記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/5/8 記事改定日: 2019/7/30
記事改定回数:2回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
決して夫婦仲が悪いわけじゃないのに、そういえば最近セックスをしていない…。セックスレスで悩む夫婦は意外と多いと言われています。この記事では、セックスレスになってしまう原因とともに、解決策のヒントをご紹介します。
そもそも「セックスレス」とはどんな状態を言うのでしょうか。日本性科学会によると、セックスレスとは「特殊な事情が認められないにもかかわらず、カップルの合意した性交、あるいはセクシュアル・コンタクトが1カ月以上なく、その後も長期に渡ることが予想される場合」であると説明しています。
このことから、セックスレスは夫婦のどちらかが病気であるとか、夫婦仲が完全に冷え切っているといった特別な理由がないのにセックスをしない状態が続いていることを指しているということがわかります。
セックスレスになってしまう原因はいろいろ考えられますが、大きな理由として以下の3つが考えられます。
セックスレスになってしまうのは、出産直後や仕事のストレスが強くなっているときなど、人生の特定の時期であることが多いのですが、日常的にセックスへの意欲を失っていることに悩んでいる女性もいます。たとえば身体的な疲れやお酒の飲みすぎ、精神的な疲れ(抑うつ状態)、セックスに対する精神的・身体的なトラウマや薬の副作用などが挙げられます。
また、性ホルモンの変化がセックスレスの原因になることもあります。エストロゲンやテストステロンといった性ホルモンが減少すると、性欲減退につながります。性ホルモンは加齢にともなって分泌量が下がるため、年齢とともに性欲がなくなっていきますが、出産を終えたばかりの女性も産後数週間はセックスへの意欲を失うことが多いです。
一般的には、オーガスムに達しないのは十分に興奮していないためと考えられています。多くの女性は、陰核(男性の陰茎に相当する部)の刺激によってオーガスムに達することができますが、そのために必要な刺激の量や種類は個人差があります。
また、オーガズム障害が原因になることもあります。オーガズム障害とは、女性が十分な性的刺激を受け、精神的にも感情的にも性的に興奮しているのに、オーガズムに達することができない状態です。
オーガズム障害が起こる原因として、男性の射精が早すぎる、パートナーとの関係に問題がある、自制心を失うことに不安があること、そしてセックスについてコミュニケーションができていないことなどが考えられます。
また、糖尿病、脊髄損傷、多発性硬化症などから生じる神経損傷や、性器の異常といった身体疾患や、特定の薬による副作用も、オーガスム障害の一因となります。
セックス中に痛みを感じることを性交痛と言います。性交痛が起こる原因として、腟痙攣(けいれん)と腟の乾燥が考えられます。
腟痙攣(けいれん)とは、腟内または腟周囲の筋肉が痙攣を起こして痛くなることです。腟痙攣が起こる原因として、出産や会陰切開などによる腟の外傷があることや、セックスに対するネガティブな感情があること、また妊娠にたいする恐怖心などが考えられています。
また、閉経によってエストロゲンの分泌が少なくなると、腟が乾燥するようになります。腟が乾燥すると、セックス時に痛みを伴うことがあるため、セックスへの意欲が低下してしまう可能性があります。
性欲減退がセックスレスの原因だった場合、セックスでどんなことをしてもらうと興奮するのかをお互いに伝え合うことが大切です。また、性機能障害を治療したり、精神療法をしたりすることも、性欲を取り戻すのにつながることもあります。
オーガスムに達しないことがセックスレスの原因だった場合は、性器にどのように触れると心地よく興奮するのかを自分で確認し、それをパートナーに伝えるのが効果的です。また、リラクゼーション法や感覚集中法(パートナーと交互に、心地よいと感じられる方法で互いに触れ合う方法)などに取り組むのもおすすめです。
性交痛がセックスレスの原因だった場合は、潤滑剤(ワセリンや油性の潤滑剤よりも水性の潤滑剤の方が適しています)を塗ったり、前戯にたっぷり時間をかけたりすると、腟がうるおって痛みが和らぎます。もし、感染症などの病気が原因で腟の痛みが出ている場合は、原因となる病気を治療しましょう。
ただし、上記の診断に当てはまってもカップルや個々人が何を望むかによって治療が必要かどうかが変わります。お互いに不満がなければ、治療の必要はありません。
人はお互いの気持ちを理解したり、問題を一緒に解決するためにコミュニケーションをとりますが、これは性生活においても同じです。不満や心配事があるなら、それを包み隠さずに話しましょう。そうしないと、パートナーは「自分はもう愛されていない」「浮気をしているのかも」と不安になってしまう可能性があります。
とはいえ、セックスについて話を切り出すのはなかなか難しいと思います。そこで大切になるのが「タイミング」です。一番いいのは、まわりに自分とパートナーしかいないときです。電話や子どもなどに話を中断されない時間を見つけてみてください。
話すときは、自分の気持ちを正直に伝えることが大切です。相手を傷つけたくないからといって、本音を言わないままでいると、ベストな解決策が見つからない可能性があります。
また、パートナーの気持ちに寄り添うことも大切です。相手の気持ちに配慮しながら、悩みや提案を伝えることはできます。また、パートナーにも思っていることを正直に話してほしい、と頼んでみましょう。お互いに悩みを打ち明けたら、それを元にどうすればよいかを考える時間を設けましょう。その上でもう一度話し合い、お互いに納得できる解決策を見つけてみてください。2人だけで話すのが難しいときは、セクシャルセラピーを利用するのもおすすめです。 セクシャルセラピストは、2人だけでは対処に困難な問題に取り組む際のサポートや、性生活の質を上げるための方法を提案してくれます。
セックスレスは、性交痛といった身体的な問題だけではなく、パートナーとの関係やトラウマなどの心理的要因が深く関わっていることもあります。まずはお互いが率直に気持ちを打ち明けあうことが大切ですが、難しいときは恥ずかしがらずに、セラピストや専門医に相談してみましょう。