記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/3/30
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
耳の中や側頭部というより、耳そのものや耳たぶが痛いときには、どのような原因が考えられるのでしょうか。今回は、耳の外側がズキズキ痛むときに考えられる3つの原因を、それぞれの症状を改善するための適切な対処法とあわせてご紹介していきます。
耳の外側がズキズキ痛むとき、特に耳たぶを外から引っ張って動かすと痛みが増す場合は、外耳炎を起こしている可能性が高いと考えられます。耳の外側がズキズキするような痛みが出るほか、以下のような症状を伴うのが特徴です。
外耳炎は、耳介(じかい)とも呼ばれる耳の組織や、外耳道(がいじどう)と呼ばれる耳の穴から鼓膜に至るまでの経路に、ウイルスや細菌感染による炎症が起きている状態です。
原因となるウイルスや細菌は、カビやヘルペスウイルスなど人によってさまざまで、耳に侵入して増殖した後、まずは発疹やかゆみを引き起こします。かゆいところを指や綿棒で触ってしまうことで耳介や外耳に小さな傷が生まれ、そこにさらにウイルス・菌が入り込んで繁殖し、痛みを伴う状態にまで悪化していくのです。
なお、ウイルスや菌は適度に湿気のある状態を好むため、汗や水泳のために耳垢が濡れたままになりやすい夏場や、日常的に泳ぐ習慣のある人に発症しやすいとされています。
外耳炎の治療は、耳鼻科の医師にまず耳垢を除去してもらってから外耳を消毒し、処方してもらった塗り薬や点耳薬、内服薬で投薬治療していくのが一般的です。
処方される薬の種類は症状によって異なりますが、塗り薬や点耳薬ならステロイドや抗生物質含有のもの、内服薬は痛み止めや抗生物質などが処方されます。また、悪化と再発を予防するための措置として、自宅で耳かきや綿棒で耳掃除したり、耳を触るのを控えるよう指示されます。
耳の外側がズキズキ痛み、特に耳たぶが赤く腫れている場合は、耳介軟骨膜炎(じかいなんこつまくえん)という疾患を発症していると考えられます。
耳介軟骨膜炎は、耳たぶの赤み・腫れとともに、以下のような症状を伴うのが特徴です。
耳介軟骨膜炎は、耳を形成している軟骨に強い炎症が生じている状態です。発症の原因はピアスやひっかき傷、虫刺されなどの外傷から、緑膿菌や黄色ブドウ球菌などの雑菌が入り込むことによるものが多いとされます。しかし、自己免疫疾患によって体が自己の軟骨成分に対して免疫反応を起こし、炎症を制御できなくなることが原因で発症するケースも報告されています。
耳介軟骨膜炎の治療は、耳鼻科の医師に原因にあった方法ですすめてもらう必要があります。
原因が細菌感染である場合は、原因となったピアスなどの異物や溜まった膿は耳を切開して除去したうえで、抗生物質を使用して炎症を抑えていきます。抗生物質は、フルオロキノン系やアミノグリコシド系、ペニシリン系などから、患者に合ったものを処方するのが一般的です。
一方、原因が自己免疫疾患である場合には、患者の状態にあわせてステロイドや免疫抑制剤などを投与し、症状を抑えていきます。
特に耳たぶがズキズキ痛み、一緒に頭痛を伴い、耳の穴の入り口当たりに痛みと赤みのあるできものがあるときは、耳性帯状疱疹(じせいたいじょうほうしん)かもしれません。耳性帯状疱疹は別名を「ラムゼイ・ハント症候群」「ハント症候群」とも言い、以下のような特徴的な症状を表す疾患です。
耳性帯状疱疹の発症原因は、ヘルペスや水疱瘡を引き起こす帯状疱疹ウイルスです。
過去にヘルペス、水ぼうそうの感染・発症を経験した人のうち、ほとんどは症状がなくなった後も、体内に帯状疱疹ウイルスが潜伏した状態になっています。体内に潜伏していた帯状疱疹ウイルスが、脳から耳にかけてのびている聴神経や顔面神経に感染し、発症したのが耳性帯状疱疹です。
通常、体内に帯状疱疹ウイルスが潜伏していても症状が現れることはありませんが、免疫力が低下したときなどに再活性化し、耳性帯状疱疹を引き起こすと考えられています。
耳性帯状疱疹、ラムゼイ・ハント症候群は、耳鼻科で薬物療法を受けることで治療できます。
治療には主に、神経麻痺の原因と思われる神経浮腫に有効なステロイドホルモン剤や、ウイルスの増殖抑制に効果的な抗ウイルス薬が使用されます。
ただし、上記の薬物を使った治療では、すでに増殖した帯状疱疹ウイルスを殺すことはできません。薬物療法で十分な治療効果を得るには、発症してから10日以内、顔面麻痺の症状が出てからは3日以内の投与開始が必須であると考えられています。なお顔面麻痺が現れてから8日目以降の抗ウイルス薬、14日目以降のステロイドホルモン剤の投与は、ほとんど治療効果が得られないとされています。
このため、どの程度薬物療法で症状が改善するかは治療開始のタイミングによって大きく変わってきます。場合によっては、手術療法がとられる場合もあります。
耳の外側がズキズキと痛む場合に考えられる代表的な原因疾患として、外耳炎、耳介軟骨膜炎、耳性帯状疱疹の3つをご紹介しました。これらの病気は、耳のどのあたりがどんなふうに痛むかや、痛みとともに出てくる症状に特徴がみられます。ただ、見た目だけで病状を判断するのは難しいですし、痛みが続くとストレスにもなるので、なるべく早く病院で診てもらいましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。