記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/3/24
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
野菜や肉を手際よく切っているとき、勢いあまって包丁で指を切ってしまうことがあるかもしれません。このようなとき、すぐに水で洗ったほうがいいことまではわかっても、その後にどんなケアをすればいいのか迷ったことがあると思います。この記事では、包丁で指を切った後にどのようなケアをするのが適切なのかを紹介します。
料理中などに包丁で指を切ってしまったとき、まず最初にすべきことは流水でしっかりと洗うことです。包丁についた雑菌や食物片が、切り傷から皮ふの中に入ってしまう可能性があるからです。そのまま絆創膏を貼ってしまうと、感染症や炎症の原因になりかねません。
また、止血のためにタオルや紐で縛ると、静脈の流れをせき止めて手足がうっ血し、出血がひどくなってしまうので逆効果です。きれいなタオルやハンカチなどで、出血している部位をピンポイントで強く圧迫するようにしましょう。その状態で、すぐに医療機関で受診するようにしてください。
血が止まったら乾かすのではなく、治りが悪くならないよう「うるおい」を保つことが大切です。以前とは異なり、「傷は消毒しないで水道水でよく洗い、乾かさずに治す」(湿潤治療)というのが、現在の常識となっています。
このような場合の止血には、アルギン酸カルシウムを使った被覆材である「アルギネート創傷被覆材(そうしょうひふくざい)」を貼るのが有効です。これはコンブなどの海藻に含まれるアルギン酸カルシウムを繊維状にしたもので、血液などの液体を吸収してゲル化する性質があります。このときにカルシウムイオンを放出し、それが血液凝固を促進します。
アルギネート創傷被覆材を出血したところに直接貼ってラップなどで覆い、心臓より上の高さに上げて軽く圧迫すれば、たいていの出血は止まります。傷口に直接貼ることができるハイドロコロイドやポリウレタンフォーム・ドレッシング材が、ドラッグストアやネット通販でも販売されています。
ただし、これらを使った自宅での治療も可能ですが、傷が赤くなって腫れていたり、膿が出る、痛みが強いといった場合には、感染症が疑われるので、必ず医療機関で受診しましょう。
消毒液は殺菌作用がある一方、良い細胞にもダメージを与えるだけでなく、反対に傷口を深くしてしまう場合があります。また、傷ができると、その傷口にはさまざまな細胞が傷を治そうと集まって浸出液となってあらわれ、傷がジュクジュクし始めます。浸出液は傷を治すために必要な成分がたくさん含まれている液で、膿とは異なります。
膿が出ている場合には、腫れや痛み、赤み、熱感などの感染の兆候が出てくるので区別することができます。ガーゼはこの浸出液を吸い取り傷口を乾燥させ、さらに傷口にくっついてはがすときにせっかくできた表皮細胞も一緒にはがしてしまいます。ガーゼは傷口に当てず、自己治癒能力を活かす湿潤治療を行うようにしましょう。
まず流水でしっかりと洗って雑菌や食物片などを取り除き、出血している部位をピンポイントで強く圧迫し、傷口は乾燥させないようにしましょう。止血にはアルギネート創傷被覆材が有効です。直接貼ってラップなどで覆い、心臓より上に上げて圧迫します。膿が出る、痛みが強いといったときは感染症の可能性があるので、必ず医療機関で受診しましょう。