フレイルかどうかをチェック! 診断基準も紹介

2019/1/13

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

介護や看護、加齢に関係するワードとして「フレイル」という言葉をご存知でしょうか。医療関係の職についている人、または身近な人や家族の介護を経験した人以外にとっては、なじみの少ない言葉かもしれません。この記事では、「フレイル」という言葉の意味と、フレイル状態と診断される基準についても、解説していきます。

フレイルとは?診断基準は?

フレイルを一言で表すと「加齢によって現れる心身の衰え全般」のことで、高齢者が要介護状態になるまでの過程・中間の段階のことです。

具体的には、以下のような状態がフレイルの概念に当てはまる症状とされています。

  • 筋力の衰えから動くのがおっくうになり、家に引きこもりがちになる
  • 体力の衰えや聴力、言語能力などの低下から、人と会って話すのが嫌になった
  • 筋力が衰えてきているのか、少しずつひとりでできること、動ける範囲が減る
  • 物忘れが増え、人や物の名前、買うものや予定を間違えることが多くなる
  • 一人暮らしで、家族は遠方に住んでいるのでほとんど話すことはない
  • 一度倒れたり転んだりしてから外出が怖くなり、元気なのに出歩かなくなった  など

フレイルは明確な直接原因から起こるのではなく、主に加齢による心身状態や社会とのかかわり方の変化、暮らし方の変化などが複合的に絡んで起こるものです。

なおフレイルかどうかは、一般的に「Freidらの評価基準」と呼ばれる以下5つの診断基準にいくつ当てはまるかで判断されます。

フレイルかどうかの基準となる、Freidらの評価基準

《1》体重減少
直近の半年間で2~3kg以上の体重減少があったか
《2》倦怠感
直近の2週間程度で、明確な心当たりのない疲労感や倦怠感があったか
《3》活動量
1週間のうちに何日か、定期的に農作業を含む運動や体操をしているか
《4》握力
利き手を測定して、男性は26kg未満、女性は18kg未満の握力になっていないか
《5》通常歩行速度
1mの助走路と5mの測定区間の計6mのコースを歩く速さが、1m/秒未満であるか

上記のうち、3項目以上に「はい」と答えた人はフレイルの状態、1~2項目に「はい」と答えた人はフレイル予備軍、当てはまる項目がない人は健常と判断されます。

「もしかしてフレイル?」と思ったらセルフチェックを

もし、自分や自分の身近にいる人にフレイルの疑いを感じたら、フレイルかどうかをセルフチェックしてみましょう。フレイルかどうかを調べる方法として、以下のようなものがあります。

筋肉量を調べる指輪っかテスト

両手の人差し指・親指をくっつけて指で輪を作り、自分のふくらはぎの太い部分を囲んでみる簡単なテストです。

やってみて、ふくらはぎの太さが指の輪よりも小さく、指と足の間にすき間ができる場合は、フレイルの一端である筋肉減少が始まっている可能性が高いです。

イレブンチェック

Freidらの評価基準に基づいて作られた11の質問に回答して、その答えからフレイルの兆候があるかどうかを確認するチェックリストです。

普段どのような食生活を送っているかに始まり、咀嚼力や嚥下能力、身体能力、他人とのコミュニケーションの有無や頻度などを確認してフレイルの兆候を探ります。

フレイルに関する基本チェックリスト

Freidらの評価基準に基づいて、生活意欲・運動・栄養・口腔の機能や状態・引きこもり傾向・認知症・うつの兆候を探る、25の質問項目をリスト化したものです。加点式で、点数が高ければ高いほどフレイルである可能性が高いと判断されます。

上記の内、指輪っかテストは自宅でいつでも実施できるので、すぐにでも試してみましょう。イレブンチェックや基本チェックリストはインターネット上からも確認できますが、内科の病院などでもチェックできるので、かかりつけの医師に相談してください。

おわりに:フレイルは介護不要ながら、加齢による心身の衰え全般のこと

高齢者が要介護状態と認定されるほどの心身状態になる前段階として、加齢による心身の衰えから現れる生活の質や体調の変化を「フレイル」と呼びます。代表的なものでは、筋力の低下による運動能力や行動意欲の低下、社会とのかかわりを避けようと引きこもるなどの抑うつ傾向などが挙げられます。フレイルは、周囲の手助けで生活や本人の意識・身体状態を変えられればある程度改善しますので、早めにセルフチェックしてください。

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