「血液検査の結果が怖い」とドキドキする人はたくさんいますが、実際のところ数値がどんな意味を持つのかわからないことも多いでしょう。血液検査の結果をどのように見れば、現代人が気をつけたい病気や不調のサインがわかるのかをご紹介します。
血液から病気がわかることもある?
人の体を流れる血液は、水分、細胞、血漿で構成されています。特に、水分は血液の90%を占めています。そして、細胞には赤血球、白血球、血小板などが含まれています。また、血漿には糖質や脂質などが含まれています。
血液検査には血液学的検査と生化学検査の2種類があり、それぞれの検査で調べられる項目が異なります。
- 血液学的検査
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- 赤血球や白血球の数や形状を調べる
- 血液そのものの異常や貧血などを発見できる
- 生化学検査
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- 血液中の糖質や脂質の状態を調べる
- 生活習慣病などを発見できる
ある血液検査の結果が正常値から外れているからといって、病気になっているとは限りません。血液検査でさまざまな項目を調べ、ほかの検査も行いながら総合的に診断します。血液検査では特に異常はなかったけれど、ほかの検査で病気が発見される場合もあります。
肝臓の調子を知りたいときにチェックしたい項目は?
血液は、全身に酸素と栄養を運びます。そのため、栄養の貯蔵や分解・解毒を司る肝臓の異常は、血液の異常として血液検査の結果にあらわれることがあります。肝臓ではアルコールや有害な物質の分解が行われますので、体の健康維持に大きな役割を持っている臓器といえます。
肝機能と関連する検査項目
- GOT(AST)
- 上昇していると、肝臓の組織障害、心筋梗塞、急性・慢性肝炎の疑いがあります。
- GPT(ALT)
- 上昇していると、肝臓の組織障害、心筋梗塞、急性・慢性肝炎の疑いがあります。
- γ-GTP
- 上昇していると、肝臓障害、肝臓・胆道病の疑いがあります。肝臓や腎臓、膵臓の上皮細胞に含まれる酵素で、アルコールの摂取量に反応して上昇する傾向が強いです。
- ALP
- 上昇していると、肝炎、胆道閉塞、骨新生が亢進している疑いがあります。肝臓、小腸、腎臓、副腎、骨などに含まれる酵素です。
- LDH
- 上昇していると、肝臓病、心筋梗塞、白血病などの疑いがあります。肝臓、腎臓、真菌、骨格筋、赤血球などに含まれる酵素です。
- 総ビリルビン
- 上昇していると、胆道疾患が疑われます。
- 総蛋白
- 正常ではない変動がみられると、肝機能障害、栄養障害、ネフローゼの疑いがあります。血清中に含まれる総蛋白量で診断します。
- アルブミン
- 低下していると、栄養不足や肝臓障害が疑われます。
高脂血症かもしれない…と思ったらチェックすべき項目は?
血液中のコレステロールや中性脂肪が高い状態である「高脂血症」は、生活習慣病のひとつです。動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞を引き起こす可能性がありますので、早期発見・早期治療が望ましく、血液検査で異常がみられたら医師に相談することをおすすめします。
高脂血症と関連する検査項目
- 総コレステロール(TC)
- 基準値 128~219(mg/dl)
基準値を大きく超えていると、虚血性心疾患や動脈硬化、脳血管障害のリスクが上昇します。
- HDL-コレステロール(HDL-C)
- 基準値 40~96(mg/dl)
- 基本的には疾患を引き起こす成分ではありませんが、あまりにも基準値から外れている場合は血管に異常を引き起こす可能性があります。
- LDL-コレステロール(LDL-C)
- 基準値 70~139(mg/dl)
上昇すると、動脈硬化を引き起こします。通常は、肝臓などから全身へ向かってコレステロールを運びます。
- 中性脂肪(トリグリセライド、TG)
- 基準値 30~149(mg/dl)
上昇すると、動脈硬化を引き起こすことがあります。異常値や変動がみられた場合、糖尿病や肥満などの糖質代謝異常、脂質代謝異常の可能性が考えられます。
貧血かどうかを知りたいときは?
血液中のヘモグロビン量が低下する「貧血」は、体が酸欠に陥っている状態といえます。動悸や息切れ、倦怠感、めまい、顔色不良、呼吸困難、胸の痛みなどの症状があらわれます。ヘモグロビンは赤血球に含まれる血色素で、主な原料は鉄です。そのため赤血球と鉄分が不足すると貧血に陥ります。男性と比較して、女性に多くみられます。
貧血と関連する検査項目
- 赤血球数(RBC)
- 基準値 男性は450~510万、女性は370~480万(μl)
基準値を下回ると貧血の傾向があります。
- ヘモグロビン(Hgb)
- 基準値 男性は13.9~16.0、女性は11.4~14.8(g/dl)
基準値を下回ると貧血です。
- ヘマトクリット(Hct)
- 基準値 男性は41.4~49.2、女性は33.7~43.5(%)
貧血時に低下します。血液全体に占める赤血球の割合を示す項目です。
- 平均赤血球容積(MCV)
- 基準値 81.0~97.0(fl)
異常によって、貧血の種類を判別します。大球性貧血(巨赤芽球性貧血)、小球性貧血(鉄欠乏性貧血)などの診断指標です。
- 平均赤血球血色素(MCH)
- 基準値 28.8~33.6(pg)
低下すると、鉄欠乏性貧血などの疑いがあります。
- 網赤血球数
- 基準値 0.3~1.8(%)
上昇すると、赤血球が新しく生産されていることを意味します。
- 血清鉄(Fe)
- 基準値 男性は90~180、女性は70~130(μg/dl)
上昇すると鉄過剰症や再生不良性貧血などの疑いがあります。低下すると鉄欠乏性貧血の疑いがあります。
- 総鉄結合能(TIBC)
- 基準値 男性は235~375、女性は220~440(μg/dl)
上昇すると鉄欠乏性貧血が疑われます。低下するとネフローゼや慢性感染症の疑いがあります。
- 血液像
- 顕微鏡を使用して、血液を観察します。赤血球の形や異常細胞の出現を調べます。
糖尿病や腎臓の調子も血液検査でわかるの?
血液検査では、糖尿病や痛風について調べることができます。痛風は、尿酸が腎臓の組織に沈着して起こる疾患ですので、腎臓の検査と合わせて総合的に診断します。
糖尿病や痛風と関連する検査項目
- 空腹時血糖(血液中のブドウ糖量)
- 上昇すると糖尿病、低下すると膵島腺腫などの疑いがあります。
- 尿酸
- 上昇すると痛風、腎不全、血液疾患が疑われます。
- 尿糖
- 尿中にブドウ糖が排出されている場合、腎性糖尿、糖尿病、肝機能障害が疑われます。
おわりに:血液が出す不調のサインを見逃さず、医師に相談してみましょう
血液にはさまざまな成分が含まれており、血液検査を通して体の健康状態を幅広くチェックすることができます。ただしひとつの項目に異常がみられたからといって病気とは限りません。異常値が意味することを理解し、医師に相談して不安を解消しましょう。
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