寝たきりの主な4つの原因とは?認知症・脳卒中・衰弱・骨折転倒の注意点

2019/3/15 記事改定日: 2020/7/15
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

高齢になるとさまざまな要因から寝たきりになるリスクが高まり、要介護状態へもつながります。この記事では代表的な原因「認知症」「脳卒中」「高齢による衰弱」「骨折・転倒」の4つを解説し、寝たきりにならないための予防法を紹介します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

高齢者の寝たきりとは?

寝たきりという言葉に明確な定義はありませんが、一般的には、以下のいずれか、または複数の条件に当てはまることを「寝たきり」と表現しています。

  • 自力での日常生活が困難になり、ベッド上での寝起きが生活の中心になっている
  • 病気やケガをきっかけに、ベッドに寝ている状態が6カ月以上続いている
  • 基本的には1日中ベッドで過ごし、排せつや食事、着替えなどに介助を必要とする

高齢者がこのような寝たきり状態になる代表的な原因・きっかけとして、認知症、脳卒中、高齢による衰弱、骨折・転倒の3つが挙げられます。

また、介護が必要になった主な原因としては、厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」では、1位が認知症(18.0%)、2位が脳卒中(16.6%)、3位が高齢による衰弱(13.3%)、4位が骨折・転倒(12.1%)という結果が発表されました。

寝たきりの原因①:認知症

認知症とは、日常生活に支障をきたすレベルで、物忘れや認知機能が低下している状態です。認知機能の低下は、何らかの理由で脳の神経細胞が障害され、少しずつ機能低下や死滅・減少していくことで起こると考えられています。

認知症の症状

認知症になると、初期には近々の出来事や考え事・関心事がわからなくなる物忘れが出始め、その後、日ごろの行動の矛盾や妄想、失語、徘徊といった中期症状が出てきます。
症状がさらに進むと、表情やコミュニケーション能力が失われ、日常生活が送れなくなり、ついには自力で起立や歩行、排泄もできない状態に陥ります。

このように、認知症は進行すればするほど、寝たきりになるリスクが高まる疾患です。

認知症による寝たきり予防法

認知症と認知症による寝たきりを予防するには、以下のポイントを意識しつつ日常生活の習慣を改めることが大切です。

  • 毎日規則正しいリズムで寝起きし、積極的に外に出て適度に運動する
  • 家で1人きりで過ごすのではなく、外出して周囲と社会的なつながりを持つ
  • 1日3食、バランスの良い食生活を心がけて生活習慣病を予防する

寝たきりの原因②:脳卒中

脳の血管が詰まる、または破れることが原因で、一時的に脳に血液が行き届かなくなり、脳の神経細胞が障害される以下のような病気の総称が「脳卒中」です。

脳卒中に分類される病気
  • 脳梗塞(脳動脈が詰まることにより、脳の神経細胞を障害)
  • 脳出血(脳動脈が破れて、流出した血液が脳の神経細胞を障害)
  • くも膜下出血(脳動脈のうち、団子状になった血管が破裂して脳を覆うくも膜の内側で出血)
  • 一過性脳虚血発作(脳動脈が詰まり脳神経を障害する疾患で、脳梗塞の前兆と言われる)

このような脳卒中は、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの疾患や、喫煙・多量の飲酒などの生活習慣が原因となって引き起こされると考えられています。

脳卒中による寝たきり予防法

脳卒中のきっかけとなる脳の血管のつまりは、心臓や首の血管にできた血の塊・血栓が血流にのって脳まで移動することによって起こるケースが多いです。このため、心電図検査や頸動脈へのエコー検査を定期的に受けておくと、寝たきりを招く脳卒中の予防につながります。

寝たきりの原因③:高齢による衰弱

寝たきりの原因として多いのが、高齢による衰弱です。
「衰弱」とは医学的な病名ではなく、明確な定義はありません。しかし一般的には、寝たきりの原因となるような衰弱とは、加齢によって筋力が低下したり、心臓や肺の機能が低下することによって著しく活動性が低下した状態のことを指します。

また、高齢者は様々な病気を抱えるケースが多く、その病気の影響で活動性が低下することも「衰弱」であると考えます。

高齢者はフレイル予防も取り入れるのがおすすめ

加齢による身体機能の衰えを完全に避けることは難しいです。
年齢を重ねるごとに徐々に筋力などの身体機能、社会性などが低下していく状態のことを「フレイル」と呼びますが、現在ではこのフレイルの状態をできるだけ進行させずに現状の身体機能を維持する対策が重要視されています。

フレイル対策として挙げられるのは、適度な運動や社会的な活動への取り組み、食生活の改善などですが、これらはいずれも寝たきりの原因となる衰弱を予防することにつながります。

寝たきりの原因④:骨折・転倒

若い世代に比べて、高齢者は骨粗しょう症を発症するなど全身の骨が弱くなっているため、家の中で転んだり足を踏み外すだけでも下半身を骨折する可能性が高いです。特に、高齢者が太ももの付け根にあたる大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)を骨折するケースは多く、2007年には15万人近くが大腿骨を骨折したと報告されています。

身体機能低下による骨折

骨折や転倒の原因として、上述したような加齢による身体機能の低下が挙げられます。

加齢による筋力低下・関節痛などの身体的な不調・判断力の低下が生じることによって、些細な段差や床に置いてある物などにつまずきやすくなり、思わぬ場面で転倒しやすくなるのです。

また、特に高齢女性では骨の強度が脆くなる骨粗しょう症を発症する人も多く、些細な刺激で骨折し、そのまま寝たきり状態になってしまうケースも少なくありません。

高齢者が下半身を骨折すると手術が必要になるケースが多く、治療にとても時間がかかるだけでなく、治療が成功しても歩けなくなるリスクがあり、その結果として寝たきりになることもあります。

骨折・転倒による寝たきり予防法

高齢者の転倒事故と、これによる寝たきり状態を防ぐには、以下のポイントに留意して高齢者の体や生活環境を整えることがおすすめです。

  • 手すりの設置や段差、階段をなくすなどして、自宅をバリアフリー化する
  • 毎日適度な運動を行い、転倒しないよう筋力とバランス感覚を鍛える
  • 足が上がりやすく、転倒を防ぐ設計がされた靴下や靴を着用させる

おわりに:寝たきりは認知症・脳卒中・衰弱・骨折転倒の予防が大切

ベッドが生活の中心となり、日常生活に介助を必要とするようになる高齢者の寝たきり状態は、認知症・脳卒中・高齢による衰弱・骨折転倒をきっかけに引き起こされるケースが多いです。寝たきりを予防するためには、まずこれらの原因発生を防ぐことから意識していきましょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

認知症(63) 転倒(10) 脳卒中(55) 寝たきり(15) 寝たきりの原因(1) 高齢者の骨折(2)