
たとえば5カ月頃にも行う「いないいないばあ」ですが、だれでも馴染みのあるこの遊びは、赤ちゃんの遊びの中でも最高の遊びです。「いないいないばあ」は、赤ちゃんの脳を刺激し、粗大運動のスキルを形成するとともにユーモアのセンスをも養ってくれます。さらに、「いないないばあ」は、目の前のものがみえなくても、そこに存在していること…つまり「対象の永続性」を学ぶための遊びでもあるのです。
対象の永続性を理解した赤ちゃんは、自分の気に入ったものに強い関心を示すようになります。このため多くの赤ちゃんが、生後5カ月ころに分離不安と人見知りを経験します。
はじめて会う祖父母が抱っこしようとすると泣き出すのは、分離不安という対象の永続性に対して自然に起こる現象なのです。
こうした赤ちゃんの発達に欠かせない遊びは、前述の通り「いないいないばあ」です。「いないいないばあ」は、どんなときにすればいいのでしょうか?
赤ちゃんが起きていればいつでもいいでしょう。赤ちゃんの視覚の発達、粗大運動を用いた遊びや社会的相互作用を組み合わせた遊びは、練習をすればするほど赤ちゃんの脳の成長によりよい効果をもたらします。
生まれたばかりの赤ちゃんには、両手で顔を覆って「いないいないばあ」をしましょう。赤ちゃんは、表情に興味をもちます。成長に伴って遊びの範囲が広がれば、いろいろなバリエーションを加えてみましょう。
お気に入りのおもちゃやぬいぐるみを枕や毛布で隠したり、下から少し見えるようにして赤ちゃんがそれをみつけられるかどうかを観察してみましょう。みつけられたら、にっこり笑って大きな声で「いないいないばあ」と言って褒めてあげることです。
赤ちゃんはすぐに飽きてしまうので、赤ちゃんの目をみて「ばあ!」というタイミングを変えてみるのもいいでしょう。びっくりしすぎるほど驚いてしまったときは、少し間を空けてもう一度やってみましょう。
一方、自閉症や自閉症スペクトラム障害では、顔の表情での感情表現がむずかしく、人とのコミュニケーションをとることが苦手なので、周囲に対する意識や関心を示さず「無視」することがあります。
赤ちゃんとのコミュニケーションや交流を深めるためには以下のような方法を試してみてください。
・自分が話しかけられていると認識できるように、名前を呼ぶ
・周囲の雑音を最小限に抑える
・簡単なことばを使う
・ゆっくりはっきり話す
・簡単なジェスチャーを使いながら話す
・赤ちゃんがことばを処理するための時間を十分にとる
赤ちゃんが「いないないばあ」に反応しないときは、医師に相談してみましょう。
赤ちゃんは、どんな時期でも「いないいないばあ」が大好きです。奇しくも抱っこしようとして赤ちゃんに泣かれてしまったおじいちゃん、おばあちゃん!! 赤ちゃんはあなたたちが嫌いなわけではありません。1回でめげずにたくさん「いないいないばあ」をしてあげてください。そうすれば、赤ちゃんはあなたの腕のなかでスヤスヤ眠ってくれるでしょう! 赤ちゃんの人見知りは、成長の証です。